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「ラヴィ・ド・ボエーム」カウリスマキ版ボヘミアン生活の情景

アキ・カウリスマキ監督作品ラヴィ・ド・ボエーム

「ラヴィ・ド・ボエーム」はフィンランドのアキ・カウリスマキ監督による1992年公開の作品。

フランスの作家アンリ・ミュルジェールの自伝的小説「ボヘミアン生活の情景」を原作としている。

 

同原作を元にした有名なものはプッチーニ*1のオペラ、「ラ・ボエーム」があるが、カウリスマキ監督はお気に召さなかったようだ。

 

2011年の映画で現在監督の長編最新作でもある「ル・アーヴルの靴みがき」は本作の後日譚ともなっている。

あらすじ

売れない作家のマルセルは、出版社からの入金がなく、家賃を払えずにいた。

大家からは立ち退きを要求され、新しい入居者が決まっていることを告げられる。

立ち寄ったレストランで芸術論をかわし意気投合した画家のロドルフォとアパートに戻ると、すでに作曲家のショナールが引っ越してきていて、曲作りに没頭していた。

部屋はあるが家具のないショナールと、家具はあるが部屋のないマルセル、近所に住むロドルフォ、売れない芸術家三人の奇妙な共同生活が始まった。

予告編動画 

La Vie De Boheme Trailer (1992) - Video Detective

愛すべき芸術家たち

マルセル

「ル・アーヴルの靴みがき」で、「昔はパリで雑文を書いていた」というセリフがあったが、本作はそのパリ時代にあたる。

まだいくらか若く、野心もあるが、原稿料だけでは食べていけない。

出版社から短くしろと言われている戯曲の原稿は、21幕ものでロープで縛らないと持ち運べない。

タイトルは「復讐」だ。

原作を台無しにしたプッチーニへの“復讐”という意味も含んでいそうなこと、監督自身シナリオライター時代は長いセリフを書いていたと語ったことと重ねているかもしれない点もおもしろい。

作家としてはだめだが、新聞王から雑誌の創刊の話を取り付けたり、ロドルフォの絵の値段を吊り上げたり、営業的な能力は持っている。

ロドルフォ

作中で唯一作品が売れた人物。

名言が多いのもこの人。

隣の部屋を訪ねてきたヒロインを一晩泊めてやるが、ソファでいいというヒロインにベッドを譲って、自分は野宿をする。

「ソファは寝心地が悪い。それに僕は手が早いし、君は美人ときてる。」

野宿した先が原作者の墓で、花を半分だけ分けてもらうのもいい。

ショナール

一番謎なのはこの人。

一番仕事がなさそうなのに、どこからともなく調達してくる。

そしてモテる。

「芸術におけるブルーの影響」という前衛的な曲を作曲中。

一度だけ披露するが、弾ききった後のドヤ顔がなんとも言えない。

ボードレール

原作には四人目の芸術家が存在するが、本作では代わりにロドルフォの相棒として詩人の名を持つ犬が登場する。

監督の愛犬で本名はライカ。

共通の出演者

2作に共通の役で登場するのはマルセルのみだが、どちらにも出演している俳優もいる。

砂糖工場主役のジャン=ピエール・レオとミミ役のイヴリーヌ・ディディだ。

レオは続編ではチョイ役で、イヴリーヌ・ディディは役名がある。

ミミ

田舎から知人を頼ってやってくるが、留守で途方に暮れているところをロドルフォに助けられる。

その後は近くの店で働いていたところを再会する。

この役を演じているイヴリーヌ・ディディは、ル・アーヴルの町でマルセルの近所のパン屋のおかみさんだ。

マルセルの妻が入院した時にお見舞いでカフカの短編集を朗読してくれた人。

別人の役だけど、この人が読むことに意味があった。

両方観た人だけがわかる粋な演出だ。

アキ・カウリスマキ監督について

アキ・カウリスマキ監督は映画好きの間では人気のある監督だと思っているのだが、日本ではまだまだマイナーなのかもしれない。

映画レビューサイトFilmarksのマーク数(鑑賞数)は本作で117。

「プラダを着た悪魔」などが30000を超えているのを考えるとちょっとさみしい数字だ。

もっと多くの人に観てもらいたいのだけど。

ドキュメンタリー「小津と語る」の中で、映画監督になるきっかけが語られている。

76年、兄に強引にロンドンで見せられたのが「東京物語」でした。

その時から私は、文学への憧れを捨てて、“赤いやかん”を探すことにしました。

“赤いやかん”は小津作品の象徴であり、映画の世界。

赤い水筒を手に語る若き日のカウリスマキ監督が微笑ましい。

以下は2014年のソダンキュラ白夜映画祭におけるインタビュー。

最近はどんな映画を観ていますかの質問の答えは興味深い。 

アキ・カウリスマキ監督のインタビュー - YouTube

あとがき

僕はル・アーヴルの方から観たけど、どっちからでもいいかなと思う。

いずれにしてもセットで観るのがおすすめ。

本作は情報が少ないのと、レンタルで置いてない可能性があるが、見つけたら手にとってみてほしい。

 

原題:La Vie de bheme  

監督:アキ・カウリスマキ

原作:アンリ・ミュルジェール「ボヘミアン生活の情景」

出演:アンドレ・ウィルム(マルセル) / マッティ・ペロンパー(ロドルフォ) / カリ・ヴァーナネン(ショナール) / イヴリーヌ・ディディ(ミミ) / ルイ・マル / ジャン=ピエール・レオ / サミュエル・フラー

 

 

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