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「ぼくを探しに」ハーブティとマドレーヌが誘う記憶の旅

映画「ぼくを探しに」

「ぼくを探しに」はシルヴァン・ショメ監督による2013年公開の映画。

 

音楽、スイーツ、不思議なハーブティー。

しあわせの鍵は、記憶の中にある。

 

最も古い記憶は2歳の時。

叔父に連れられて幼稚園に向かう姉を、祖母の家の縁側から眺めていた。

なぜ2歳と言えるのかというと、その状況を後になって判断したものであるし、それが確かな記憶なのかというと、いささか自信がない。

ただ、おぼろげな映像として残っているだけだ。

記憶の存在は曖昧だ。

 

シルヴァン・ショメ監督は、「ベルヴィル・ランデブー」や「イリュージョニスト」で知られるフランスを代表するアニメーション監督。

特に後者は僕が昨年(2014年)観た中で一番印象に残っていた映画なので、この初の長編実写作品も気になっていた。

アニメ監督が実写を撮っていいものになるとは限らないし、プロデューサーが「アメリ」を手がけた人という不安材料もあったが杞憂に終わった。

あらすじ・概要

主人公ポールは幼い頃に両親を亡くしたショックから言葉を話せなくなっていた。
33歳になった今は、一緒に暮らす2人の伯母が営むダンス教室でピアノを弾いている。
シューケット*1というお菓子が好物で常に手元に置いているが、買い出しに出かける途中、偶然に謎の女性マダム・プルーストの部屋に迷い込んでしまう。
 
この作品はもともと、「ベルヴィル・ランデブー」のサントラでも使われた「Attila marcel」という曲と、フランスの作家であるマルセル・プルースト*2の「失われた時を求めて」からインスピレーションを得て制作されたとの事。
ポールの記憶を取り戻すのに重要な役を担っているのが、プロレスラーであった父マルセルと、この婦人、マダム・プルースト。
 
セラピストをしているマダム・プルーストが使うのが不思議な味のハーブティーとマドレーヌなのだが、「普通のマドレーヌよ。オレンジ風味はゲイっぽい。」と言わせるあたりが意識している。
 
父に対していい記憶がないのはなぜなのか。言葉を話せなくなった原因はどこにあるのか。
マダム・プルーストの部屋に通う中で少しずつ謎が解明されていく。
 
記憶の中の映像は三拍子の曲にのせたミュージカル調で、このあたり好みが分かれるのかもしれない。
 


Bernadette Lafont – Ni l'un ni l'autre - YouTube

 
真実を知ってからのまとめ方はシルヴァン・ショメらしい。
エンドロール後のおまけ映像も定番だ。
 
すべては記憶の中にある。
そこは薬局か化学室のようで、手に取るのが鎮静剤か毒薬か分からない。
(マルセル・プルースト)

 

 

原題:Attila Marcel
監督:シルヴァン・ショメ
出演:ギョーム・グイ / アンヌ・ル・ニ / ベルナデット・ラフォン / エレーヌ・ヴァンサン / ルイス・レゴ / ファニー・トゥーロン

予告編動画 


映画『ぼくを探しに』予告編 - YouTube

 

絵本でも同じタイトルのものがあるが、本作の邦題はこれを意識しているのかもしれない。

何かが足りない

それでぼくは楽しくない

足りないかけらを探しに行く

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