午前3時の太陽

おすすめ漫画の紹介と注目の新刊コミックのレビューブログ

おすすめの面白い漫画100作品をまとめてみた

本を読む子供たち

2020/06/21 更新

 

個人的におすすめな漫画を100作品選んでみた。

このブログの好みの傾向の提示と、各ページへの入り口になればいいなと思っている。

 

前提条件は以下の通り。

  • 同じ作者の作品は選ばない
  • 連載中、完結済の区別はしない
  • ランキング形式にはしない
  • 電子書籍化されているものを中心に選ぶ

ランキング形式にしなかったのは、順位を決めるとどうしてもメジャーな作品に偏ってしまうから。

最近気になっている作品とか、マイナーだけどおすすめしたいものとか、後から入れ替えることもしやすい利点もある。

なるべく新しい作品、今読んで面白い作品を選びたいと思う。

他におすすめの漫画が出てきたら随時更新していきたい。

数字は順位ではなく見やすいように付けてみた。

1. 恋情デスペラード(アントンシク) 

西部劇を思わせる砂漠が広がる世界で、街から街へと旅を続ける女風来坊。

人呼んで「刃雷のお紋」。

銃が普及し、旅人も護身用に持ち歩く世に、時代遅れの長ドス一本。

目的は、日本一の夫を探しだすこと。

修羅道に生まれ落ち、幼い頃から裏社会で生きてきた紋子にとって、人であることを思い出させてくれたものが恋情(こいごころ)だった。

そして、恩人である「長ドスのおじさん」との日々は忘れられないものとなっている。

あのトキメキをもう一度、そして真に人になるために、彼女の旅は続く。

「恋情デスペラード」(アントンシク)4巻より、修繕費のためメイドになった紋子
(「恋情デスペラード」4巻より)

旅の理由こそ甘さを感じさせるが、その道程は波乱に満ちている。

切った張ったの世界で繰り広げられる本格スチームパンク時代劇アクション作品。

2. ホクサイと飯(鈴木小波:すずき さなみ)

一人暮らしの女マンガ家が、迫り来る締切&容赦ない編集、そして日々の「飯」と全力で取り組む姿を描いた、インドア系ご馳走マンガ

山田ブン、26歳漫画家。

「三度の飯より飯がすき」

相棒はぬいぐるみのホクサイでツッコミ役と解説を担当する。

締め切り数時間前でも料理に妥協はしない。

この清々しいほどの食への情熱はちょっと見習いたい。

ホクサイと飯(鈴木小波)「ご飯が白い!」
(「ホクサイと飯」より)

炊きたての白いご飯もいいけど、おかずも欲しいよね。 

掲載誌の休刊により全1巻。

2017年1月からのドラマ化の影響で、これまで同人誌で販売されていた未収録分「ホクサイと飯 おかわり」も含めた新装版が発売された。

現在、本作の8年前を描いた「ホクサイと飯さえあれば」を連載中である。

3. 荒ぶる季節の乙女どもよ。(岡田麿里、絵本奈央) 

小野寺和紗(おのでら かずさ)の所属する文芸部は、放課後みんなで一つの作品を読んで語り合うのが活動の中心となっている。

ある日、部内で「死ぬまでにしたいこと」が話題になった時、部員の一人が口にしたセックスの言葉をきっかけに、彼女たちはそれぞれの性に向き合い始める。

姉弟のように育ってきた幼なじみとの関係が変わり始めることを恐れる和紗、クラスメイトに言われた初めての可愛いの言葉に動揺する曽根崎先輩など、思春期の悩みに揺れる姿を描く。

「荒ぶる季節の乙女どもよ。」週刊少年マガジン特別出張篇より、女の子もするの?
(「荒ぶる季節の乙女どもよ。」より)

4. コトノバドライブ(芦奈野ひとし)

過去の風景や姿を5分間だけ見ることのできる不思議な力を持つ少女の物語。

カメラを手に入れて、古いバイクで撮影に出かける様子は前作「ヨコハマ買い出し紀行」を思い出させる。

ミートソースとナポリタンしかないスパゲティ屋ランプでアルバイトをするすーちゃんは、子供のころから時々不思議な体験をしていた。

立ち寄ったコンビニのあたりが昔は入江だったこと、バス停の名前の由来になった古い食堂の姿。

束の間、非日常の世界へ迷い込む。

セリフも少なくシンプルな絵柄でサクっと読めるんだけど、ゆっくり味わいたい漫画でもある。全4巻。 

5. 上野さんは不器用(tugeneko)

中学三年生の上野さんは、科学部部長で天才発明家。

彼女は同じ部の後輩、田中に恋をしている。

ところがこの田中、とんでもなく鈍感だった。

強気な態度とは裏腹にシャイな上野さんは、田中を振り向かせるために今日もその能力を発揮する。

携帯型濾過装置「ロッカくん」でおしっこを飲ませようとしてみたり、瞬間脱臭装置「ダッシュたん」でパンツを手に入れようとしてみたり。

少々努力の方向が間違っているが、思春期なのでしょうがない。

「上野さんは不器用」(tugeneko)1巻より、発明品を披露する上野さん
(「上野さんは不器用」1巻より)

いつも冷静な常識人の山下さんがいい味出している。

6. 大上さん、だだ漏れです。(吉田丸悠)

エロいことが気になって仕方がない大上さんと、自分に触れた人間の本音を引き出してしまう柳沼くんは、周囲に壁を作ってしまっていた。

クラスメイトに知られてしまったら、平和な学校生活に支障が出てしまうかもしれない。

そのために友達のいない二人は、お互いに友達の練習をすることになるのだった。

やがて、見た目は恐いが手芸が得意なピュア男子の松隈くんや、リア充女子の根津さんも登場し、ぼっち生活から広がっていく。

「大上さん、だだ漏れです。」(吉田丸悠)1巻より、ちんこ見せて
(「大上さん、だだ漏れです。」1巻より)

見所はやはり、大上さんの思春期真っ只中の妄想だだ漏れっぷりにある。

クラスにも友達ができて、周囲との壁が取り払われた時、二人の関係がどう変化していくのかも気になる。

7. 人形の国(弐瓶勉)

遺跡層に覆われた巨大な人工天体アポシムズ。

その中心部には超構造体の硬い殻に阻まれた地底世界があるという。

古い時代の戦争により地上に残された人々は、極寒の中を細々と暮らしていたのだが、そのうちの一つの国が力を持ち支配に乗り出した。

辺境の小さな集落で暮らすエスローは、帝国に追われているひとりの少女を救ったことにより、二つの世界を巻き込む争いに関わっていく。

「人形の国」(弐瓶勉)2巻より、帝国の正規人形と戦うエスローとケーシャ
(「人形の国」2巻より)

エスローや帝国の正規人形と呼ばれる兵士たちは、鎧化して戦うのが特徴。

強くなる条件として、相手を倒してその体に纏っている物質エナを奪い、容量を増やしていくという明快な成長方法も魅力のひとつである。

8. 化物語(西尾維新、大暮維人)

吸血鬼に魅入られた少年とその周囲に起こる怪異を描く物語。

直江津高校3年生の阿良々木暦は、とある出来事をきっかけにクラスメイト・戦場ヶ原ひたぎの秘密を知ってしまう。

彼女には、体重と呼べるものがほとんど無かった。

自らも奇妙な体験をしている阿良々木は、事態を解決できそうな人物を紹介することになるのだが…

「化物語」(西尾維新、大暮維人)1巻より、文房具を構える戦場ヶ原ひたぎ
(「化物語」1巻より)

西尾維新の人気作を、大暮維人を作画に迎え、満を持してのコミカライズ。

アニメ版が好きだった人も、そうでない人も楽しめそうな超絶クオリティである。

個人的には後者なのだが、俄然興味が湧いてきた。

9. スローループ(うちのまいこ)

親の再婚で姉妹になった山川ひよりと海凪小春。

片やフライフィッシングが得意な人見知りの女の子、片や外遊びを知らずに育った明るい女の子。

二人が仲良くなるきっかけになったのは釣りだった。

ひよりが専門にしているのは虫や小魚に模した毛ばりを使った釣法で、きらら作品とは思えないマニアックさ。

「スローループ」(うちのまいこ)1巻より、あなたが釣って私が料理するの
(「スローループ」1巻より) 

料理が得意な小春とはいいコンビになりそうではある。

作者もアウドドアが好きらしく、きららにはすでにキャンプ漫画があったために釣り方面から攻めることになったとのこと。

個人的には釣り具屋の看板娘の恋ちゃんが気に入っている。

「スローループ」(うちのまいこ)1巻より、恋ちゃんは釣りをしない
(「スローループ」1巻より) 

彼女はひよりの幼なじみで、今は理由があって釣りからは離れているが、小春が間に入ることでまた一緒に活動することになるだろう。

むしろ毎回登場してもらいたい。

10. 乙女怪獣キャラメリゼ(蒼木スピカ)

子供の頃から奇妙な症状に悩まされてきた女の子・赤石黒絵。

彼女は気持ちが高ぶると身体の一部が怪獣化してしまう。

周囲との関わりを避けることで隠し通してきたのだが、ある日恋をしたことにより本格的に巨大生物へと覚醒するのだった。

「乙女怪獣キャラメリゼ」(蒼木スピカ)1巻より、怪獣ハルゴンの登場に喜ぶ真夏
(「乙女怪獣キャラメリゼ」1巻より)

南くんには秘密を知られたくないのに、特別に感じる思いが彼女の怪獣化を促進させてしまう。

この恋は容易ではない。

果たして隠し通すことができるのか、それとも知ってなお受け入れてもらえるのか。

ちなみに受け入れてくれそうな友人はできた模様。

11. 長歌行(夏達:シャアタア)

626年(武徳9年)、唐の高祖の後継者争いは、玄武門の変を制した李世民が第二代皇帝(太宗)となることで決着した。

皇太子であった李建成と弟元吉の一族の中で生き延びたのは、建成の娘の永寧姫こと李長歌ただ一人。

幼い頃より武術や兵法に関心を持ち、聡明であった彼女は、叔父李世民への復讐を誓い長安を後にする。

長歌行(夏達)李長歌北の地突厥へ向かう
(「長歌行」より)

