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「メランコリア」上巻(道満晴明)ゆるやかに始まる終末へのカウントダウン

 「メランコリア」(道満晴明)上巻 (ヤングジャンプコミックス)

「メランコリア」は道満晴明による漫画作品。

月刊ウルトラジャンプで2017年より連載を開始した。 

1話読み切り形式で、Aから始まりZまで続くオムニバス。 

帯の言葉は、「繋がる、世界。侵食する、憂鬱。」

ショートストーリーの名手・道満晴明が描くメランコリックオムニバス! 世界の終わりが近づく中、人は何を思うのか!? 楽しいだけじゃ、穏やかなだけじゃ、幸せなだけじゃ、人生はつまらない。「憂鬱」それは甘くて苦い蜜の味――…。読むほどに絡み合っていく、巧妙なストーリーギミックとじわじわと心を侵すメランコリックな物語!!・このマンガは高い中毒性があるので、どうぞ心してお読みください。

(「メランコリア 上 (ヤングジャンプコミックス)」より)

前回はこちら。

前回で3話までを紹介したので、今回は前半13話の中から気になったのをいくつか取り上げたい。

Do not disturb 入室を禁ず

ホテルのドアに掛けられ続ける「Do not Disturb」の札。

そこは作家ボグダノヴィッチが泊まっている部屋で、もう一週間も清掃ができていない。

衛生面から、せめてシーツだけでも交換したいところであった。

「メランコリア」(道満晴明)上巻より、部屋に入ってしまった新人メイドのマルタ
(「メランコリア」上巻より) 

ホテルヴォイニッチの新人メイド・マルタは、先輩のエレナが鍵を取りに行っている間、怪しげな室内に誘い込まれるように入ってしまう。

机の上には、彼女の行動を予知しているかのような原稿が置かれていた。

 

前作「ヴォイニッチホテル」の後日譚であり、番外編でもある一編。

ボグダノヴィッチと言えば、映画「ペーパー・ムーン」や「ニッケルオデオン」の監督の名である。

この謎の人物の罠により、マルタは部屋に閉じ込められ、代わりに小説を執筆することになるのだった。

「メランコリア」(道満晴明)上巻より、一晩で小説を書き上げたマルタ
(「メランコリア」上巻より) 

作者によれば、マルタはエレナが日本へ向かった不在中に雇ったメイドとのこと。

ホテルにとっては待望の新人だったのだが、彼女は無事部屋から出ることができるのか、それとも第二のボグダノヴィッチとなるのか。

Handspinner ハンドスピナー

半年後に地球に最接近すると言われているメランコリア彗星。

天文部の依田(よりた)は、教室には行かずに部室に引きこもっている生徒。

そんな彼の所へ毎日通うクラスメイトの八百津(やおつ)は、密かに想いを寄せているようだ。

「メランコリア」(道満晴明)上巻より、メランコリア彗星を天体観測
(「メランコリア」上巻より) 

君の名は。」を思わせるやり取りも、彼女なりの伝わりにくい告白のようなものだったのかもしれない。 

そして、この時はまだ、彗星が地球に衝突するなんて本気では思われていなかった。

このエピソードでは意外なアイテムが意外?な機能を持って登場するのだが、現実はなかなか上手く行かないものなのか。

落ちのあっさり感が好き。

Melancholia 憂鬱

地球に迫りつつあるメランコリア彗星により、人類の滅亡も時間の問題となった。

一時期はパニックにおちいったらしい人々も、いつもどおりの日常を取り戻しているようだ。

それでも終末は確実に近づいている。

余命幾ばくもない少女が、病院を抜け出した先で出会った元刑事に、登山の同行を依頼する。

巨大な流れ星に、願い事をしたいらしい。

「メランコリア」(道満晴明)上巻より、人類の滅亡が見られますように
(「メランコリア」上巻より) 

彼女の願いは叶うだろうか。 

内容はともかく、それは彼女の生きる希望となるはずだ。

 

道中で、とある理由により一人になる時間があるのだが、心細そうにする彼女の様子がかわいかった。  

「メランコリア」(道満晴明)上巻より、山の中で待機する女の子
(「メランコリア」上巻より) 

点滴スタンドが手放せないのはお約束。 

世界はゆるやかに繋がっている。

エピソードが進むにつれ、終末感も濃くなってきた。

タイトルがアルファベット順なのも、カウントダウンみたいなものだったんだね。

残り13話でどう収束していくのか。

世界の行方を見届けよう。

 

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