「バグダッド・カフェ」はパーシー・アドロン監督による1987年公開の映画。
ミニシアター系の映画が注目されるきっかけになったとも言われる作品である。
1987年の劇場公開版、1994年の完全版、2008年のディレクターズカット版の3種類。
最新版では構図や色合いを調整してあり、青と黄色のコントラストがきれい。
概要・あらすじ
アメリカの旧国道ルート66沿いのモーテル、バグダッド・カフェ。
コーヒー・マシンは故障中でビールもない。
がらくただらけのオフィスに埃の積もった部屋。
世界の果てのようなこの地に、西ドイツからの旅行者ヤスミン(ジャスミン)がやってくる。
車もなく、荷物は男物、現金もカードも持たない彼女の存在を、カフェの主人ブレンダは怪しむが。
予告編動画
Out of Rosenheim (1987) Trailer - YouTube
コーヒーの濃さ、名前を読めるかどうかにも関係性が表れていて、保安官とブレンダのやりとりの際のカメラワークもおもしろい。
幸せの象徴、黄色いポット
物語は一組の夫婦が西海岸からラスベガスをめざしルート66をやってくる所から始まる。
休憩のために寄った元キャンプ場で、けんかをした二人、荷物を持って歩き出すヤスミンを置いて、夫は車で走り去り、後には黄色いポットが残る。
このポットがバグダッド・カフェの主人ブレンダの夫サルに拾われたことで、ヤスミンはカフェの前に立つことになる。
カフェとは名ばかりの、乾ききったオアシスに、黄色いポットとヤスミンが降り立つことで、精神的にも物理的にも風通しがよくなってくるのだった。
ポットの中身はコーヒーで、サルはそれをお客に出すわけだけど、普通の感覚ではありえない行動。
でもここではありえないことが起こる。
ヤスミンとブレンダの関係
ヤスミンがバグダッド・カフェに辿り着いた時、ブレンダは夫とけんかして出て行かれた直後だった。
二人に笑顔はない。
共に同じような状況ではあっても、その行動は対照的だ。
椅子に座って涙を流すブレンダと、カフェの前で汗を拭うヤスミン。
本作は二人の関係が軸になっている。
男たちはそれぞれ重要な役割はあれど、二人のお膳立てをする存在。
ジャケットの絵は、タンクを掃除するヤスミンだが、この行動を起点として機能していなかったバグダッド・カフェの時間が動き出す。
気になるのは、きれいになったモーテルのオフィスを見たブレンダのセリフ。
「ここはオフィスだった。それがどうだい。空っぽだ。」
ここだけ異質な感じがする。
見違えたオフィスは新しい空気を取り入れ、異質なものの存在する余地を与えた。
テーマ曲「Calling You」
冒頭から流れる主題歌Calling You。郷愁を誘うメロディ。
Jevetta Steele : Calling You - YouTube
I am calling you.
Can't you hear me ?
あとがき
パーシー・アドロン監督は、尊敬する監督としてフェデリコ・フェリーニを挙げていたことがある。
代表作「道」に登場する主人公、ジェルソミーナが本作のヤスミンの由来なのではないだろうか。
ヤスミン(ジェルソミーナ)は英語名ジャスミン。
花言葉は「神からの贈り物」。
原題:Out of Rosenheim
監督:パーシー・アドロン
出演:マリアンネ・ゼーゲブレヒト / CCH・パウンダー / ジャック・パランス / クリスティーネ・カウフマン / モニカ・カルフーン / ダロン・フラッグ / ジョージ・アグィラー