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「ホクサイと飯さえあれば」(鈴木小波)喋るぬいぐるみホクサイと大学生ブンのごちそう漫画

「ホクサイと飯さえあれば」(鈴木小波)1巻 (ヤングマガジンコミックス)

「ホクサイと飯さえあれば」は鈴木小波(すずき さなみ)による漫画作品。

2014年よりヤングマガジンサードで連載を開始した。

伝説のインドア系ご馳走マンガ、復活移籍新連載!! かつて掲載誌の休刊に伴い惜しまれつつ終了した『ホクサイと飯』。本作『ホクサイと飯さえあれば』は、その8年前のお話。

(「ホクサイと飯さえあれば(1) (ヤングマガジンコミックス)」より) 

1巻は『空き缶ご飯』『変身のサンドイッチ』『魔法瓶で甘酒』『ミートボールスパゲティ』『聖なるパフェー』『牛すじカレー』 を収録。

山田ブンの大学生活

大学進学のために一人暮らしをすることになった山田文子(やまだ あやこ)は、実家を出て北千住の町へやってきた。

子供の頃からの相棒、ぬいぐるみのホクサイも一緒である。 

漫画「ホクサイと飯さえあれば」(鈴木小波)1巻より、ブンの旅立ち
(「ホクサイと飯さえあれば」1話より)

駅から15分、蔦の這う一軒家で家賃5万円の格安物件。

ここから彼女の学生生活が始まっていく。

本作は「ホクサイと飯」の前日譚であり、後日譚にもなる予定のものである。

この頃のブンは、まだ将来を決めかねている一人の大学生。

 

引っ越しを済ませて新居飯を味わうため、道中買ったメンチカツと共に荷物を待つブンに悲報が届いた。

渋滞で到着が1、2時間遅れるというのだ。

これは由々しき事態である。

荷物が届かなければご飯が炊けない。

だが彼女の食べることへの情熱は半端ではなかった。

炊飯器も鍋もないが、米はある。

そこで、記念すべき新居飯は、苦肉の策の空き缶ご飯。

漫画「ホクサイと飯さえあれば」(鈴木小波)1巻より、空き缶ご飯
(「ホクサイと飯さえあれば」1話より)

このたくましさが、母の「ブンならなんとかなるでしょ」の信頼につながるのだろう。

 

やがて友人もできる。

漫画「ホクサイと飯さえあれば」(鈴木小波)1巻より、ジュンがあらわれた
(「ホクサイと飯さえあれば」5話より)

同じ大学に通う有川絢子(ありかわあやこ)、通常ジュン。

貧乏学生のため、食べられる野草にも詳しいサバイバーだ。

そしていつもお腹をすかせている。

 

漫画「ホクサイと飯さえあれば」(鈴木小波)1巻より、凪とミートボールスパゲティ
(「ホクサイと飯さえあれば」4話より)

ブン宅の隣の墓地に出没すると噂になっている少年、凪。

ブンのことをからかってやろうと現れたが、逆に振り回されて彼女を気に入ってしまったようだ。

その後ちょくちょくご飯を食べに来るようになった。 

 

ブンが人見知りなので、2人が図々しいくらいでバランスが取れている。

この3人と喋るぬいぐるみホクサイによる日常系と言えばいいだろうか。

毎回料理は出て来るが、作るに至る過程だったりとか、出来るまでの経過がより重視されている。

甘酒の回や牛すじカレーの回などは特にそうかも。

仕込んでから出来るまで時間がかかるが、待っている間に少しずつおいしくなっていく。

そう思うだけで、今日一日素敵な日でしょ?

楽しみがあることで、その間に起こる出来事も味わっていこうとの前向きな姿勢だ。

こういう部分は後の漫画家ブンにもなかった視点かもしれない。

まだ経験も少なく料理上手なわけではないが、初めてのものにも試行錯誤しながらチャレンジしていくところが魅力かな。

前作も読んでおくとより味わい深くなる。

漫画「ホクサイと飯さえあれば」(鈴木小波)1巻より、聖なるパフェー
(「ホクサイと飯さえあれば」5話より)

あとがき

先日TVドラマ化が決定したらしい。(主演:上白石萌音)

ホクサイはどう表現するんだろうか。

「燐寸少女」も実写だったしアニメ化の話はないのかな?

 

追記:

前作「ホクサイと飯」に未収録だった『おかわり』編を含めた「新装版 ホクサイと飯」がドラマ化に合わせて発売される。

 

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