中国の漫画家、夏達による歴史ファンタジー。

仇討ちとして選ぶ手段が暗殺ではなく挙兵という堅実な方法である。

最初に向かうのは朔州の公孫氏のもと。

この辺、三国志での劉備みたい。

既刊8巻。

2016年春、ウルトラジャンプでの日本語版だけが何故か連載終了したのだが、続きが気になるところだ。(向こうではweb版で連載続行)

2016年末、作者の健康上の理由により長期休載に入った。

2017年秋、スピンオフにあたる「拾遺録」を連載開始。

12. 鉄道少女漫画(中村明日美子)

主に駅や電車内を舞台にした短編集。

もともとは本作に出てくる登場人物を主役にした続編「君曜日」の絵が気になったのがきっかけ。

水彩のような色づかいがきれい。

本作だと「浪漫避行にのっとって」が好き。

スリの常習犯である女子高生と、弟と旅行に出かけた妻を追う男との出会いからのロマンスカー追跡。

「鉄道少女漫画」(中村明日美子)より、スリの女子高生とロマンスカー追跡
(「鉄道少女漫画」より)

乗り換えは重要だけど、説明の下りが具体的すぎて笑った。

1巻は連作短編集で、2巻以降はそのうちの1作「木曜日のサバラン」のスピンオフになっている。

13. 五等分の花嫁(春場ねぎ)

学年一位の秀才・上杉風太郎が家庭教師として受け持ったのは、転校してきたばかりの同級生。

揃って勉強嫌いで問題児な、五人の女の子たちだった。

第一印象が良くなかったこともあり、まずは教えることを認めてもらうことから始めなければいけない。

家計を支えるために、何としてもこの仕事をやり遂げたい彼と、どうにかして勉強から逃れたい中野家五姉妹たちの騒動を描く。

「五等分の花嫁」(春場ねぎ)1巻より、責任取ってよね
(「五等分の花嫁」1巻より)

未来の姿として結婚式を行う場面があるので、彼女たちのうち誰が選ばれるのか、あるいは全員と?というところも見所。

現時点では三女の三玖(みく)が一番人気。

14. 魔王城でおやすみ(熊之股鍵次)

人と魔物がまだ争っていた時代のこと。

魔物たちにさらわれた人類統一国家カイミーン国のスヤリス姫は、魔王城で平和な日々を過ごしていた。

唯一の悩みは、ここへ来てから安眠できた試しがないことだ。

牢に閉じ込められて、寝る以外にすることがない彼女にとっては死活問題である。

眠りの質を高めるには、寝具が大事。

材料調達のために立ち上がった姫の魔王城探検が始まる。

漫画「魔王城でおやすみ」(熊之股鍵次)より、電撃で肩こりを治したい
(「魔王城でおやすみ」より)

15. とどのつまりの有頂天(あらた伊里)

高校の敷地内にある寂れた神社で、新しい部が創設された。

部活が必須なこの学校で、マイナー部の避難所として結成された共同体である。

その名も有頂天部。

個性の強すぎる部員たちと、顧問を務める生徒会役員の猫崎さんとの賑やかな日々を描くハイテンション百合コメディ。

「とどのつまりの有頂天」(あらた伊里)1巻より、有頂天神社での二人の時間
(「とどのつまりの有頂天」1巻より)

個人的な推しは猫崎さん。

校内でもクールなキャラで知られている彼女は、私生活では意外とぽんこつだったりする。

同じ有頂天部の美古都のことが気になっているのだが…

16. 甘々と稲妻(雨隠ギド)

高校教師の犬塚は幼い娘と二人暮らし。半年前に妻を亡くしたばかりで仕事や家事に追われ、食事はコンビニ弁当ばかり。

ある日、テレビをみていた娘つむぎの言葉にショックを受ける。

おいしいものを食べさせようと夜の道を料理屋に向かうがそれをきっかけに料理屋の娘小鳥との料理会がはじまる。

一話は土鍋で炊いた御飯だが、それを食べた時のつむぎの表情、それを見たら買うしかないと思った。

2016年夏アニメ化。

17. 英霊剣豪七番勝負(渡れい)

人気ゲームFGOの1.5部の各エピソードを、複数の出版社で同時コミカライズ。

講談社のマガポケでは、そのうち『屍山血河舞台 下総国 -英霊剣豪七番勝負-』を連載している。

カルデア内の図書室で突然意識を失った藤丸立香は、気が付くと徳川の世の下総国へと迷い込んでいた。

少し前にこの世界に来たらしい女剣士・宮本武蔵や宝蔵院胤舜と邂逅した彼女は、直後に悪鬼に襲われ巨大な陰謀に巻き込まれていく。

「Fate/Grand Order -Epic of Remnant- 英霊剣豪七番勝負」(渡れい)2巻より、常陸国は焼け野原
(「Fate/Grand Order -Epic of Remnant- 英霊剣豪七番勝負」2巻より)

最初の時点では全員が格上の相手で、全く歯が立たず逃げるしか道がないのだが、ここから熱い戦いが繰り広げられていくはずだ。

実際にゲームを体験したことがない人でも楽しめるように配慮されているので気にせず手に取ってみて欲しい。

勝負二番目のアーチャー・インフェルノ戦で見せる武蔵と立香の連携がかっこよかった。

18. お嬢様の僕(田口ホシノ)

近衛養太郎は執事の父とメイドの母を持つ男子高校生。

両親の影響と生活環境のおかげで、家事の得意な世話好き少年に成長した。

そんな彼の通う高校にやってきた転校生は、母の務める家の娘で、本物のお嬢様。

「お嬢様の僕」(田口ホシノ)1巻より、これから私のすべてを任せる仲だ
(「お嬢様の僕」1巻より)

着替えすら一人でしたことがない彼女の専属執事に任命された養太郎の、試練の日々が始まる。 

そこにツンデレお嬢様と指導係のメイドも加わり、ラブコメ要素も絡んでくるが、粗相を許されない養太郎に未来はあるのか?

個人的にはツンデレお嬢様推し。

19. サマータイムレンダ(田中靖規)

人口数百人の島で起こる怪現象「影の病」。

姿と記憶をコピーした何者かが住人と入れ替わっていくSFサスペンス。

幼なじみの死をきっかけに帰省した慎平は、島の壊滅までの数日間を繰り返しながらその謎に迫っていく。

限りのあるループ期間の中で、大切な人々を救うことができるのか。

影としての記憶を失くした少女や、影の存在を知る渡航者の協力を得て真相を追う。

「サマータイムレンダ」(田中靖規)4巻より、ウシオ対ミオ
(「サマータイムレンダ」4巻より)

正面からまともに対峙するのは危険な存在だが、調査をしていく過程で戦いも避けられない。

ウシオとミオの姉妹(仮)対決はハラハラした。

20. アクロトリップ(佐和田米)

魔法少女ベリーブロッサムのことが大好きなオタクJCが、推しを輝かせるために悪の組織で奮闘するコメディ作品

悪の組織フォッサマグナと戦うヒロインを応援することが伊達地図子の生きがいである。

彼女の活躍はうれしいけれど、パワーバランスが偏りすぎて街が平和になるとその存在が不要になってしまう。

推しが一番輝く時、それは激闘の末に勝利をつかんだ時なのだ。

「アクロトリップ」(佐和田米)1巻より、悪の参謀に勧誘される地図子
(「アクロトリップ」1巻より)

実は悪の総帥クロマもベリーブロッサムのファン。

今日も二人は最高の推しを見るために奔走する。

21. とんがり帽子のアトリエ(白浜鴎)

村の仕立て屋の娘ココは魔法使いに憧れる女の子。

幼い頃に城下の祭りで買った絵本をきっかけに、自分も使えるようになることを夢見てきた。

ある日、街からやって来た羽馬車の修理のため、魔法を発動する瞬間を覗き見てしまう。

 

この世界の魔法の秘密は、特殊なインクを使って魔法陣を描けば誰でも使えてしまうということ。

見習いの修行は陣の構成要素の法則を学ぶ事と描線の正確さを訓練する事が中心。

そのため、魔法使いの育成は慎重に行われてきたのだが、禁止魔法を用いる集団「つばあり帽」が現れる。

幼いころのココに絵本を売った人物はこの「つばあり帽」であり、彼女も二つの勢力の対立に巻き込まれていく。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)より、魔材に感動するココ

(「とんがり帽子のアトリエ」1巻より)

知らない世界に入っていくココの反応や仕草がいちいちかわいい。

22. 赫のグリモア(A-10)

遺産として受け継いだ屋敷の隠し部屋に繋がれていた少女あかずきんと出会った若葉は、かつて曾祖母が魔女だったと聞かされる。

魔導書(グリモア)と契約し、自らの血で描いたものを具現化する能力を持つ「書の魔導士」と呼ばれる存在。

その血を引く若葉に、あかずきんは自分を自由にするよう要求するのだった。

事態をうまく飲み込めないまま、しかし確実に魔導士たちの戦いに関わることになっていく。

「赫のグリモア」(A-10)1巻より、若葉とあかずきんの追いかけっこ
(「赫のグリモア」1巻より) 

悪い顔の似合うあかずきんだが、若葉とバディになっていく様子がいい。 

23. 恋せよキモノ乙女(山崎零)

祖母から受け継いだ着物で出掛けることが野々村ももの休日の楽しみ。

暮らしている大阪を中心に京都・神戸・奈良など彼女の行動範囲は広く、なかなかにアクティブである。

それは普段とは違う自分になれる装いが、その積極性に一役買っているのかもしれない。

祖母の言葉、「特別な女の子にしてくれる、魔法のドレスみたいやろ」のように着替えの時間も大事に味わっている。

1話毎に目的地や装いを変え、実在の場所を舞台に描かれているので、参考に訪ねてみるのもいいかも。

「恋せよキモノ乙女」(山崎零)1巻より、着物で出掛ける野々村ももと見送るネロ
(「恋せよキモノ乙女」1巻より)

