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「ペルシャ猫を誰も知らない」扉を叩け!叫べ!イランの音楽事情

ペルシャ猫を誰も知らない(バフマン・ゴバディ)

「ペルシャ猫を誰も知らない」は2009年公開のイラン映画。
 
イランの厳しい規制の中で、音楽に夢を持つ若者たちがいる。
ライブやCDなどの音源の発売だけでなく、練習すらもままならない。
近隣の住民に通報されれば、それだけで逮捕されるという状況だ。
 
そんな彼らが選ぶ道は、当局の許可を得て公に活動するわずかな可能性を信じるか、国外へ出て活路を開くかの二つ。
 
本作はバフマン監督*1が、前作「Half Moon」以降撮影の許可が下りない中、とある録音スタジオで出会った二人のミュージシャン、アシュカンとネガル(Take It Easy Hospital)の実話を元にイランの首都テヘランで活動するアングラミュージシャンたちを紹介する、半フィクション、半ドキュメンタリーな作品となっている。

あらすじ

ネガルと、そのボーイフレンドのアシュカンはともにミュージシャン。インディー・ロックを愛する彼らは、演奏許可が下りないテヘランを離れてロンドンで公演することを夢見る。しかしアシュカンは、無許可で演奏したという理由で逮捕され、ようやく釈放されたばかり。バンドのメンバーもばらばらになってしまった。2人は危険もかえりみず、違法にパスポートやビザを取得しようとする。

エンジニアのババクに相談した2人は音楽のためなら何でもござれの便利屋ナデルを紹介される。ナデルは2人が無許可でつくったCDを聞いて彼らの才能に驚き、国を出る前に、自分がCD制作の許可もコンサートの許可も取りつけてやると大見得をきる。(オフィシャル・サイト)

予告編動画


映画『ペルシャ猫を誰も知らない』予告編 - YouTube>

 

原題:No One Knows About Persian Cats 
監督:バフマン・ゴバディ
出演:アシュカン・クーシャンネジャード / ネガル・シャガギ / ハメッド・ベーダード

作品について

オープニングでは、とあるスタジオで順番を待つ女性ミュージシャンと、プロデューサーのメタな会話でこの映画の概要が明かされる。中で歌っているのはバフマン監督自身だ。
 
「彼は哀れな状況なんだ。ここで歌を歌うのが唯一の憂さ晴らしなんだよ。新作は撮影許可が下りないし、旧作は海賊版が出回ってて何と言うか…哀れな状況なんだ。」
「新作は?」
「イランのアングラ音楽だ。」
「プロの俳優を使って?」
「いや、一人もいない。アシュカンとネガルが出てる。知っているだろ?」
「二人は三週間後に国を出るはずでは?」
 
実際に撮影は17日間で終わり、主演の二人はその4日後にイランを後にした。

若者たちの夢

アシュカンとネガルの二人は出国のために協力することになった、アンダーグラウンドの世界に詳しい人物ナデルと行動を共にすることになる。

「この国では音楽が出来ない。自由な発言も…」
若者たちにとってごく普通の欲求がこの国では難しい。
 
400人を動員したライブで逮捕され、バンドのメンバーが離れていったアシュカンにとってはメンバーを探すことも目的の一つ。
ナデルに紹介され訪れる先で、10組を超える様々なミュージシャンの曲や活動状況、夢が語られる。
 
ささやかな望み。
「俺はリッケンバッカー*2さえあればいい。」
「僕は島が一つ欲しい。そして青い空。そしたら一日中演奏していられる。」
「部屋がほしい。そして冷蔵庫。エナジー・ドリンクを飲んでは演奏する。」
「アイスランドに行きたいんだ。シガー・ロス*3を見る。それが僕の夢だ。」
 
唯一の女性ネガルはクールだ。
「別に。パスポートがあればいいわ。」

ペルシャ猫たちのその後 

イランはかつてペルシア(ペルシャ)と呼ばれていた。

ペルシア絨毯やペルシャ猫が有名だろう。

映画内でも描かれるが、犬や猫などのペットを外に出すのは禁止されていて、屋内に入らなければ姿を見ることが出来ない。

アンダーグラウンドで活動するミュージシャンたちを、本作ではペルシャ猫に例えている。

音楽をやりたい彼らと、映画を撮りたい監督の思惑が一致し、短期間でのゲリラ撮影による制作が敢行され外の世界へ発信されることになった。

主演の二人は予定通り国外へ、監督もイランを離れているようだ。

出演したミュージシャンの幾組かは国外で活動し、残った人達もその後の規制緩和でいくらか活動しやすくなっているかもしれない。

国外へ出たバンドの内、YouTubeで聴けるものがあるので紹介したい。

The Yellow Dogs

The Yellow Dogs 「this city」 (Official Video) - YouTube

 

アメリカへ渡ったThe Yellow Dogsというバンド。

リッケンバッカーを愛するベーシストのいるバンドだ。 

もう少しポップな曲もある。

 


The Yellow Dogs - Dance Floor - YouTube

Take It Easy Hospital


Take it Easy Hospital en concert. - YouTube

主演の二人のユニット。

 

彼らが幸せな音楽活動を送れていることを願うばかりだ。

 

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参考リンク