- ・アキ・カウリスマキ監督「バーテンダー」
- ・ペドロ・コスタ監督「スウィート・エクソシスト」
- ・ビクトル・エリセ監督「割れたガラス」
- ・マノエル・ド・オリヴェイラ監督「征服者、制服さる」
映画『ポルトガル、ここに誕生す ~ギマランイス歴史地区』予告編 - YouTube
「バーテンダー」
アキ・カウリスマキ監督。イルッカ・コイブラ出演。
監督はフィンランドの出身ですが、当時はポルトガルに住んでいました。
あるバーテンダーの1日をシュールに描く作品です。
まだ薄暗い朝靄の中を、狭い路地を通って男がやってきます。
表通りから少し入った所にある店を一人で営業している男。
掃除から始まり、料理の仕込みに入ります。
この1話目はセリフが全くないんですよ。
でもこのバーテンダーの人柄と哀愁は伝わります。
看板メニューはスープ。
野菜を切る包丁の切れなさ具合といい、塩を加える時の手つきといい、見ていて不安になってきます。
この店は絶対流行らないw
そして表通りの繁盛店に偵察に出かけますが…
15分ほどの短さなんですが、さすがの安定感、カウリスマキ節にニヤニヤします。
ラジオから流れる音。情熱と救い。次の作品に繋がる小道具の使い方。
花はポイントですね。
前作ル・アーヴルの靴みがきを観ているとにやっとできる演出も入っています。
「スウィート・エクソシスト」
地元ポルトガルのペドロ・コスタ監督。
カーティス・メイフィールド(Curtis Mayfield*2)の1974年にリリースされた曲から採られたタイトルです。
ポルトガルでは「若い命の嘆き」という訳が付けられているとか。
同年に起きた、独裁政権打倒の無血革命“カーネーション革命*3”を題材とした、これまたシュールな作風。
かつて革命に参加したヴェントゥーラが病院のエレベーターで兵士の亡霊と出会います。
4つの中では、これが1番難解です。
夜の森の中、仲間たちのヴェントゥーラを呼ぶ声。ヴェントゥーラは1人、山道の途中で意識を失います。
気が付くと、年老いたヴェントゥーラはパジャマ姿でエレベーターの前に立っていました。
これは歴史的背景を知らないと意味不明だと思います。
ヴェントゥーラは監督の他の作品にも出演しているそうなので、それを観るとわかるんでしょうか。
この亡霊は黒塗りの銅像のような姿で登場します。
Curtis Mayfield, Sweet Exorcist - YouTube
「割れたガラス」
1845年創業のリオ・ヴィゼラ紡績繊維工場跡で、元労働者達が当時の思い出を語ります。
名もない人々の言葉が印象に残る。
暗闇から聞こえてくる水滴の音、廃墟の広間に漏れる光、切り取られる窓、割れたガラス。
この工場、実はギマランイスとは直接関係ありません。
歴史的価値つながりということでしょうね。
主にインタビューによる構成なのですが、冒頭の工場跡の映像がやはりエリセ監督らしいです。
廃墟なのに美しい。
そして、元労働者たちの入れ替わり方が、亡霊のようです。
廃墟のシーンは静かな環境で、いい音で観てほしいです。
「征服者、征服さる」
初代ポルトガル国王の像の広場の観光案内。
タイトル通りの落ち。この映画の企画意図に一番沿っているのはこの作品かもしれません。
像の前で写真を撮影するツアー客を前に一言。そしてドヤ顔。
粋ですね。
あとがき
味わい深い4作品。
僕はエリセ監督が目的で観ました。
最後の長編「マルメロの陽光」 から20年以上経ちますが、こういうオムニバスでたまに短い作品を観れるのが貴重なんですよね。
「割れたガラス」の箇所でいい音で、と書きましたが、Amazonのレビューでピンクムーンさんが詳しく書いてます。
これ読んでから何度も観返しました。
おまけでカーティス・メイフィールドをもう1曲。
Curtis Mayfield - Move On Up - YouTube
それでは。
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