見送りをする猫のネロもかわいい。

24. タケヲちゃん物怪録(とよ田みのる)

世界で一番不運な女の子・稲生武夫(いのう たけを)が暮らす妖怪屋敷、百鬼荘の日々を描く。

絶えず災難が振りかかるため、人の世に馴染めなかった彼女を温かく迎えてくれたのは、皮肉にも妖怪たちだった。

彼らにとって、タケヲから放出される「陰の気」は特別美味らしい。

そしてその条件は、彼女が幸福を感じることなのである。

「タケヲちゃん物怪録」(とよ田みのる)1巻より、幸福になると驚いてしまうみたい
(「タケヲちゃん物怪録」1巻より)

あの手この手で彼女を幸福にしようと張り切る妖怪たちとのやり取りが微笑ましい。

25. ACCA13区監察課(オノ・ナツメ)

13の自治区に分かれたドーワー王国で、警察局・消防局・医療局などを傘下に持つ統一組織ACCA。

地方色豊かな各区も、100年ほど前までは別々の国家であり、今も名残をとどめている。

首都バードンにある監察課は、その業務を監視する役割を担っていた。

副課長で「もらいタバコのジーン」の異名を取るジーン・オータスは、視察に廻る中でいつの間にか重大な陰謀に巻き込まれていく。

「ACCA13区監察課」(オノ・ナツメ)1巻より、おみやげが楽しみ
(「ACCA13区監察課」1巻より)

一方で監察課の雰囲気はほんわかしている。

ここでは10時と15時のおやつは重要事項。

26. 花とアリス殺人事件(道満晴明) 

岩井俊二監督のアニメ映画をコミカライズ。1巻完結。

内容は映画版から独自の展開になっているのだが、原作の雰囲気を壊すことなく作者特有の不思議ワールドを繰り広げている。

ユダの生死を確認しに出かけるのではなく、4人の妻に会うことで事件の真相に近づいていく。

クラスを仕切っているムーこと陸奥睦美の出番が増え、アリスとの協力体制を築いているのもうれしいところ。

映画版も傑作なのでそちらもおすすめ。

作風が気に入ったら次は「ニッケルオデオン」を。 

27. あそこではたらくムスブさん(モリタイシ)

新しく営業企画室に異動になった砂上吾郎(さがみ ごろう)には、かねてよりあこがれていた女性社員がいる。

総合開発部の結(ムスブ)さん。

今度の部署では、直接関わることができる立場になった。 

「あそこではたらくムスブさん」(モリタイシ)2巻より、再びコンドームの試作品をもらう砂上くん
(「あそこではたらくムスブさん」2巻より) 

その内容は、コンドームの研究開発である。

仕事熱心な彼女の言動に翻弄される吾郎、その運命は?

相模ゴム工業株式会社の協力で、実際の開発や検査の様子も知ることのできるお仕事漫画にもなっている。

その関係で、表紙にはおなじみのサガミオリジナルが登場している。 

28. 保安官エヴァンスの嘘(栗山ミヅキ) 

強さが掟だった時代に、西の荒野でその名を轟かせた男がいた。

全ての犯罪者が最も恐れるという保安官、エルモア・エヴァンス。

幼い頃から父に手ほどきを受けた銃の腕は、彼にその地位を与えたが、本当の望みは未だ遠くにある。

「モテたい!」

エヴァンスの行動原理の全てはそのためにあった。

「保安官エヴァンスの嘘」1巻より、エヴァンスとオークリーは両想い
(「保安官エヴァンスの嘘」1巻より)

自ら作り上げたイメージと意地のせいで恋人ができたことがない彼と、彼のことが気になるツンデレ賞金稼ぎのオークリーとの日常を描くラブコメ作品。

29. モブ子の恋(田村茜)

「脇役だって、恋をする。」

20年間、世界の隅で脇役(モブ)として過ごしてきた田中信子(通称「モブ子」)に、初めての恋心が芽生える。

スーパーでアルバイトをしている大学生の信子には、気になっている相手がいる。

いつもさりげなく助けてくれる同僚の入江君。

一緒に働いて1年が経つが、思いを伝えるどころか連絡先さえ聞けないでいた。

引っ込み思案な彼女は、何をするにも考えすぎてしまうのだ。

「モブ子の恋」(田村茜)1巻より、連絡先を聞きたい信子
(「モブ子の恋」1巻より)

ある日、彼女とは正反対の新人が入ってきた。

人見知りもせず、笑顔の似合う積極的なヒロインタイプの女の子。

そんな後輩の安倍さんに影響され、信子の恋が少しずつ動き始める。

対する入江君も恋愛には疎い男の子。

別れ際に手を振るのさえ躊躇してしまう。

ぎこちなく、ゆっくり進んでいく二人の関係を見届けたい。

30. こうふく画報(長田佳奈)

大正時代のとある街を舞台に、そこで暮らす人々のささやかな日常を描いた連作短編集。

和菓子屋の栄泉堂は作中の登場人物たちもよく利用する店。

主の有平は、腕はいいが神経質な性格のため仕事の進みが遅いのが難点。

整然としていないものが気になって、菓子作りよりも優先してしまう。

商売には向かない男なのである。

「こうふく画報」(長田佳奈)より、有平とかの子
(「こうふく画報」より)

そんな彼のお守りをしつつ店を切り盛りする従業員のかの子は、しかし憎からず思っているようだ。

全くデレないし素振りも見せないのだが、そこがいい。

彼女が言葉を失うこの瞬間に想像できる未来を、もう少し見ていたかった。

31. 異世界おじさん(殆ど死んでいる)

17年振りに異世界から帰還したおじさんと、彼を引き取ることになった甥のたかふみの日常コメディ。

美男美女だらけの異世界で、オークの亜種と誤解されたおじさんは多くの苦労を重ねてきたようだ。

そのため、戦闘に関しては経験豊富なおじさんも、恋愛ごとには悲しいくらいに疎かった。 

「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)1巻より、指輪をもらったツンデレエルフ
(「異世界おじさん」1巻より)

それでも彼に好意を持ってくれた相手もいたのだが、清々しいほどに全てのフラグをへし折っていく。 

回想シーンで登場するエルフの女の子が不憫すぎて、彼女のその後が気になってしょうがない。

32. ARIA(天野こずえ) 

西暦2300年代、テラフォーミング(惑星地球化計画)が進んだ火星は水の惑星アクアと呼ばれていた。

かつて地球(マンホーム)に存在していた都市ヴェネツィアを移築した街ネオ・ヴェネツィアに、水先案内人ウンディーネ(ゴンドラ漕ぎ)になるため水無灯里(みずなし あかり)がやってくる。

所属先はARIAカンパニー。

青い目の火星猫アリア社長と、”水の三大妖精”アリシアの元で、一人前のプリマウンディーネを目指す日々を描く。

設定はSF的だが、ここには古い町並みと不便な生活に愛着を感じる人々が住んでいる。

「知らないことがたくさんあるってことは、まだまだたくさんの素敵があるってこと。」

癒やしの時間。

連載開始時のタイトルは「AQUA」。計14巻。

コミックは完全版(全7巻)も発売されているが、個人的にはこのAQUA1巻の表紙が好き。

2015年、完結後の物語を描いた劇場版「ARIA The AVVENIRE」が公開された。

2017年末、連載中の「あまんちゅ!」がついに電子書籍化。いずれ本作も?との期待が高まる。

33. 天国大魔境(石黒正数)

文明が崩壊した世界で旅を続けるマルとおねえちゃん。

二人は、「天国」と呼ばれる場所を探している。

それがどこにあるのか、どんな所なのかもよくわかっていないが、そこに行けば皆が助かるかもしれないという。

「天国大魔境」(石黒正数)1巻より、廃墟で物資を探すマルとおねえちゃん
(「天国大魔境」1巻より)

一方、壁に囲まれた楽園では子供たちが集団で暮らしている。

少数の大人たちに厳重に管理されている施設に疑問を抱かない彼らの中から、外の世界に興味を持った子たちが現れて…

二つの場所で進行する物語が交互に描かれながら世界の謎に迫っていく。

それでも町は廻っている」の作者の新作ということで期待度は高い。

34. 花と落雷(渡辺カナ)

愛崎八千代は校内でも変わり者として有名である。

生徒の悩みを解決する同好会・有言実行委員会のただ一人の会員として、率先して他人の協力を申し出る。

彼女は困っている人を放っておけないのだった。

自信がなくて行動に移せなかったり、思いを伝えられずに苦しい思いをしたり、そんな誰かの背中を押してあげたい。

それは彼女の過去の経験に理由があるのだが…

「花と落雷」(渡辺カナ)2巻より、八千代と海美帆の仲直り
(「花と落雷」2巻より)

二村海美帆も彼女に背中を押された一人で、いつしか一緒に活動するようになっていく。

積極的で自信家に見える八千代も、内面では強い人間ではない。

海美帆といることで、彼女も救われていく過程がいい。

恋愛要素もあるのだが、特にこの二人の友情が描かれている部分が好き。

全2巻。

35. 海辺のエトランゼ(紀伊カンナ)

沖縄の離島で親戚の家を手伝いながら小説を書いている橋本駿は、最近海辺のベンチで一人座っている少年の事が気になっていた。

母を亡くしたばかりの知花実央は、新しい家族に馴染めず時間を持て余していた。

そんな二人が出会い、寄り添っていく。

「海辺のエトランゼ」(紀伊カンナ)より、実央を夕飯に誘う
(「海辺のエトランゼ」より)

久々の賑やかな食卓に頬がゆるむ実央。

この家のムードメーカーである絵理と駿の掛け合いが好き。

やがて実央は本島の施設に入り…

連載間隔が長めなこともあり、読み切りタイプのつくりになっている。

続編は舞台を移し「春風のエトランゼ」として続いていく。

一応ジャンルとしてはBLだが、絵柄や作風もあってあまり気にならないと思う。

36. くくりひめ(姫野春、水木由真)

