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「Vフォー・ヴェンデッタ」理念を持ち、信念に生きよ

V フォー・ヴェンデッタ(初回生産限定スペシャル・パッケージ) [DVD]

「Vフォー・ヴェンデッタ」はジェームズ・マクティーグ監督による2005年公開の映画。

原作はサッチャー政権下の80年代イギリスで連載されたコミック作品。

独裁者による圧政の中、一人の男が復讐の為にロンドンに現れた。

図らずも巻き込まれていく一人の女性、男の正体を探り真相に近づいていく刑事。

1年後の11月5日、運命の日を迎える。

あらすじ 

第三次世界大戦後の2020年、イギリスはアダム・サトラー議長による独裁体制が続き、全体主義の世となった。

11月4日の深夜、テレビ局に勤めるイヴィー・ハモンドは上司のもとへ急いでいた。

夜11時以降の外出禁止令が出されている中、見つかれば逮捕されるためだ。

監視を避け、路地を抜けようとしたところを運悪く秘密警察に遭遇し、連れ去られようとしていた場面を仮面の男に救われた。

その“V”と名乗る男にビルの屋上に招待されイヴィーが見たものは、街中に序曲「1812年」が鳴り響く中、爆破され、崩れ落ちる裁判所。

男の復讐の幕開けであった。 

予告編動画

V For Vendetta (2005) Official Trailer #1 - Sc-Fi Thriller HD - YouTube

ガイ・フォークス・デイ

忘れることは許されぬ

人々の記憶の底にとどめおけ

 

本作を理解する上で前提となる歴史的事件がある。

冒頭でも少し説明が入るが、1605年に起きた火薬陰謀事件だ。

実行犯ガイ・フォークスによる議事堂爆破未遂。

11月5日のこの日、延期になっていた国会が開会し、国王以下の要人たちが集まる予定であった。

地下の通路で大量の火薬とともに発見されたガイ・フォークスは拷問され処刑された。

 

その後、国王の無事を祝い、ガイ・フォークス・デイと呼ばれる祝祭日となった。

篝火を焚き、花火を打ち上げる。

重要なのは、国家への抵抗と革命のシンボルとも見做されている点だ。

Vの仮面はこのガイ・フォークスのもの。

革命の狼煙

Vは国営テレビ局のスタジオをジャックし、国民に呼びかける。

その言葉は、圧政の中で考えることをやめた人々を惹きつけた。

スピーチの一部を引用してみる。

 

警棒で言葉を抑圧することも可能だ。

だが言葉には力がある。

“意義”もある。

真実を明らかにすることもできる。

真実とはこの国に大きな間違いがあることだ。

暴虐、不正、弾圧、それがこの国だ。

(中略)

400年以上前、ある市民が我々の記憶に刻み込んだ。“11月5日”を。

彼は伝えようとした、“自由と正義は言葉ではない、それは生き方だ”と。

(中略)

あなたが私と同じように感じ、立ち上がるというなら、

1年後、私と共に議事堂の正面に立とう。

そして11月5日の記憶を、再び記憶に刻みこむのだ。

 

権力者の独裁を許していたのは、偽りの平和に安寧し、自由を忘れた一人ひとりにも責任がある。

裁判所の爆破は、これから起こる変革の序曲に過ぎない。

Vにとってこれは個人的な復讐でもある。

だが、目的を遂げた後はどうなるか。

権力者の顔が変わり、新たな独裁が始まるのか。

Vは、その後の国の行く末を、人々の良識ある判断とその可能性に賭けた。

 

Vとイヴィーが出会った時に、彼は言う。

「イヴィー、EVか、運命だな。」

彼女は、もう一人の、新しい世代の、そして連鎖を断ち切る存在だった。 

 

Vフォー・ヴェンデッタ映画シーン

Vへのこだわりと言葉遊び

Vとは復讐のV、勝利のV、数字のVだ。

Vは古典文学を愛し、映画を愛し、音楽・芸術を愛した。

そのセリフにはしばしばシェイクスピアのセリフの引用が用いられる。

これが一々場面に合っているのだ。

主教の断罪のシーンなど、そのために用意された言葉のようだった。

 

好きな映画はロバート・ドーナット主演の「岩窟王」(1934)で、映画のシーンをバックに主人公になりきり剣の訓練をする。

Vの後半生、運命は、モンテ・クリスト伯エドモン・ダンテスに重なる。

ただ違うのは、作中繰り返されるラストのシーン。

 

仮面に隠され顔が見えない分、こんな日常の場面が彼の人間的な魅力でもある。

芝居がかった自己紹介で、韻を踏みまくったセリフをイヴィーに「頭がおかしいの?」とつっこまれたり、似合わないエプロンで鼻歌交じりに朝食を用意したり。

 

爆破の際にVの字を描く花火を仕込んだり、警官隊がドアを破る際に壊れたドアがVの形に見えたり、EVのEはアルファベットの5番目の文字だったり。

そういった小ネタを探すのも楽しいかもしれない。

 

Vフォー・ヴェンデッタ朝食シーン

あとがき

旧版のジャケットはいまいち食指が動かなかったんだけど、今度のはかっこいいね。

坊主頭のナタリー・ポートマンも凛々しい。

 

ロバート・ドーナットの出演作は、「チップス先生さようなら」がよかった。

青年期から老年期までのチップス先生を一人で演じている。

あと気になっているのは「ヘンリー八世の私生活」。

チャールズ・ロートンのアカデミー賞受賞作だ。

これはレンタルではないかな。

それでは。 

 

原題:V for Vendetta

監督:ジェームズ・マクティーグ

出演: ヒューゴ・ウィーヴィング / ナタリー・ポートマン / スティーヴン・レイ / ジョン・ハート / ティム・ピゴット=スミス / スティーヴン・フライ / シニード・キューザック / ルパート・グレイヴス / イモージェン・プーツ

 

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