はじめに
雨は好きです。
晴れの日はもっと好きです。
通勤や通学は確かに大変ですが、傘をさすかどうか迷うような降り方よりは、はっきり降ってくれたほうが気分はすっきりしますね。
カフェに立ち寄って、または自宅の部屋でコーヒーを飲みつつ雨を眺めていたい。
雨で思い出すのは、山頭火の句、「雨ふるふるさとは はだしであるく」です。
実際には楽しい気持ちで詠まれたものではないでしょうけど、なぜか惹かれます。
静かな雨でしょうか。それとも。
今日は雨のシーンが印象的な映画をいくつか紹介します。
大地のうた(サタジット・レイ監督)
インドを代表する映像詩人サタジット・レイ。
ベンガル地方の貧しい村のある家族の生活。人の誕生や死、自然や動物の姿もゆったりとした時間の流れの中で静かに描かれます。
水面を移動するアメンボたち、小さな波紋、風に揺れる睡蓮の葉、近づいてくる雨雲、皮膚に触れる水滴、雨の中で木陰に座りこむ姉弟。
これはオプー3部作とも呼ばれ、オプーの少年時代にあたりますが、それぞれ独立した作品として考えてもいいと思います。
中盤の、列車が近づいてくるのを柱に耳をつけて確認するシーンは、ビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」でもオマージュされています。
レイの映画を見た事がないとは、この世で太陽や月を見た事がないに等しい (黒澤明)
【予告編動画】
The Apu Trilogy: 2015 Restoration - Janus Films Trailer - YouTube
監督:サタジット・レイ
出演:サビル・バナルジー / カヌ・バナルジー
浮草(小津安二郎監督)
小津安二郎監督と言えば東京物語が有名ですが、晩年のカラー作品群は傑作揃い。
雨のシーンが意外に少ない中、本作は見所の一つが雨の描写。
降りしきる雨の中、通りを挟んで旅役者の座長(中村鴈治郎)とその愛人(京マチ子)の口喧嘩。
軒下に置かれた赤い傘が映える。
田舎町に巡業にやってきた劇団、座長の駒十郎にはかつてこの街で生まれた息子がいて、そのことを知った現在の愛人でもあるすみ子がその家を訪ねます。
予告編では最後の方に登場。
作品全体の雰囲気はほんわかしていながら、緊張感のある場面です。
【予告編動画】
監督:小津安二郎
出演:中村鴈治郎 / 京マチ子 / 若尾文子
シェルブールの雨傘(ジャック・ドゥミ監督)
雨に濡れる石畳の通りを色とりどりの傘で行き交う人々。
人生のひと時を共に歩んだ二人の物語。
フランスの港町シェルブールで傘屋の娘ジュヌヴィエーヴと自動車整備工のギィは将来を約束した仲だったが、ギィはこれから兵役につかなければならない。
雨のシーンはいくつかありますが、オープニングがやはり一番。
全てのセリフはメロディ付きです。
Les parapluies de Cherbourg (Jacques Demy) - intro - YouTube
監督:ジャック・ドゥミ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ / ニーノ・カステルヌオーヴォ
言の葉の庭(新海誠監督)
なるかみの すこしとよみて さしくもり あめもふらぬか きみをとどめむ
雨の六月、新宿御苑。少し立ち止まって人生の雨宿り。
「どうせ人間なんて、ちょっとずつどこかおかしいんだから。」
「もしかしたら、また会うかもね、雨が降ったら。」
靴職人をめざす高校生の秋月孝雄は、雨が降ると通学の電車を降りて寄り道する習慣があった。
いつもの場所で雨宿りをしようとすると先客の女性がいて、その後、雨のたびにその場所で会うようになる。
雨のシーンから始まり、心の動きを表すような雨の描写が作中で何度も描かれます。
この冒頭の地面にできる波紋とかね、すごくきれいな雨の絵ですよ。
映画『言の葉の庭』予告編映像 - YouTube
監督:新海誠
出演:入野自由 / 花澤香菜 / 平野文
雨に唄えば(スタンリー・ドーネン監督)
ジーン・ケリー主演のミュージカル。
おそらく、映画史上最も有名な雨のシーン。こんなに楽しそうな雨の描写が他にあるだろうか。気分だけでも真似したい。
"Singin' in the Rain" (Title Song) 1952 ~ Gene Kelly - YouTube
監督:スタンリー・ドーネン
出演:ジーン・ケリー / デビー・レイノルズ / ドナルド・オコナー
番外編
CM 雨と子犬
溝口健二監督や黒澤明監督作品などで知られているカメラマン宮川一夫による作品。上記の「浮草」も担当しています。
カンヌ国際広告祭で金賞を受賞。
あとがき
今回は楽しそうなものを5作品選んでみました。
おすすめの作品があれば教えて下さい。
ではまた。
関連記事