神谷神社に住み込みで働く巫女・姫野菊理(ひめの くくり)には不思議な力がある。

その血に反応する異界から現れる無数の白い手は、彼女に危害を加えようとする者を死へと誘う。

宮司の三門に保護されて以来、平穏な日々を過ごしていたが、生き別れていた双子の姉が現れた日から止まっていた時間が動き出す。

故郷に伝わる呪われた伝説と自らの持つ宿命に終止符を打つため、彼女は姫神村へと旅立つことを決意するのだった。

「くくりひめ」(姫野春、水木由真)2巻より、出しに集中する三門
(「くくりひめ」2巻より)

三門は鍋料理が得意なため作中も度々描かれるが、食事のシーンが印象的。

なんでも、湯豆腐を取り出すタイミングと結界抜けのタイミングは同じだとか。

巫女さん×ツンデレ美少女×イケメン鍋奉行による和風ファンタジー怪異譚。

全3巻。

37. 映像研には手を出すな!(大童澄瞳:おおわら すみと)

設定画を描くことが好きな浅草と、アニメーターを目指す水崎、お金儲けと面白いことが好きな金森の三人が、芝浜高校で出会った。

役者の両親を持つ水崎がアニ研への入部を反対されていることもあり、自分たちで映像研究同好会を設立することに。

廃屋のような部室の整備に始まり、動画投稿での資金確保、予算審議委員会へ向けての短編アニメ制作と、試行錯誤しながら初めてのことに挑戦する。

彼女たちの空想による世界観の共有はシームレスに描かれているのが特徴。

「私の考えた最強の世界」にいつの間にか引き込まれていく。

38. 図書館の大魔術師(泉光)

大陸中の全ての本が揃っていると言われている本の都アフツァックの中央図書館を目指し、一人の少年が旅に出た。

彼は幼い頃に司書(カフナ)と呼ばれる専門職員と出会ったことで、同じ道を志すのである。

「図書館の大魔術師」(泉光)1巻より、本が読まれたがったのかも
(「図書館の大魔術師」1巻より)

その時に彼女から預けられたのは、世界のために戦った大魔術師と図書館について書かれた本だった。

「書を護ること、それ即ち世界を護ること也 」

やがて自らが世界を護ることになるカフナの、はじまりの物語。

ちなみに本編での図書館の表記は「圕」(囗に書)である。

39. 応天の門(灰原薬)

近頃、都でおきている失踪事件。

人々の間ではもっぱら鬼の仕業との噂であった。

検非違使の長である権少将在原業平は、事件の調査の最中、大学寮の文章生菅原道真と出会う。

“門より内は地獄” 

ならばこの応天門より先は欲にまみれた者共の巣窟、鬼の本丸だ。

在原業平は百人一首の「ちはやぶる〜」の詠み人であり、伊勢物語の作者とも言われる当代きっての色男。

菅原道真は学問の神様として知られ、この時代は大学寮に通う優秀な学生であった。

平安京を舞台に、正反対の二人が魑魅魍魎の世界で謎に挑む。

40. ドリフターズ(平野耕太)

1600年の関ヶ原。

西軍の劣勢の中、退路を切り開こうとする島津勢は、島津豊久を殿軍として正面突破を図った。

作戦は成功したものの瀕死の重傷を負った豊久は、ひとり戦場をさまよう内に見知らぬ部屋へと辿り着く。

 

異なる時代や国を生きた英雄たちが、漂流者(ドリフターズ)と廃棄物(エンド)の二つの勢力に分かれて戦う歴史ファンタジー。

彼らを異世界に送り込む紫やEASYとは何者なのか、何の目的で戦うのか、謎の多いままであるが、この設定と展開には中二心をくすぐられずにはいられない。

「ドリフターズ」(平野耕太)4巻より、島津豊久と土方歳三の対決
(「ドリフターズ」4巻より)

薩摩の島津豊久と新撰組の土方歳三との時代を超えた因縁の対決は本作ならでは。

41. ソウナンですか?(岡本健太郎、さがら梨々)

修学旅行中の飛行機事故で遭難した四人の女子高生たちのサバイバル生活。

海の上で目覚めた彼女たちの命を救ったのは、メンバーの一人・鬼島ほまれの経験と知識であった。

「ソウナンですか?」(岡本健太郎、さがら梨々)1巻より、トビウオを絞って水分摂取
(「ソウナンですか?」1巻より)

無人島に流れ着いた彼女たちは、救助隊が到着するまでの日々を生き抜かなくてはならない。

遭難のプロとも言うべき鬼島と普通の女子高生とのギャップが見どころ。

生活に慣れてくるに従って、食事や住環境も快適?になっていくが、そのあたりの描写が丁寧なのもうれしい。

実践したくない豆知識もちょこちょこ出てくる。

42. 推しが武道館いってくれたら死ぬ (平尾アウリ)

伝説の古参オタ、えりぴよ。

収入は全て舞菜のために注ぎ込み、自分の着るものは高校時代のジャージを残すだけ。

彼女は「舞菜が武道館いってくれたら死んでもいい」とまで思っているのだが、舞菜からはいつも塩対応を受けている。

それでもめげずに応援し続けるえりぴよが報われる日は来るのか。

「推しが武道館いってくれたら死ぬ」(平尾アウリ)1巻より、イベントに駆けつけたえりぴよ
(「推しが武道館いってくれたら死ぬ」1巻より)

43. 味噌汁でカンパイ!(笹乃さい)

中学生の善一郎は父と二人暮らし。

生活サイクルの違いから朝はいつも一人で、手間をかける気にはなれず適当に済ませていた。

そんな彼を見かねた隣家の幼なじみの八重は、朝ご飯を作ることを決心する。

幼い頃の約束、「お母さんにだって、なってあげるよ!!」の言葉を彼女は忘れていなかった。

かと言って、料理が得意なわけではない。

はじめての日の味噌汁を失敗したことから、特に熱心に取り組むようになっていく。

「味噌汁でカンパイ!」(笹乃さい)1巻より、善一郎を起こす八重
(「味噌汁でカンパイ!」1巻より)

毎日、かわいい幼なじみが起こしに来てくれる。

恋愛面ではあまり進展はないが、母親公認であるし、幼なじみとしての気遣いの中に照れがあるくらいが微笑ましくてよいのである。

完全に自覚しちゃうのは連載が終わる頃なのかも。

44. やさしいヒカリ(中村ひなた)

友人の紹介で田舎の町にやって来た三宅の新しい仕事は郵便局長。

そこは喫茶店に併設の窓口がある小さな局だった。

下宿先の娘で配達のアルバイトをしている日和子(ひよこ)や島の人々との交流で癒やされていく日々を描いている。

一緒に暮らすことで二人の間にラブコメ展開はあるのかという点も注目だが、島外への進学や信用問題もあり遠回りにはなるだろう。

「やさしいヒカリ」(中村ひなた)1巻より、三宅の部屋に突撃する翼芽
(「やさしいヒカリ」1巻より) 

個人的なお気に入りは日和子の友人・翼芽(つばめ)。

彼女の場合は別の意味で三宅に興味津々のようだ。

ムードメーカーとして盛り上げてくれることを期待している。

45. 明日ちゃんのセーラー服(博)

母の通っていた中学に合格した明日小路(あけび こみち)は、セーラー服を着ることが夢だった。

TVのCMで見たアイドルが着ていたことで気に入り、母の昔の写真で同じものを見つけたとき、運命だと思ったという。

地元の小学校では生徒が一人の時期が長かった彼女にとって、新しい中学は楽しみでしかたがない。

「明日ちゃんのセーラー服」(博)1巻より、母にセーラー服を仕立ててもらう
(「明日ちゃんのセーラー服」1巻より)

母の仕立てた特別なセーラー服。

私立蠟梅学園に入学する彼女とクラスメイトたちの学校生活をゆったりと描いていく。

46. 僕の心のヤバイやつ(桜井のりお)

中二病をこじらせた陰キャ少年・市川京太郎と学校の人気者・山田杏奈によるラブコメディ。

彼女を殺害する妄想にふける京太郎は、「僕は頭がおかしい」が口癖?の変わった少年で、当然のように友達もなく、昼休みは図書室でひとりの時間を過ごす毎日を送っていた。

ある日、課題をするため図書室に来ていた山田に遭遇してしまったことから二人の関係が変化していく。

彼女を観察する京太郎の心の中で育っていく感情とは。

「僕の心のヤバイやつ」(桜井のりお)2巻より、市川姉弟と山田がファーストフード店で遭遇
(「僕の心のヤバイやつ」2巻より)

お姉ちゃんの登場回が好き。

ブラコン気味の姉に素直じゃない思春期な京太郎と、その様子を隣の席で気にしている山田の図である。

おそらく初めて学校以外で顔を合わせた二人。

いつもと違う雰囲気に、お互い意識してしまう所がかわいい。

47. 夜さん(佐原ミズ)

産休をとった美術教師の代わりにやってきたのは、鶴田夜(つるた いつや)、絵が下手な非常勤講師だった。

しかしその絵は不思議な力を持っていて、ほんのひととき紙の上から出てこれる。

中学3年の坂本晨(さかもと とき)は遠縁のお婆さんと暮らしていたが、お婆さんが痴呆のため施設に入ることになり、夜さんと姪の昏(こん)の住む家に下宿することになる。

「夜さん」(佐原ミズ)自転車3人乗り
(「夜さん」2巻より)

彼女たちが住処を転々としてきたのは、各地で絵を描きたいという望みの他に、もう一つ理由があった。

そして「夜さん」とは何か。 

全2巻。

48. かくしごと(久米田康治)

後藤可久士(ごとうかくし)には秘密がある。

漫画家であるという事実を娘の姫には知られたくない。

それは、描いている漫画の内容がちょっと下品であることに起因していた。

娘がいじめられたり、グレたりする原因になることを恐れていたのだが、そんな親の心配を他所に娘はすくすく育った。

単行本では、姫の成長後のエピソードがカラーで追加されていて、むしろそっちが本編より気になる内容となっている。

「かくしごと」(久米田康治)より姫ちゃん犬を飼う
(「かくしごと」より)

