百合短編集エクレアシリーズに第4弾が登場した。
略称は「エクレア赤」である。
多くの百合ファンに愛され続ける百合アンソロジー「エクレア」に待望の新作が登場。女性が女性に抱く感情は、時に静かに、特に激しく熱く揺らめく。それはまるで炎のように──。
【イラスト】
結川カズノ(表紙) /フライ / 柊ゆたか / U35
【漫画】
結川カズノ 『名もなき花へ』 / むっしゅ 『sub rosa 』 / 缶乃 『無職とJK』/ カボちゃ 『はじめまして、久しぶり』 / 仲谷鳰 『わたしカスタムメイド』 / 古鉢るか 『百の出会いより。』 / 伊藤ハチ 『乙女の囀りと目覚め』 / 桐山はるか 『塵も積もれば愛となる』 / 唯野影吉 『あわせたら最後』 / ヒロイチ 『どん底の恋わずらい』 / 北尾タキ 『レジェンドと新人と私』 / 文尾文 『好きの先にある』 / 天野しゅにんた 『あたし、かのじょ、ともだち』 / 森島明子 『彼女のボタンをはずすとき』 / 平尾アウリ『VTuberになろう!』
前回はこちら。
結川カズノ 『名もなき花へ』
気まずくなったまま卒業式を迎えた、ひなことあざみ。
特別だった関係を心ない一言で失ってしまったひなこが、もう元には戻れないことを悟る。
ここからラストに繋がる「忘れた」のやり取りがいい。
エクレアシリーズの中では異例の連作短編として掲載されているので、単品だとわかりにくい点はあると思う。
その分、続きが読みたいという購読の重要な要素を一手に引き受けているとも言える。
「雑草譚」「つつじ辻」「藪の城」そして「名もなき花へ」。
各話ごとに置いてけぼりにされないよう配慮はされているが、やはりまとめて読みたいところ。
単行本として出るのを期待したい。
【お仕事】9/27発売の電撃大王刊百合アンソロジー「エクレア rouge 」にて、今回は表紙と名も無き花へというお話を28P描かせて頂いております。創刊号からなんとなくふんわり続けさせて貰えてありがたさの極みなのですが、連作最終話っぽくなっております。どうぞよろしくお願いします>RT
— 結川カズノ (@kazuno_y) 2018年9月16日
この微妙な言い回し。
今回で一区切りということだが、次回はどんなものを見せてくれるのか。
切ない終わりもいいけど、後日譚があってもいいよね。
カボちゃ 『はじめまして、久しぶり』
かつての親友と、久し振りに会った。
彼女は別々の学校へ進み、疎遠になっていた相手。
以前のような接し方はできないものの、昔の自分のことをよく知っていて、近すぎず遠すぎずの特別な距離感を得た。
それは、将来に悩んでいる彩芽にとって大切なものになっていく。
成長と共に増えていくタイプの友人だが、彼女にとってはじめてのことのようだ。
離れていた分、趣味や交友関係の違う夏野は心強い理解者となっていくだろう。
言葉少なに、それでいてきっちり射抜いてくる姿がいい。
伊藤ハチ 『乙女の囀りと目覚め』
隣りに住む陸は、おとめが小さい頃から面倒を見てきた。
その成長していく姿を見逃さないように、共に過ごす時間を大事にしている。
以前おとめから告白したことがあるが、その時に未来の恋人の約束を取り交わした。
18歳になって、その時にまだ好きだったら正式に付き合おうというもの。
それまでは恋人らしいことはおあずけなのである。
大切な相手だから、二人の間で決めたこと。
本シリーズのおねロリ枠代表・伊藤ハチは今回もすごい。
普段の連載がほんわかしている分、全開ではじけてくるんだけど、そこがこのシリーズの魅力となっている。
陸も一見、常識人のように思えなくもないが、そこは安定の変態ぶり。
終わってみれば、おしっこの話しかしていないことに気付くだろう。
やがて願いが叶って久し振りに聞けることになるのだが…
いい笑顔しやがる。
平尾アウリ『VTuberになろう!』
恋人のるんちゃんが最近夢中になっているのは、VTuberの猫桜輝海。
浮気でないことに安心しながらも、自分以外の相手に関心が行っていることは面白くない。
これは、なるしか…ないな?
平尾アウリでVTuberネタなんて、面白くないはずがない。
知識も設備もない、ただやる気だけはある彼女が思いついた方法とは?
そして謎のシャンシャン推し。