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「パイレーツ・ロック」海の上の海賊ラジオ局

リチャード・カーティス監督映画「パイレーツ・ロック」

「パイレーツ・ロック」はリチャード・カーティス監督による2009年公開の映画。

1960年代の人気海賊ラジオ局と政府の対立、ロックな日常を描いている。

あらすじ

1966年、イギリスのBBC(英国放送協会)はポピュラー音楽の放送を1日45分までに制限していた。

そんな中、人々を熱狂させていたのは海の上から24時間ロックを流し続ける海賊放送局。

聴取率50%を超えるこのラジオロックもやがて政府に目をつけられる。

 

高校で問題を起こし、退学処分になったカールは、母親の意向でこの船に預けられる。

船のオーナー、クエンティンとは古い知り合いであったためだ。

父親を知らずに育ち、男子校での生活を送っていたカールにとって、個性的なメンバーとの日々は刺激に満ちていた。

予告編動画

The Boat that Rocked - Trailer - YouTube

「ママは海風にあたれば更生すると考えた? 見事な勘違いだ」

カールを迎えたクエンティンの言葉だ。

クエンティンはカールの名付け親でもある。

喫煙とドラッグが原因で退学になったカールが与えられたのは、そこから引き離す正反対の環境ではなく、より強力な不良DJたちとの共同生活の場。

この只者ではない母親も、かつてはクエンティンたちの世代にとって、“Jesus Sexy Legend” だった。

そしてカールはここに「人生を学び」に来た。

 

「パイレーツ・ロック」ビル・ナイ

「かっこよさはシンプルじゃないが、シンプルはかっこいい」

カールとは親友になるDJの一人、“シンプル・サイモン” の番組の冒頭のセリフ。

真実の愛を求めていた彼が人生の絶頂期とどん底を味わった後に出てくる言葉。

かっこいいと思えるほどのシンプルさは洗練だ。

だが、そこに辿り着くまでの荒削りな状態も魅力。

本作では舞台となる1960年代の音楽が多く登場する。

その数は60曲を超える。

中から好みの曲をいくつか紹介する。

The Kinks 「All Day And All Of The Night」(1964)

The Kinks - All Day And All Of The Night (Official Audio) - YouTube

 

オープニングはこの曲から。 

本作を象徴すると言ってもいいインパクトだ。 

The Kinksの曲は他にも「Sunny Afternoon」が使われている。

John Fred & his Playboys 「Judy In Disguise」(1967)

John Fred & his Playboys-Judy In Disguise - YouTube

 

The Beatlesの「Lucy In The Sky With Diamonds」のパロディソングとのこと。

タイトルの響きとか歌詞の内容にそれがうかがえる。

ちなみにビートルズの曲は作中で使われないが、未公開映像の中に、アビー・ロード・スタジオの前で彼らに敬意を払う場面があった。

The Box Tops 「The Letter」(1967)

The Box Tops - The Letter (HQ) - YouTube

 

このバンドは本作で初めて知った。

1960年代後半の数年間だけと活動期間は短い。

Vo.のアレックス・チルトンはこの時16歳とか。声が渋い!

The Rolling Stones 「Jumpin' Jack Flash」(1968)

The Rolling Stones - Jumpin' Jack Flash - Sweet Summer Sun: Hyde Park Live - YouTube

 

当時から現在まで活動を続けている唯一のバンド。

結成50年、70歳のパフォーマンス。

ミック・ジャガーはまだまだ元気だ。

「それでも名曲は書き継がれ、歌い継がれていく」

この時代、ロックの名曲が生まれたイギリスで、それを聴くことが困難であったという事実。

媒体はレコードからカセット、CDを経てダウンロードから定額制サービスへと移り変わり、気軽に聴けるジャンルの一つになった。

しかし、ここで描かれる、生活に寄り添う音楽としての存在は羨ましくもある。

 

ラストの「Rock' Roll !!」のセリフとともに振り上げた拳、このシーンを持って最高の音楽映画の一つであると思う。

 

1960年代に青春時代を過ごしたピーター・バラカン氏のインタビューも参考に。

ユニオンの規制から海賊放送が誕生

最初はBBCしかありませんでしたからね。「パイレーツ・ロック」っていう映画は見ましたか? 正にあれで、映画はマンガっぽい作りなんですけど、事情は全くあの通りです。海賊放送が放送される前には、ラジオ・ルクセンブルグという放送局があって、日中はフランス語放送してるんですけど、イギリス人の若者たちが、電波ではロックを聴けなくて飢えてるということを知っているから、夜になるとフランス語から英語に切り換えて、スポンサーをいっぱい取って英語放送してレコードをたくさん流していました。

(ピーター・バラカン氏インタビューより)

あとがき

ここ数年、大晦日にはこの映画を観るのが習慣になっている。

終盤で新年の船出が描かれているのが理由だが、海の上での幸せな日の出を見ることができる。

 

そして大事な点だが、これは絶対に字幕版で観ることだ。

DJのMCと音楽が見所なので吹替版は考えられない。

比較してみたい場合を除いておすすめはしない。

現状、配信は吹替版のみなのでDVDでどうぞ。

 

原題:The Boat That Rocked 

監督:リチャード・カーティス

出演:ビル・ナイ / フィリップ・シーモア・ホフマン / ニック・フロスト / ケネス・ブラナー / エマ・トンプソン / トム・スターリッジ

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