ほのぼの父娘。

49. やがて君になる(仲谷鳰:なかたに にお)

高校に入学したばかりの小糸侑は、まだ部活が決まらず、しばらく生徒会の手伝いをすることになった。

初めて生徒会室へ向かう途中、二年の先輩七海燈子が告白を断る場面に遭遇する。

「だって今まで好きって言われてどきどきしたことないんだもの」

この人も同じなんだと思った。

侑は中学の卒業の日に告白されたあと、まだ返事を出せないままでいた。

 

これは百合展開ということになるんだろうけど、1巻の時点ではそこまでいかないし、侑は同性を好きになるのはありえないと思っている。

誰かを特別だと思うこと、人を好きになるとはどういうことなのか。

むしろこのジャンルに興味がない人におすすめ。

セリフに頼らない描写がうまいと思った。

これが初連載らしいが期待の新人だ。

50. SHIORI EXPERIENCE(長田悠幸、町田一八)

高校で英語を教えている本田紫織は冴えない教師だった。

あだ名は「地味先」(地味な先生)、趣味は家事と節約。

それは多額の借金を作って失踪した兄のせいでもある。

そんな彼女の前に、アフロのへんなおじさんが現れた。

どうやら、彼女の知らないうちに音楽の悪魔との契約が行われていたらしい。

超絶的な音楽の技術を得る代わりに、27歳が終わるまでに伝説を作らないと命を失うというとんでもない内容である。

期日まで365日。

「SHIORI EXPERIENCE シオリエクスペリエンス」1巻より、忘れかけてた極上の体験
(「SHIORI EXPERIENCE シオリエクスペリエンス」1巻より)

残されたわずかな時間を使って、どこまでやれるのか。

彼女の挑戦が始まる。

バンドメンバーの募集に始まり、挫折を繰り返しながら地道な努力を重ねていく。

飛び道具を持ちながら、あえて自力で乗り越えていこうとする姿が意外でもあり楽しみな所でもある。

51. CLAYMORE(八木教広)

人間を捕食する妖魔と、人間が生み出した半人半妖の戦士クレイモア。

元ナンバー1の戦士、微笑のテレサの仇を討つため自ら戦士になる道を選んだクレアが宿敵プリシラとの最終決戦に挑む。

万策尽きた末の覚醒。来たよこれ。

そう、これが見たかったんだ。

限界を越えて覚醒するともう人には戻れず捕食する側に回ってしまう。

この問題を最高のシーンで解決してくれた。

全27巻完結。 

クレイモア(八木教広)クレア覚醒
(「CLAYMORE」26巻より)

覚醒するのは誰だ?

52. シリーズ小さな喫茶店(山川直人)

街の小さな喫茶店と、そこに通う人々の飾らない日々の出来事。

木版画を思わせる独特の絵柄で描かれた短編集。

大きなことは起こらない、はっきりとしたオチもないが、これからの物語を想像させる余韻がある。

日常の生活に溶け込んだコーヒーと、そこから始まる人生の1ページ。

記憶に最も結びつきやすいのは香りだといわれている。

時代を感じさせにくい絵柄と相まってどこか懐かしい気持ちになる作品だ。

53. 僕と君の大切な話(ろびこ)

クラスが違うために話しかける機会があまりなく、また恥ずかしがり屋の相沢さんがようやく勇気を持てたのは、駅のホームで電車を待つ二人の時間。

校内でも美人で有名な彼女の告白を、東くんは断ってしまう。

なぜなら彼は達成感を大事にする男だからだ。

でもそれは終わりではなく、関係のはじまり。

放課後のたわいない会話で、少しずつ二人の距離は縮まっていく。

「僕と君の大切な話」(ろびこ)1巻より、東くんと相沢さんの共感の練習
(「僕と君の大切な話」1巻より)

54. 柚子森さん(江島絵理)

柚子森さんはちょっと大人びた小学4年生の女の子。

そんな彼女に、高校生のみみかは心を奪われる。

「世界はホワイトアウトして、その女の子しか見えなくなった」

この気持はなんなのか。

幼なじみのしーちゃんはそれを恋だと言っていたけれど、相手は小学生でしかも女の子なのだ。

戸惑いつつも柚子森さんと友だちになったみみかは日々を重ねていくが…

55. あいどるスマッシュ!(TNSK)

時は世紀末、文明が衰退した世界で人々を支配していたのはアイドルであった。

彼女たちの歌の虜(ファン)になったものは、応援でその力の元となる。

アイドルたちは抗争を繰り返し、暴虐の限りを尽くしていたが、彼女たちを止めることができる存在もまたアイドルである。

山での修行を終えたばかりの新人アイドル・つくねは、そんな世界を変えたいと願い首都ゴリアテへとやってきた。

「あいどるスマッシュ!」(TNSK)1巻より、つくねの必殺技クレッセントムーン
(「あいどるスマッシュ!」1巻より)

拳(マイク)一つで夢を追い、目指すは武道館、そして伝説のアイドルの遺産を手に入れること。

つくねと、志を同じくするアイドルたちの戦いの日々。

56. 小さいノゾミと大きなユメ(浜弓場双)

山中でなぜか小さい体になっていた女子高生のノゾミは、猫に追いかけられた末に引きこもりニートの汚部屋に辿り着くのだが…

相手が酔っ払いでちょっとアホだったため妄想の姿という設定で共同生活をすることに。 

「小さいノゾミと大きなユメ」(浜弓場双)1巻より、妄想の存在ということに
(「小さいノゾミと大きなユメ」1巻より)

うまく協力させて元の姿に戻りたいところだけど、誰かが本来のノゾミの姿で生活しているかもしれない疑惑も出てくるのである。

小さな体で危険な冒険をするのと、ユメのニート生活を更生させるのと、どちらが早道なのか。 

57. 将来的に死んでくれ(長門知大)

高校入学の日、菱川俊は同級生の刑部小槙に一目惚れをした。

友人や彼氏を作って楽しい学校生活を送ることを夢見ていた彼女であったが、クラスメイトの前で勢い余って告白をしてしまうのだった。

その相手はクールな女の子。

彼女のことを振り向かせたい菱川は、気持ちが先走りすぎていつも暴走気味だが、小槙の対応のおかげでバランスは取れているのである。

「将来的に死んでくれ」(長門知大)1巻より、箱根行く?
(「将来的に死んでくれ」1巻より)

迷走する菱川がアホかわいい。

58. メイドインアビス(つくしあきひと)

1900年前、南海の孤島に直径1000メートルほどの縦穴が発見された。

以来、穴の周囲には拠点都市ができ、探窟家と呼ばれる人々によって調査が行われてきた。

どれほどの深さがあるのか、底には何があるのか、未だそれを知るものはいない。

 

探窟家見習いのリコは、未知の世界の冒険に憧れる一人だ。

最深部への到達が許される最上級ランクの白笛であった母のようになるのが夢。

担当区域の探索中、魔物と遭遇したリコは何者かに助けられるが、その相手は見たことのないロボットの少年であった。 

59. 波よ聞いてくれ(沙村広明)

北海道札幌、鼓田ミナレは恋人と別れたばかりのカレー屋店員25歳。

飲み屋で酔っ払ってからんだ相手はラジオのディレクター。

後日、その時の失恋話を番組で流され、激昂したミナレは仕事中にラジオ局に突撃する。

これこそが罠だった。

「止めるからにゃ、アンタが間を持たせるんだぜ?」

 マイクの前に座らされ喋りきった1分間の放送は反響を呼び、彼女はラジオの世界に入っていく。

 

これは1巻の表紙見た時の印象は演歌ものかと思ったんだけど、電波のほうだった。

貯金も仕事もなくした残念女子ミナレが崖っぷちから這い上がる(多分)。

そして南波ちゃんがかわいい。

60. メタモルフォーゼの縁側(鶴谷香央理)

BL漫画との出会いをきっかけに始まった、75歳と17歳の二人の交流を描いている。

書道教室をしながら暮らしている市野井雪は、久し振りに訪れた本屋で並んでいた本に目が止まる。

ジャンルへの知識のないまま買い求めたものの、続きが気になり通うようになった彼女を案内してくれるのが書店員の佐山うららであった。

「メタモルフォーゼの縁側」(鶴谷香央理)2巻より、はじめての同人誌ゲット
(「メタモルフォーゼの縁側」2巻より)

残された時間を考えて積極的に摂取しようとする雪と、これまで趣味の友人がいなかったうららが、漫画談義からイベントへの参加と未知の世界に挑戦していく。

61. 夏目友人帳(緑川ゆき)

小さい頃から妖怪を見ることができた少年・夏目貴志。祖母レイコの遺品「友人帳」に書かれた妖怪達の名前を返す日々を送る中で、さまざまな妖や人と繋がり、絆を深めていく。

遠縁の藤原夫妻に引き取られたことで落ち着ける場所を手に入れた夏目は、用心棒のニャンコ先生と共に妖たちに名を返す日々を送ることになる。

そこはかつて若い頃の祖母が住んでいた土地で、妖たちの話す彼女の姿はそれまでの印象とは違っていた。

夏目は、祖母のことをもっと知りたいと願うのだったが。

登場機会は少ないが、夏目の同級生の多軌のキャラが好き。

ニャンコ先生との絡みはほっこりする。

Kindle版2巻で止まってるのはどういうことなの

4年振りのアニメ5期開始に伴い、一気に配信開始。

62. 桜の花の紅茶王子(山田南平)

満月の夜、白磁のカップに銀の匙、紅茶に映った月の影をそっと崩してひとくち飲めば。

おまじないで現れる紅茶の妖精は3つの願い事を叶えてくれる。

紅茶王子の新シリーズ。前作の10数年後を舞台に紅茶王子サクラとジョルジが登場。

呼び出した朝桐吉乃を見たサクラは、かつての主人と生き写しの姿に驚くのだが…

「桜の花の紅茶王子」(山田南平)1巻より、咲かない桜の木を見上げる吉乃たち
(「桜の花の紅茶王子」1巻より) 

