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「百年のワルキューレ」1巻(三月薫)百年に一度の恋が世界を狂わせる

「百年のワルキューレ」(三月薫)1巻 (少年マガジンエッジコミックス)

「百年のワルキューレ」は三月薫(さんがつ かおる)による漫画作品。

少年マガジンエッジで2017年より連載を開始した。

百年に一度選ばれるという、絶大な力を持つ剣の乙女をめぐる物語。

帯の言葉は「この世界は一人の女に狂っている」。

かつての革命で全てを失ったローレシアの皇子・ニコライ(クラウス)は、数奇な運命の巡り合わせで、新たな「剣乙女」と出会う。

百年に一度の運命の恋が、世界に戦乱を呼ぶ――。

(「百年のワルキューレ(1) (マガジンエッジKC)」より)

革命と剣の乙女

「百年のワルキューレ」(三月薫)1巻より、ワルキューレの誕生
(「百年のワルキューレ」1巻より)

この世界では、百年に一度の「ギフト」と呼ばれる光とともに、剣の乙女ワルキューレが選ばれる。

絶大な力を与えてくれる女がいる

「天に見初められ 閃光の祝福を受けた 百年に一度の女は 人の理を外れ 神鉄の剣を抱く」 

伝承がそう謳う女は、その日から不変の姿で生き、生涯で一人の男に剣を授ける

最北の国ローレシアで起こった革命により、人々はワルキューレの神剣の力を目の当たりにした。

難攻不落と云われた要塞も一晩で陥落し、皇帝の一族は処刑される。

第一皇子のニコライと弟のアレクセイも、その日命を失うはずであったが、リーダーの男の気まぐれで生き延びた。

絶望でも希望でもないその眼が映す未来を見てみたいという理由。 

あえて禍根を残す決断は、男が神剣保持者として絶対的な力を有しているからでもあった。

神剣イリヤを持つ新たな王ヴィクトルと皇子ニコライによる対立は、この後の世界に何をもたらすのか。

雪山の出会い

7年後、隣国ハイデルブルグから越境した軍人の中に、ニコライの姿があった。

今ではクラウス・フィンブルと名乗っている。 

百年に一度のギフトの光が再びローレシアに落ち、その調査のための潜入である。

季節は冬、寒さの厳しい雪国の山中で、彼らは何者かに追われる裸の少女と遭遇する。

「百年のワルキューレ」(三月薫)1巻より、アーシャとの出会い
(「百年のワルキューレ」1巻より)

見つかるわけにはいかない任務ではあったが、目の前で助けを求める相手を放って置けるはずもなかった。

そして、彼女こそがギフトに選ばれた五人目の剣乙女(ワルキューレ)であった。

これによって両国は彼女を手に入れるために動き出すことになる。

神剣をめぐって

潜入調査に参加したクラウスたちは、そのまま彼女の護衛の任に着く。

「百年のワルキューレ」(三月薫)1巻より、クラウスと仲間たち
(「百年のワルキューレ」1巻より)

このコマが彼らのキャラがよく表れていると思う。

アリューゼ・ランツェとユリア・ナイト、そして奴隷だった少女アーシャ。

 

前回の神剣誕生からわずか7年、おそらくこれまでで最も間隔の短いものとなるだろう。

伝承によると、力を授けられるのは剣乙女が選んだ一人だけであり、その後は持ち主と運命をともにする。

神剣誕生の条件や方法は明言されていないので憶測ではあるが、「百年に一度の運命の恋」が持ち主を選ぶことと同義であると思う。

そして、神剣は乙女が一度だけ姿を変えたものであるかもしれない。

悲恋と取るのか成就と取るのかは難しいところだが。

4人目のイリヤが長い間持ち主を選ばなかったのは、人の姿で見届けたかったのかもね。

そうだとすれば酷な運命である。

「百年のワルキューレ」(三月薫)1巻より、激昂するクラウス
(「百年のワルキューレ」1巻より)

いつかクラウスが神剣を手にすることになるのだろうか。

彼は祖国でのことを忘れたことはない。

仇の一人・イヴァンを見つけて感情的になる場面も見られる。

ただ、ヴィクトル王とその仲間たちへの復讐が祖国の為になるかというとそれは違うかもしれない。

なぜ革命は起こったのか。

「百年のワルキューレ」(三月薫)1巻より、クラウスとヴィクトルの再会
(「百年のワルキューレ」1巻より)

ヴィクトル王がその気になれば、力尽くで剣乙女を奪うことは容易だろう。 

だが現時点では彼は悪役キャラには見えないのだ。

彼が王位に就いてからローレシアの国民の暮らしはよくなったと思われる節もある。

 

2巻ではクラウスの7年間が描かれるだろうか。

帝国滅亡後に弟アレクセイと二人、縁戚だった隣国に保護されたが、その扱いには差がある。

戦う力を付けるのは彼の希望でもあるかもしれないが、身分も名前も隠しているのはなぜなのか。

あとがき

本作が好きな人は同誌の「流星傘下」も気に入るのではないかと思ったが、そちらは来月の3巻が最終巻になるとのこと。

掲載誌の注目度が低いのもあるんだろうけど、無事に続いて欲しいと思う。

 

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