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「長歌行」(夏達)玄武門の変を生き延びた姫の激動の半生

「長歌行」(夏達)1巻 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

「長歌行」は中国出身の夏達(シャアタア)による漫画作品。

日本でもウルトラジャンプで翻訳連載され、2016年3月で掲載終了となった。

唐の時代、玄武門の変により皇太子であった父を殺され都を追われた姫、李長歌の波乱の道程の物語。

あらすじ

626年(武徳9年)、唐の高祖の後継者争いは、玄武門の変を制した李世民が第二代皇帝(太宗)となることで決着した。 皇太子であった李建成と弟元吉の一族の中で生き延びたのは、建成の娘の永寧姫こと李長歌ただ一人。

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母の機転で追手を逃れた長歌は、男装し長安を抜け出すことに成功する。

両親の仇、李世民を討つことを誓い、まずは北の地朔州へ。

外敵と接する戦乱の地で、兵力を手に入れ再び長安へ帰るために。 

予告編動画 

長歌行 漫畫原稿展 海外首展in台北 介紹影片 - YouTube

これは2016年に台湾で行われた原画展の告知動画。

登場人物や雰囲気を知るのにいい。

カラー部分の7人並んだところの絵は、それぞれ単行本の表紙になっている。 

人物相関図 

長歌行(夏達)人物相関図
(長歌行4巻より)

恨みさえあれば

玄武門の変の直後、長安を追われた頃の長歌には、復讐の事だけが頭にあった。

唐の建国から数年が経ち、まだ火種は残っているものの統治はすすみ、平和への礎が築かれつつあった。

そんな中で起こった事件で一家は皆殺し、長歌も危うく難を逃れたが全てを失うことになる。 

 

長歌行(夏達)「李世民を地獄へ落とすこと」
(長歌行より)

望みは李世民の首ただひとつ。

「恨みさえあればなんとか生きていける」

目的のために必要な物は力。

 

長歌は幼い頃より学問や武芸に秀でていた。

異民族の母を持ち、兄弟の中では一段低く見られていた彼女であったが、叔父である秦王・李世民は実の娘のように可愛がり、学びの場を与えていた。

中枢には彼女の死を惜しむものが少なからずいる。

それが、彼女が生き延びることができた要因。

幼き日の学問の師である魏徴の言葉、「自衛と攻撃の違いはわずかで、見分けがつきにくいのですよ」が真相の鍵でもあるだろう。 

流浪の旅で

長安を離れ、北へ。

朔州を皮切りに長歌の旅が始まる。

軍師として兵を率い、学んだ事をを実践していく。

力があれば奪い返せると思っていた。

力があれば守り切れると思っていた。

 

"長歌行(夏達)「なぜ私が朔州を守ると思う?」/
(長歌行より)

朔州は北の異民族と国境を隔てており、争いの絶えない地であった。

刺史(長官)の公孫恒のもと、農業も盛んで、兵もよく鍛錬されていた。

彼が大事に思い守りたかったもの。

この先の道へ大きく影響をあたえることになる。 

 

長歌行(夏達)「一人を殺せば願いが叶うなんて、あまりに気楽で単純すぎた」
(長歌行より)

復讐がいい結果をもたらさないことを知る。

 

叔父の太宗皇帝は後に中国史上に残る名君になる。

子供の頃から近くで見てきた叔父にその器があることは理解しているが、恨みのために目を背けてきた。

個人の怨恨よりも民の暮らしと国の行く末を見守りたい。

長歌の道が決まった瞬間である。

日本での連載終了と今後 

既刊8巻、53話にて日本での連載が終了した。

理由は分からないが、作者にとって不本意であるということははっきりしている。

変に物語をまとめにかかることもなかった。

最終話のタイトルは「エンドレスエンド」であり、最終ページに「完」の文字を入れただけ。

日中同時連載であり、向こうがメインであると考えれば不思議はないのかもしれないが。

続きは中国で最大のweb漫画サイト「有妖気」 で読むことができる。

現在(2018年3月)61話まで。

8巻で納得するもよし、続きが気になって中国語版で読むもよし。

 

長歌行(夏達)かくれんぼ
(長歌行より)

公孫恒の遺児、援。幼いころの長歌の姿に重なる。

 

2017年秋、スピンオフにあたる「拾遺録」を開始。

拾遗录|官方在线漫画全集-快看漫画

単行本1冊分を予定しており、その後は新連載との情報もある。

あとがき 

連載版は調べながら読むけど、コミックは日本語版で続きが出て欲しいな。

中国語版の単行本のページ数は日本版と違うので、買う時は注意。

燕雲十八騎の他のメンバーは活躍の機会があるんだろうか。

 

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