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「グッバイ、レーニン!」もう一つのドイツ統一、変わるものと変わらないもの

映画「グッバイ、レーニン!」

 

「グッバイ、レーニン!」は2003年公開のドイツ映画。

心臓発作で倒れた母のために、ベルリンの壁崩壊の事実を隠し通す。

あらすじ

1978年夏、東ドイツ初の宇宙飛行士ジークムント・イェーンを乗せたソユーズ31号が打ち上げられた*1日、アレックスの父は西ドイツに亡命した。

西側にできた女性が原因だったという。

母クリスティアーネはショックで精神を病み、心を閉ざした。

8週間後に回復して家に戻った母は、その反動からか社会主義活動にのめり込む。

 

1989年秋、宇宙飛行士を夢見た少年はテレビの修理の仕事についていた。

自由を求め、ベルリンの壁に反対するデモに参加するアレックス。

建国40週年のイベントに向かう途中だったクリスティアーネが目にしたのは、警官隊に連れ去られる息子の姿。

予告編動画

グッバイ、レーニン!(字幕版) - YouTube

母の病気と東ドイツ化計画

病院から連絡を受けてアレックスが向かうと、母は心臓発作で倒れ意識不明の重体であった。

クリスティアーネは8ヶ月眠り続けた。

その間、世の中は大きく変わった。

ベルリンの壁は壊され、資本主義の社会になった。

社会主義の指導者たちは失業し、姉は大学をやめ、ハンバーガーショップで働き始めた。

アレックスには、病院で働く看護士の恋人ができた。

 

目覚めたクリスティアーネには、刺激は禁物。

社会主義に傾倒していた母にとって、現在のドイツの状況を知ることはショックが大きすぎるのだ。

アレックスは周囲の反対を押し切り、自宅で看病することを決意する。

 

映画「グッバイ、レーニン!」母が倒れ病院に駆けつけたアレックス

変わるものと変わらないもの

母を守りたいアレックスの一途さは健気であるが、姉夫婦や恋人たちに無理を強いる身勝手さもある。

街には西側からの移住者も増え、世間はワールド・カップ*2で沸き立っている。

東ドイツが存続しているかのように装うのは困難だ。

それでも、同僚で映画監督を目指すデニスと偽のニュース番組を作り、嘘をつきとおそうとする。

 

母の好物だったピクルスやコーヒーも、外国産のものに置き換わり、手に入らないものになっていた。

貨幣も東ドイツ時代のものは紙切れにすぎない。

世の中が大きく変わる中での混乱と戸惑い、アレックスが経験したものは、当時の人々が直面したであろう等身大の姿。

 

テレビの中で作り上げた嘘の世界。現実とは逆の方向に進んだ社会。

その中で新しい指導者になったかつての宇宙飛行士ジークムントのメッセージ、キャスターのデニスの言葉だけは真実であって欲しい。

 

最後まで嘘をつきとおしたアレックスと、そんな息子を眺める母のまなざしの優しさよ。

そして母の最後のセリフ、深いね。

 

Good Bye Lenin!  

あとがき

主人公の身勝手さにはちょっといらいらする部分もあるけど、少しずつ成長していく。

ソユーズの映像で登場した人形はザントマン*3というパペットアニメのキャラクターで、眠りへ誘う妖精らしい。

東西ドイツ問題を描いた作品では、「善き人のためのソナタ」や「東ベルリンから来た女」もおすすめ。 

 

オープニングや予告編で流れる曲は、ヤン・ティルセンの「Summer 78」。

Summer 78-Yann Tiersen - YouTube

 

原題:GOOD BYE LENIN!

監督:ヴォルフガング・ベッカー

出演:ダニエル・ブリュール / カトリーン・ザース / チュルパン・ハマートヴァ / マリア・シモン / フロリアン・ルーカス / アレクサンダー・ベイヤー / ブルクハルト・クラウスナー / シュテファン・ヴァルツ 

 

この本の舞台はロシアだが、社会主義国の雰囲気を知るにはいいと思う。

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*1:インターコスモス - Wikipedia

*2:1990年開催のサッカーのワールド・カップ。優勝は西ドイツ。

*3:ザントマン - Wikipedia