午前3時の太陽

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「バス走る。」(佐原ミズ)バス停が舞台の短編集

佐原ミズ短編集「バス走る。」

「バス走る。」は佐原ミズによる漫画作品。

バスの停留所を舞台とする『バス走る。』5編と、思春期の心の揺れを描く『ナナイロセカイ』2編からなる短編集。

2007年初版、2017年に電子書籍限定で復活した。 

 

もどかしくて、たどたどしくて、切なくて…でも、あたたかい。繰返す毎日の中をバスは走る。乗せたヒトの数だけ「想い」や「願い」を運び、始まりを届ける――…。
願いを叶える飛行機のおまじない。桜の季節に交わした約束。伝えられなかったひと言…。いくつもの心が行き交うバスの停留所から彩られた淡く透明なオムニバス。

 

収録タイトルは『空曲がり停留所』『さくら町停留所』『忘れ名ヶ岡停留所』『天気読み』『ダドレアの路』『めがね泥棒』『オトナの制服』 の7話。

おすすめは『めがね泥棒』かな。

空曲がり停留所 

佐原ミズ短編集「バス走る。」より、飛行機10機目
(『空曲がり停留所』より) 

一日に飛行機を10回見つけることができたら願い事が一つ叶うという。

マンションの営業の青年と、同じバスに乗る少女の出会い。

大人になったら何でも楽に出来るわけでもない、学生の頃のほうが何でも出来そうだけどそうでもない。

窮屈な日々の生活の中で彼らは空を見上げ何を願うか。

でも空の下も案外悪くないかもしれない。

こんな瞬間を味わえるのならね。

さくら町停留所 

佐原ミズ短編集「バス走る。」より、迎えに来るから嫁になって
(『さくら町停留所』より) 

高校の卒業式を翌日に控えた春の日、さえない生物教師に一人の少女が告白する。

大学を卒業したら迎えに来るから嫁になって。

彼女は3年間、その教師のことが好きだったという。

約束とも言えない約束。

この年代にとって会えない数年間はあまりに長い。

4年後の春、彼女は現れなかった。

そしてまた季節は巡り…

もうすぐ、春が来る。

めがね泥棒 

佐原ミズ短編集「バス走る。」より、放課後のノートが日課
(『めがね泥棒』より) 

窓際の一番後ろの席に座る加納は目が悪いらしい。

隣の秋乃は放課後にノートを写させる毎日。

彼女は加納のことが好きだ。

勉強が得意ではない彼女が頑張ってノートをとっているのは、一緒にいられる時間が欲しいため。

でもいざ二人になるとうまく話せない。

ほんとはもっといろんな話がしたいのに。

席替えになったりしたら、加納が眼鏡を買い替えたりしたら、この関係は終わってしまうのか。

佐原ミズ短編集「バス走る。」より、黒板に書いたスキ
(『めがね泥棒』より) 

 

放課後、帰宅部でもない加納が毎日ノートを借りているのはなぜなのか。

彼は秋乃のことが好きだ。

写している間は一緒に過ごすことのできる貴重な時間。

不器用な彼は、そんなやり方で話しかけるのが精一杯なのだ。

ほんとはもっと話がしたいのに。

 

そんな二人の、それぞれの視点から描かれるエピソード。

この微妙な関係を保っているのは眼鏡のおかげ。

ある日、それに頼れない時がやってきたら。 

佐原ミズ短編集「バス走る。」より、手をつなぎたい
(『めがね泥棒』より) 

ここの手をつなぎたい気持ちが伝わってくるところがいい。 

あとがき

今年に入って立て続けに電子書籍化されたうちの一冊。

絶版により古本で探すしかなくなっていたのでありがたい。

10年前の作品とは思えないほど絵柄が安定してるんだけど、この頃の絵の方が好きかも。 

 

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