前作のキャラも登場するので、続編としての楽しみもある。

63. 三ツ星カラーズ(カツヲ)

上野公園内にある秘密のアジトを拠点に結成された、小学生3人組による正義の組織「カラーズ」。

彼女たちの使命は、上野の街を守ること。

結衣・さっちゃん・琴葉の3人は、事件を探して日々街を駆け抜ける。

動物園や博物館や公園に活気のある商店街と、子供の好奇心を掻き立てる環境が揃っていて、周囲の大人も彼女たちを見守り、時に全力で遊んでくれる。

「三ツ星カラーズ」(カツヲ)2巻より、コンディショングリーン
(「三ツ星カラーズ」2巻より)

こんな子供時代を過ごしたら一生忘れないだろうね。

64. ルミナス=ブルー(岩見樹代子)

県立青島高校に転校してきた垂水光(たるみず こう)は、写真が大好きな女の子。

廃部になっていた写真部を復活させるため、元部長の葉山うちほと一緒にコンテストでの受賞を目指すことに。

クラスメイト秋本雨音(あきもと あまね)と青野寧々(あおの ねね)をモデルに会心の笑顔の一枚を撮るものの、二人は実は元恋人同士だと知るのである。

四人の女の子たちの友情と恋を描いていくが、個人的に気になっているのは雨音×うちほ。

「ルミナス=ブルー」(岩見樹代子)1巻より、破れた写真と葉山先輩
(「ルミナス=ブルー」1巻より)

幼なじみでそれぞれ片思い中の二人が惹かれ合っていくところを見たい。

いやむしろ片思いのままでも…

作者は太もも好きとのことで、それを裏付ける描写も多い。

眼福です。

65. イジらないで、長瀞さん(ナナシ)

美術部に所属する気弱な男子高校生のセンパイと、彼をイジるのが好きな女の子・長瀞さんによるからかい系ラブコメディ。

図書館での出会いから何かと絡んでくる彼女に困惑しつつも、一緒にいることは嫌ではない。

それは、どこまでなら大丈夫か見極めながらイジってくることによる。

何より、懐いてくる後輩がかわいくないはずはない。

多少なまいきなところはあってもね。

「イジらないで、長瀞さん」(ナナシ)2巻より、ポケットの中のスマホ
(「イジらないで、長瀞さん」2巻より)

時にはやりすぎてしまうこともあるがそれもご愛嬌。

66. 空電ノイズの姫君(冬目景)

ギター少女の保坂磨音(ほさか まお)とミステリアスな転校生・支倉夜祈子(はせくら よきこ)の交流を描く青春ストーリー。

早めに登校した日の教室で顔を合わせた二人は、古いロックが好きという共通点もあり意気投合する。

それは、同年代の友達を作れなかった彼女たちにとって、貴重な出会いとなるのだった。

「空電ノイズの姫君」(冬目景)3巻より、保坂磨音と支倉夜祈子
(「空電ノイズの姫君」3巻より)

いつか一緒に組んで活動するようになるのかどうかも見所なのだが、そのためには夜祈子の抱えるトラウマを解決する必要がありそうで…

2019年1月、イブニングに移籍し「空電の姫君」のタイトルで連載再開。

67. さよならフットボール(新川直司)

中学の男子サッカー部に所属する14歳の女の子、恩田希。

テクニックでは他のチームメイトにも負けないものを持っているが、女子だからという理由で試合には出してもらえない。

練習と試合は違う、成長期の身体で男子に混ざって怪我でもしたら、と監督は心配する。

それでも次の新人戦にだけは出たいと願う希は、出場の方法を模索するのだったが。

 

女子である希が男子に劣るフィジカル、その壁に自分の持っている力でどこまで通用するのか。

「違う、そうじゃない。私が証明するんだ。」

「さよならフットボール」(新川直司)2巻より、試合に出られる喜び
(「さよならフットボール」2巻より)

人気作になった「四月は君の嘘」の後は、再びサッカーを題材に連載することが決定した。

その名も「さよなら私のクラマー」。

高校生になった恩田希が女子サッカーの舞台に立つ。

68. 明るい記憶喪失(奥たまむし)

目覚めると病院のベッドの上で、過去数年分の記憶がなくなっていた。

付き添っていた恋人のことも覚えていない。

アリサとマリは同性のカップルであり、この日からまた新しい関係を築いていかなければならないのであるが、再び元のように戻れるのか。

といった心配を余所に、アリサは二度目の新生活に興奮しきりなのであった。

「明るい記憶喪失」(奥たまむし)1巻より、会ったその日にかあー
(「明るい記憶喪失」1巻より)

もともと彼女の一目惚れから始まった経緯があるので、好みの女性がすでに恋人で自分のことをいつも気遣ってくれることにうれしくてしかたがないようだ。

タイトルの通り、彼女がポジティブすぎてひたすら明るい記憶喪失の日々を描いている。

69. チェンソーマン(藤本タツキ)

半人半魔の少年が、かつて世界を震撼させた「銃の悪魔」との戦いに身を投じていくアクションファンタジー。

対魔特異4課をまとめる女性・マキマに見出されたデンジは、公安のデビルハンターとして悪魔退治の仕事に就いた。

立派な志があるわけではなく人間らしい生活ができれば満足だった彼も、相棒の魔神・パワーや部隊の先輩たちと一緒に戦う中で対悪魔の切り札として成長していく。

「チェンソーマン」(藤本タツキ)1巻より、この生活を続ける為だったら死んでもいいぜ
(「チェンソーマン」1巻より)

彼の強さの元は誰にも負けないハングリーさ。

ジャム付きのパンを食べる事や胸を揉むために命を懸けることができる情熱は危なっかしくも逞しい。

追いかけるものは成長とともに変わっていくだろうが、その規格外な存在は目が離せない。

70. 熱帯魚は雪に焦がれる(萩埜まこと)

父の海外赴任の都合で田舎の親戚の家に引っ越してきた天野小夏。

海沿いの町で、転校先の学校には水族館部があった。

月に一度の一般公開の日に出会った部長の帆波小雪とのぎこちなくも微笑ましい日々を描いている。

先輩は学校でも人気者なのだが高嶺の花扱いで一人ぼっちでいることが多く、小夏は待望の新入部員なのだった。

「熱帯魚は雪に焦がれる」(萩埜まこと)2巻より、連絡先を聞けて満足の帆波先輩
(「熱帯魚は雪に焦がれる」2巻より)

待望の後輩との日々が嬉しくてしかたがない先輩と、先輩の力になりたくて頑張る後輩の姿が尊い。

71. ポチごっこ。(アッチあい)

人生に疲れた社畜サラリーマンが美少女に拾われて犬として飼われることになるラブコメディ。

飛び降り自殺を図った青年が目覚めると、見知らぬ部屋に見知らぬ少女の姿があった。

「ポチごっこ。」(アッチあい)上巻より、名前はポチね
(「ポチごっこ。」上巻より)

その女の子は、人としての生活を捨てた彼にポチとして飼われることを要求するのである。

帯の言葉は「社畜か犬か、どっちがいい!?」

彼にとってどちらが幸せなのか、究極の選択となるだろう。 

部屋の主・朝日花のぶっ飛んだ発言の裏には何があるのか。

実際にはこれをラブコメと言っていいのかどうか分からないが、彼女の成長を見守りたい作品だった。

上下巻同時発売。

72. 幼女戦記(カルロ・ゼン、東條チカ)

統一歴1920年代、帝国と周辺諸国の戦争において、幼少ながら「ラインの悪魔」として恐れられた将校がいた。

ターニャ・デグレチャフ、彼女は航空魔導士として類まれなる才能を持ち、徹底した合理主義のもと軍での地位を確立していく。

信仰心のない日本のサラリーマンが、現状から逆転した姿で試練を与えられるという異世界転生もの。

漫画版は主人公が子供であるという部分をコメディ要素としてうまく生かしている印象。

堅苦しくなりがちな戦記物語を読みやすくしている。

ターニャの顔芸とレルゲン中佐とのすれ違いコントも見所。

漫画版「幼女戦記」(東條チカ)5巻より、レルゲン中佐とのすれちがい
(「幼女戦記」5巻より)

73. 夜森の国のソラニ(はりかも)

夜森、そこは目覚めたくない人間が訪れる夜の国。

記憶をなくした少女が迷い込み、新しい住人として暮らしていく。

彼女は、管理人の夜森や住人たちの知り合いとよく似ていたことで、ソラニと名付けられた。

料理が好きだが、「毒殺系」「無差別テロ」「危険物」と評価はイマイチだ。

 

それぞれの事情で暮らす住人の闇に、夜森のランプが明かりを灯す。

日常系の四コマで、小物類の造形も凝っている。

特にカラー部分の色使いが好き。

全3巻。

うらら迷路帖のほうが先にアニメ化決定。

74. 舞妓さんちのまかないさん(小山愛子)

青森から舞妓に憧れて修行にやってきた少女キヨ。

けれど彼女には向いていなかったらしく、おとめ(稽古の中断)を言い渡されてしまう。

そんなキヨにも得意なことがあって、今では大所帯の台所を取り仕切るまかないさんである。

稽古中でも周囲に見惚れることの多かった彼女には、夢破れたというよりはむしろ好きな世界に関われる天職であるのかもしれない。

一緒に出てきた幼なじみのすーちゃんの成長を見守りながら花街の日常を紡いでいく。

のんびりした性格も、みんなをホッとさせてくれることだろう。

「舞妓さんちのまかないさん」(小山愛子)1巻より、キヨさんと舞妓さん
(「舞妓さんちのまかないさん」1巻より)

75. ゆるさば。(関口太郎)

