「ピアノ・レッスン」はジェーン・カンピオン監督による1993年公開の映画。
ニュージーランドに渡った親子の現地の人々との交流、ピアノを巡る死と再生の物語。
海辺に置き去りにされたピアノ。
マイケル・ナイマンのピアノを聴いたのは中学生くらいの頃。
車のCMで流れていたのが気になって、その度にテレビの前に走って行ってチェックした。
今なら検索してすぐに探せるけど、当時は隅っこに一瞬だけ表示されるマイケル・ナイマンの文字を見るために必死だった。
The Piano (1993) Soundtrack by Michael Nyman
名前だけを手掛かりに手に入れたのがこの映画のサントラ版。
何度も繰り返し聴いて、飽きたらずに楽譜も買って自分で弾いた。
でもなぜか映画を観てみようかとは思わなかった。
そして昨年ようやく観た。
あらすじ
19世紀の半ば、スコットランドに暮らすエイダは、ニュージーランドに住む会ったこともない男の元へ嫁ぐため、娘とピアノと共に海を渡る。
幼い頃に話すことをやめたエイダにとって、ピアノは感情を表す声の代わりであり、手話を使って通訳する娘は分身のような存在であった。
海辺に到着した翌日、夫のスチュアートはマオリ族の男たちを連れて迎えに来るが、大きな木の箱に覆われたピアノを見て驚く。
家までの道のりは足場が悪く、ピアノも同時に運ぶのは困難だった。
予告編動画
The Piano Trailer HD - Original - YouTube
理解のない夫と理解のある隣人
夫のスチュアートは、日が変わってもピアノを運ぼうとはしなかった。
無理をしてでもピアノを家まで運ぶ意味、エイダがなぜ執拗にピアノにこだわるのかが理解できなかった。
一方で、隣人でもあり、夫の友人でもあるベインズは、マオリに同化しようとしている入植者。
エイダにとってのピアノの価値を理解し、土地との交換条件としてピアノを貰い受けることを申し入れる。
エイダがどちらに惹かれる要素があるのか、明らかだ。
ピアノ・レッスン
ピアノを手に入れたベインズは、レッスンを条件にピアノをエイダに返すことを約束する。1鍵ずつ。
ここではフェティシズムあふれる官能的な描写がみられるのだが、女性陣には概ね好評のようだ。
ベインズ役のハーヴェイ・カイテルはセクシーらしい。
邦題はここからきているだろうし、今では確認できないが日本版の予告編ではここのシーンを強調してあった気がする。
全体から考えるとそこまで重要ではない部分を濃密に描いているのはフランスの女性監督であるジェーン・カンピオンのうまさかもしれない。
原題は「The Piano」。こっちの方がしっくりくるのに日本で公開する際にわかりづらいと判断されたのかな。
重要じゃないと思うのは僕が男だからかもしれないけれど。
あとがき
本作で主演のホリー・ハンターと娘役のアンナ・パキンはそれぞれアカデミー賞を受賞した。
本人がちゃんと演奏しているというのも好印象。
エイダのピアノを理解したのは、入植者として現地人の上に立とうとする夫よりも、マオリの言葉を話し共に生きようとするベインズ。
さらによくわかっていたのはマオリ族の男たちかもしれない。
その言葉は、空耳の部分も含めてエイダを導くセリフだ。
これは字幕で観ることをおすすめする。
原題:The Piano
監督:ジェーン・カンピオン
出演:ホリー・ハンター
ハーヴェイ・カイテル
サム・ニール
アンナ・パキン
テーマ曲はアレンジを変えて何度も繰り返されていて、題名もそれぞれなんだけど、 wikiを始め「楽しみを希う心」と表記されていることが多い。
長らく不思議に思っていたが、それはこの楽譜によるものらしい。
ちなみに、手元にある楽譜(初版)は「The Sacrifice(犠牲者)」だ。
サントラの最新版。
視聴で聴き比べてみたが、「The Sacrifice(犠牲者)」の方がきれいだ。
メロディがシンプルで聴きやすくなっているのは「楽しみを希う心」の方。