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「さよなら私のクラマー」(新川直司)高校女子サッカーにかける青春群像劇

「さよなら私のクラマー」(新川直司)1巻 (月刊少年マガジンコミックス)

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

表紙の女の子で、「さよならフットボール」の主人公、恩田希のその後の物語でもある。

中学時代輝くことなく終わったウイング、周防(すおう)すみれは、ライバルである曽志崎緑(そしざき・みどり)から誘いを受ける。「一緒のチームに行こうよ、一人になんてさせないから」。そんな真摯な言葉に、周防が出した答えは……。たくさんの個性豊かな選手が集まり、今物語の幕が開く!!

「さよなら私のクラマー(1) (月刊少年マガジンコミックス)」より)

 

前回はこちら。

私がパスを出すよ

中学時代、学校が近かったせいで常に試合で競ってきた二人、曽志崎緑と周防すみれ。 片や全国区で注目される選手、片やチームメイトにめぐまれない弱小校のエース。 周防の才能を惜しんだ曽志崎は、卒業後同じチームに行くことを提案する。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)が連載開始したので読んでみた。恩田希が新チームで再び登場! - 午前3時の太陽

その日、二人が一緒に見に行った蕨青南と浦和邦成の試合は大差だった。

浦和邦成は曽志崎も誘われている全国常連の強豪校、一方の蕨青南はワラビーズと揶揄される弱小校。

下級生相手の練習試合としても実力には大きな開きがあるようだ。

そんな中で、蕨青南の選手の一人に目が留まった。

圧倒的な戦力差で孤軍奮闘していた彼女は、周防の境遇と重なるのである。

突出した才能が、環境のせいで死んでいく

「さよなら私のクラマー」(新川直司)1巻より、「一緒のチームに行こうよ」
(「さよなら私のクラマー」より)

「一緒のチームに行こうよ。」

試合後に出た曽志崎の言葉は、そんな才能を埋もれさせたくないとの思いと、周防とならゾクゾクするようなフットボールができるはずという期待感から来るもの。

でもまさか弱小校の方を選ぶことになるとは考えていなかったようだけれど。

そして進学先の蕨青南で恩田希と出会うことになる。

女子サッカーの舞台へ 

中学では男子サッカー部に所属していた恩田希を、女子サッカーの舞台へ送り出したのは藤一の鮫島監督だった。

試合にも出られないのに男子サッカー部を選ぶ理由は、レベルを落としたくないためと、スポーツ少年団から一緒のチームメイトとサッカーをやるのが楽しかったから。

人それぞれにふさわしい場所がある 

恩田希を試合で観たい。

それは鮫島監督の望みであり三年間の葛藤で得た答えだ。 

 「さよなら私のクラマー」(新川直司)1巻より、「お前は女子サッカーに行くんだ」
(「さよなら私のクラマー」より)

彼女の力がどこまで通用するのか、当時のプレイを知る者なら見てみたいと思うのはよく分かる。

その機会は、意外と早く訪れた。

蕨青南の卒業生で新コーチに就任した能見奈緒子の組んだ練習試合で、名門・久乃木学園と当たる。

春夏連覇、ほぼユース代表レベルの高校女子サッカー日本一のチーム。

到底勝ち目のない試合を企画した能見コーチの意図とは何か。

荒療治過ぎる気もするが、同世代のトップレベルを見ておくことは後々のためにいい経験になるかもしれない。

目が離せない

試合は当初の予想通り一方的なものとなったが、勝ち負けは問題ではなかった。

日本一のチームにどこまで通用するのか、圧倒的な実力差を見せつけられてもなお、顔を上げることができるのか。

上を目指して走りだす覚悟があるのか、私はそれが見たい 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)より、「恩田って何なのよ?」
(「さよなら私のクラマー」より)

恩田は中学時代、男子とのフィジカルの差をテクニックでカバーしていた選手。

今ではその苦しんだフィジカルが彼女の強みになった。 

新たなプレイスタイルで無双する姿が見られるかも。

 

試合もこのままやられっぱなしでは終われない。

蕨青南の反撃なるか。

あとがき 

サッカーには人生のすべてがある

(デットマール・クラマー) 

単行本1巻は2016年8月発売。(3話まで収録)

待望の「さよならフットボール」の続編。

表紙も連載開始時の周防すみれの絵が有力かと思ってたけど、練習試合で存在感の増している恩田希になった。

周防は2巻で本領発揮しそうだから次かな。

現状はモブだけど蕨青南の2番の選手も気になる。

 

2016年8月17日、Kindle版も同時配信。 

恩田希の中学時代を描く前日譚。 藤一のエリック・カントナ覚醒。全2巻。

前作「四月は君の嘘」の短編集も同時発売。

アニメ版DVDの特典として付けられた、5つの描きおろしエピソードを単行本化。 

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