ある日突然、自分たち家族以外の人類がいなくなったら…

裕木家の四人が、廃墟となった東京でサバイバル生活を繰り広げる。

時間の経過の不思議やライフラインの謎など不明な点も多いが、元研究者の父を始めとしてこの世界を満喫しているようだ。

生活のために、元の世界ではやらなかったはずの事にも積極的に挑戦していく様子がいきいきと描かれている。

「ゆるさば。」(関口太郎)2巻より、モモの初めての獲物
(「ゆるさば。」2巻より) 

長女のツムギは狩猟担当、次女のモモは釣り担当、三女のリンは搾乳が役割。

サバイバルになれるに連れ、行動範囲も広がっていく。

76. ギャルごはん(太陽まりい)

学校一のギャルと噂の岡崎みくは、料理研究部員。

彼女は顧問の矢部先生に恋をしている。

きっかけは、お菓子作りを手伝ってもらった時、彼女ができるようになるまで付き合ってくれたこと。

頑張りたい気持ちを大事にしてくれたのがうれしかったのだった。

「ギャルごはん」(太陽まりい)1巻より、頑張ってよかったなあ
(「ギャルごはん」1巻より)

問題は当の矢部先生がそっち方面には疎いこと。

生徒会の藤原小春や教師の白濱渚などライバルも登場するが、彼女たちの思いは届くのか。

77. いそあそび(佐藤宏海)

コンビニもゲーセンもファミレスもない田舎で一人暮らしをすることになった元社長令嬢村上セトと、浜辺で倒れていた彼女を助けた浦島六郎のサバイバル生活。

一方的に借りをつくるのが嫌いな彼女のために、友達として一緒に海産物を採って食べることに。

「いそあそび」(佐藤宏海)2巻より、波をかぶっても大丈夫
(「いそあそび」2巻より) 

世間知らずではあるものの、予想外にワイルドで気さくな性格で周囲の人たちも惹きつけていく。

特にその笑顔は極上である。

六郎の幼馴染の珠子と恋のライバルになるのかどうかも見どころ。

78. 不滅のあなたへ(大今良時)

何者かによって地上に放り投げられた “球” であったそれは、ありとあらゆるものの姿を写しとり変化することができる。

はじめは石に、そしてコケやオオカミを経て人になった。

やがて外界との接触で、意識を獲得し言葉を覚え成長していく。

これは彼と、関わるものたちとの交流を描く物語。

次第に彼を作り出したものの存在も明らかになっていく。

「不滅のあなたへ」3巻より、グーグー編の団欒シーン
(「不滅のあなたへ」(大今良時)3巻より)

はじめての家族と呼べる人たちと過ごすグーグー編がよかった。

この時間が続けばいいのにと思える関係だったが、これからも繰り返す思い出のひとつとなるだろう。

この先、彼に待ち受ける運命とは何か。

79. MAO(高橋留美子)

幼い頃に事故で両親を亡くした黄葉菜花(きば なのか)は中学3年生の女の子。

お手伝いの魚住さんが毎朝作ってくれる地獄の泥沼みたいな味のスムージーのおかげか、人より運動が苦手なくらいで何事もなく暮していた。

今では近道として利用している事故現場の商店街で、他の人には聞こえない音を聞いてしまった日から、彼女の身に不思議なことが起こり始め…

「MAO」(高橋留美子)1巻より、菜花は妖?
(「MAO」1巻より) 

高橋留美子の最新作は、陰陽師の少年と妖の力を宿した少女の怪奇物語。

およそ100年ほど前の時代にタイムスリップした菜花が、同じ妖に因縁を持つ陰陽師の摩緒とともに戦いを挑んでいく。

80. この世界の片隅に(こうの史代)

昭和19年(1944)、18歳になったすずに、突如縁談の話が持ち上がる。相手は江波から20キロ離れた軍港の街、呉に住む海軍勤務の文官・北條周作。すずは周囲に言われるがまま祝言をあげ、北條家に嫁いでいく。

幼い頃から絵を描くことが好きだった少女すず。

戦争へ向かう時代の空気の中で、周囲をほんわかと明るくさせる力を持っていて、それは嫁入りするまで変わらない。

そんな彼女が、見知らぬ土地へ嫁に行き、戦時下の日々を生き抜いていく。

呉の空襲、広島の原爆と最も過酷な時期を中心に描いているのだが、読後感がいい。

「この世界の片隅に」(こうの史代)より、この世界の片隅に、うちを見つけてくれて
(「この世界の片隅に」より)

現在、アニメ映画版が先行配信中。

81. SPY×FAMILY(遠藤達哉)

東西の平和を脅かす危険人物の動向を探るため、名門イーデン校の懇親会へ潜入を命じられた凄腕のスパイ、コードネーム「黄昏」。

おそらくは長期間の任務となるため、保護者として参加することが好ましい。

そのために必要なのは家族である。

厳しい入学試験を突破できる子供と、名門に相応しい気品を持つ妻。

準備のための猶予は一週間。

そして実際に集まったのは、孤児の境遇を抜け出したい好奇心旺盛なエスパー少女と偽装のための恋人役が欲しい天然な殺し屋だった。

「SPY×FAMILY」(遠藤達哉)1巻より、三人それぞれの思惑
(「SPY×FAMILY」1巻より)

それぞれの思惑と秘密を抱えた擬似家族が、受験を通して本当の家族になっていく。

もう任務が終わってもずっと一緒に幸せに暮らせばいいよ。

連載が開始するなり注目を集め、直後に始まった次にくるマンガ大賞では早くもノミネート作品に残るなど期待の大きい作品である。

(その後、Webマンガ部門において圧倒的な票差で1位を獲得した。)

82. きみが死ぬまで恋をしたい(あおのなち)

魔法が身近にある世界で、身寄りのない子供たちを引き取って育てている施設がある。

年齢別のクラスに分けられ、魔法で戦う術を教えられ、いつかは戦争に行くことを義務付けられている。

トツキ・シーナはそこで、“ミミ”と呼ばれる不思議な少女と出会った。

「きみが死ぬまで恋をしたい」(あおのなち)1巻より、ミミの髪を梳かすシーナ
(「きみが死ぬまで恋をしたい」1巻より)

最強との噂のある彼女は、何故かシーナに懐き、まるで親のように慕ってくるのだが、そのことをきっかけに二人の日常が変わっていく。

不穏な空気の漂う中で際立つミミの天真爛漫さがほっこりさせてくれる。

百合的ポイントは回復魔法の扱いにあると思う。天才かな?

83. その着せ替え人形は恋をする(福田晋一)

雛人形の頭師を目指す少年とクラスのギャルが一緒にコスプレ活動をすることになるラブコメディ。

祖父と二人暮らしの高校生・五条新菜(ごじょう わかな)は家業を継ぐための修業の日々を送っていた。

子供の頃のトラウマで周囲には話せないでいた彼も、クラスメイトの喜多川海夢(きたがわ まりん)の趣味を知り彼女に協力することになっていく。

それは、アニメやゲームのキャラのコスプレだった。

「その着せ替え人形は恋をする」(福田晋一)1巻より、コスプレ衣装を依頼する海夢
(「その着せ替え人形ビスク・ドールは恋をする」1巻より) 

彼女の衣装を作ってイベントに参加することで、好きな事を追い求める楽しさを知っていくのである。

二人とも未経験の所から試行錯誤していく初々しさや、フレンドリーすぎる彼女に困惑しつつもその直向きさに感化されていく様が青春を感じさせて微笑ましい。

84. くノ一ツバキの胸の内(山本崇一朗)

忍の里の学園に通うくノ一たちの日常を描くコメディ作品。

女子クラスあかね組のツバキは学園で最も優秀な生徒。

彼女には、誰にも言えない秘密がある。

話に聞く男という生き物を見てみたいということ。

先生や他の生徒によると、野蛮で危険な存在であるらしいのだが…

「くノ一ツバキの胸の内」(山本崇一朗)1巻より、ツバキは男を見てみたい
(「くノ一ツバキの胸の内」1巻より)

やんちゃなサザンカやアサガオのよき先輩であり、模範的な生徒であろうとすることと自らの好奇心とに揺れる姿がかわいい。

85. ふらいんぐうぃっち(石塚千尋)

親戚のいる青森に引っ越してきた新米魔女の修行の日々。

15歳になった木幡真琴は、しきたりのため高校からは実家を出て魔女の多く住むという東北地方で暮らすことになった。

方向音痴で天然な性格と、ゆったりした土地の人々との相乗効果でゆるい日常となっている。

最初は箒で飛ぶくらいのところから、やがて仕事の依頼を受けられるようになり世界が広がっていく。

「ふらいんぐうぃっち」(石塚千尋)6巻より、千夏の初魔法のお祝い
(「ふらいんぐうぃっち」6巻より)

魔女が受け入れられている環境とささやかな魔法がほのぼのしていていい。

その家系に生まれていない千夏の修行の過程も楽しみ。

86. ハルロック(西餅)

向坂晴(さきさか はる)は幼いころ、ドライバー少女として界隈を賑わせた分解魔だった。

両親の苦労もあってか、成長とともにそんな過去は忘れていたのだが、高校の部活の顧問の影響で電子工作の世界に入り込む。

身近な問題をもとに発案した実用的なものからSNSと連動させたおもしろアイテムまで、なかなか本格的なものを手がけている。

秋葉原のパーツ屋で小学生うに先輩と出会うことでさらに発展していくのだが。

「ハルロック」(西餅)1巻より、ゴキブリ発見装置を作成
(「ハルロック」1巻より)

ハルの空気を読まない言動と周囲の反応が楽しい。

87. ゆるキャン△(あfろ)

オフシーズンに一人でキャンプをすることが好きな女の子・志摩リンと、富士山を見るためにキャンプ場にやってきた各務原なでしこ。

二人の出会いからゆるく始まるまったりキャンプ生活の輪。

なでしこは転校してきた学校で野外活動サークル(野クル)に入部し、アウトドアの魅力にはまっていく。

彼女たちの通う本栖高校のある山梨県を中心に、富士山周辺や少し遠出する距離のキャンプ場を舞台に時にソロで、時にみんなでキャンプを楽しむ姿を描く。

初心者を含む高校生たちの活動なので、予算のないところから少しずつ知識や道具も充実していく様子は身近に感じられて良い。

「ゆるキャン△」(あfろ)1巻より、キャンプっぽいごはんだよ
(「ゆるキャン△」1巻より)

88. たいようのいえ(タアモ)

父親の再婚で居場所の無くなったと感じている高校生の真魚(まお)。

なつかしく思うのは幼いころ通った向かいのあたたかい家族の姿。

今ではプログラマーとして働き始めた長男の基(ひろ)が一人で住んでいた。

基は両親の死後、再び兄弟で一緒に暮らせるようにこの家を守ってきた。 

行き場を失った真魚を妹の部屋に住まわせることになるが。

全13巻。

真魚のツンデレっぷりがすごくツボ。

新連載はネガティブ過ぎるヒロインの「地球のおわりは恋のはじまり」。

89. ふしぎの国の有栖川さん(オザキアキラ)

過保護な祖父に育てられ、友人たちにも「プライベートの過ごし方が晩年」と言われる女の子、有栖川鈴。

趣味は将棋や落語で、同級生たちとはちょっとずれているところがある。

そんな彼女が、ある日運命の出会いをするのだった。

門限に遅れそうになった電車で助けてくれた野宮宗介と知り合いになり、次第に距離を縮めていく。

「ふしぎの国の有栖川さん」(オザキアキラ)1巻より、未来につなげよう?
(「ふしぎの国の有栖川さん」より)

彼もまた恋愛には無頓着で、世間知らずの有栖川さんとはいいコンビだ。

友人たちをハラハラさせながらゆっくりゆっくり進む恋の行方を見守りたい。

90. 恨み来、恋、恨み恋。(秋タカ)

土地神に力を貸し与えられた一族の住む町がある。

子国家を筆頭とする十二支に纏わる家によって守られている十二町。

この地に恨み猫と呼ばれる妖怪が迷い込んだことから、町の平和が脅かされていく。

結界の綻び、鬼の活性化など内通者の影がちらつく事件の謎を追うのは、家に代々伝わる能力を継ぎ損なった子国の当主だった。

「恨み来、恋、恨み恋。」(秋タカ)1巻より、ほれてる男を守んのは当然でしょうが
(「恨み来、恋、恨み恋。」1巻より) 

また彼をめぐってのラブコメ展開も見どころ。

護衛役を務める幼馴染みの丑蔵朱華と、居候・猫ヶ崎夏歩との対決はどちらに軍配が上がるのか。

個人的には朱華を推したいところだが。

91. 猫のお寺の知恩さん(オジロマコト)

田舎の高校に進学することになった少年が、下宿することになった家は、遠い親戚の古いお寺。

中学を卒業した春休み、須田源はこの町にやってきた。

幼い頃に預けられたことのある懐かしい土地。

よく遊んでもらったいたずら好きの女の子は、相変わらずいたずら好きの、魅力的な女性になっていた。

これから彼女、知恩さんとひとつ屋根の下の生活が始まる。

とはいえ、意識しているのは源の方だけであり、彼女からすればまだまだ子供なのである。

年上の女性を振り向かせるような男になれるか。

一緒に暮らしている犬のテンちゃんや猫たちの表情がイキイキしているのもいい。

92. おやすみシェヘラザード(篠房六郎)

二都麻鳥(にと あさと)の住む女子寮には、決して近付いてはならないと言われる場所がある。

夜中に通りがかろうものなら、13番目の魔女に絡め取られるという。

とある熱帯夜に冷房を求め避難を試みた彼女が、思い掛けずその部屋へ迷い込んでしまったことから、奇妙な関係が始まっていく。

「おやすみシェヘラザード」(篠房六郎)1巻より、セクシー美女と映画談義
(「おやすみシェヘラザード」1巻より) 

魔女の名は箆里詩慧(へらざと しえ)、一学年上の妖艶な美女。

それからというもの、夜な夜な映画の話を聞かされることとなるが、最後まで聞くことができたなら秘密のごほうびが約束されている。

ただし、先輩は壊滅的に話が下手で眠気を誘うのである。

大人の階段を登ってみたいと思いつつも、麻鳥は今日も快適な眠りにつくのであった。

93. 空挺ドラゴンズ(桑原太矩)

空を泳ぐ巨大生物、龍(おろち)を人々が目指してから半世紀。

莫大な費用と危険が伴う龍捕りに、次第に船の数も少なくなった。

そんな中で現役を続ける小型の捕龍船クィン・ザザ号の乗組員たちの物語。

1巻の表紙はミカ。

普段は寡黙だが龍と食べ物のことになると饒舌になる。

彼と新米乗組員のタキタを中心に、龍を使った料理漫画的な部分もある。

「捕って解体して食う、それが龍捕りだ」

一匹捕れば七市潤うと言われるほど貴重な存在で、どの部位も無駄にしない解体の様子、買い付けで賑わう人々の姿も描かれている。

「空挺ドラゴンズ」(桑原太矩)1巻より、タキタの小型龍捕獲作戦
(「空挺ドラゴンズ」1巻より)

小型龍捕獲作戦と、ジローの恋のエピソードが好き。

94. はじめてのひと(谷川史子)

それぞれの「はじめて」を描くオムニバス。

博物館で働く田中久緒と、その周囲の人々に順にスポットを当てていく。

中でも、彼女の後輩の橘与(たちばな くみ)には大きくページが割かれている。

誘われて行ったライブハウスで、年上のチェロ奏者・諏訪内と出会った与。

彼のライブに通ううちに、心惹かれていくようになるのだが。

「はじめてのひと」(谷川史子)1巻より、諏訪内に惹かれていく橘与

(「はじめてのひと」1巻より)

年の離れた相手の時々見せる表情に、ある疑問が湧いてくる。

彼女の恋をしていく様子がとてもかわいくて、応援したい気持ちはやまやまなのだが…

95. 娘の家出(志村貴子)

母の再婚が決まり、高校生のまゆこは父の家に泊まりに来た。

父は年の離れた若い恋人と住んでいる、料理上手で、涙もろくて、同性愛者。

離婚の原因でもある。

だがそこは、まゆこにとって居心地のいい場所であった。

 

読み切り、短期連載を経て本格連載になった作品で、この1巻は連作短編のような作り。

現在と過去を交え、周囲の人々の悩みや人生の歩みが描かれる。

広義の家出は新しい生活の模索。

家族っていいな。 

96. 空気人形と妹(たみふる)

15歳の高校生、東あさみの部屋に住みついたダッチワイフは、彼女の兄に恋をしたらしい。

半年前買われてからずっと押し入れの中で放置されてきたのだが、恋を成就させる為に妹に協力を求めてきたのだった。

最初は乗り気じゃなかったあさみもダッチワイフのいる日常に馴染んできて、今では本当の姉妹のように見えなくもないかも知れない。

ピュアすぎる妹を前にダッチワイフもギリギリ健全なレベルを保っている。

「空気人形と妹」(たみふる)より、あさみとダッチワイフのシミュレーション
(「空気人形と妹」より)

この二人を見ていられるなら兄とかもうどうでもいいな。

97. 映画大好きポンポさん(杉谷庄吾【人間プラモ】)

ニャリウッドにある映画会社でプロデューサーを務めるポンポさん。

彼女の手にかかれば、どんなくだらない内容のものでも面白い作品に仕上がってくる。

「映画大好きポンポさん」(杉谷庄吾【人間プラモ】より、ポンポさんはB級映画好き
(「映画大好きポンポさん」より)

若くして人脈も才能も実績も持ち合わせている彼女と、彼女に見出された新人監督ジーンや新人女優ナタリーの成長の物語である。

が、一番好きなシーンは常連のコルベット監督や人気女優ミスティアと次回作についての話で熱中している場面。

またくだらなくて面白い作品が生まれそうだ。

ミスティアの仕事の選ばなさもすごいし、何だかんだ楽しそう。

ポンポさんへの信頼があっての事だけど。

98. それはただの先輩のチンコ(阿部洋一)

タイトルのインパクトが強すぎる。

連載開始のニュースを見た瞬間に、これは読まなきゃと思った(使命感)。

主人公の女の子たちが気になる相手のチンコを手に入れて愛でる様はシュールであるが、本当にほしいのはただのチンコではなく好きな人自身なのだと気付いてしまうちょっといい話に収束していくし、最後のモノローグは詩的ですらある。 

「それはただの先輩のチンコ」(阿部洋一)より、チンコが股間にくっついてしまった女の子
(「それはただの先輩のチンコ」より)

チンコは帰巣本能を持っているが、ときには間違ってくっついてしまうこともあるらしい。

書店で注文しづらい人のために「声に出さなくても注文できる申込書」がOhta Web Comicで配布されており、また表紙もチンコの文字が微妙に見えにくいように配慮されている。

ちなみに公式の略称は「それチン」である。

99. 愚かな天使は悪魔と踊る(アズマサワヨシ)

天界に押され気味の悪魔たちの士気を上げるため、特命を帯びて人間界にやって来た阿久津は、とある高校に潜り込む。

彼の目的は、魔界のアイドルとなる人材を見つけ出しスカウトすること。

幸運にも、隣の席の女の子・天音リリーは適役であるかと思われたのだが、実は彼女はこの町で悪魔狩りをしている天使であった。

かくして、力のある悪魔を使役したい天音と彼女を連れ帰りたい阿久津との堕としあいバトルが幕を開ける。

「愚かな天使は悪魔と踊る」(アズマサワヨシ)1巻より、天音と阿久津の初対決
(「愚かな天使は悪魔と踊る」1巻より)

100. 終電ちゃん(藤本正二)

全国の各路線の終電の擬人化である終電ちゃん。

彼女たちは、乗客が乗り遅れないよう、無事に帰宅できるように気を配ってくれる。

ツンデレ姉御肌の中央線の終電ちゃん、お嬢様気質の山手線の終電ちゃん、ノリはいいが泣き虫な大阪環状線の終電ちゃんなど、個性あふれる終電ちゃんと駅に通う人々との心温まる交流の日々を描いている。

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