はじめに
6月にブログを開設して3ヶ月経ちました。
もともとは去年の末頃にFilmarksを始めて、少しずつ感想を書いていたんですが、動画を紹介したかったりとか、長めの文を書いてみたかったりという思いがあってはてなブログにやってきました。
雑記ブログになってはいますが、映画ネタを中心に書いていこうと思っています。
よろしくお願いします。
ということで、今年前半、開設前に観たものを50本選んでみました。
番号はランキングではなく目安、公開年は製作国のものです。
1. PERFECT BLUE パーフェクト ブルー (1998)
「あなた…誰なの?」
今敏監督の映画デビュー作。
怖い。夢と現実と虚構と妄想の区別がつかなくなっていく。
歌手志望で現在は売れないアイドルの未麻。事務所の意向で女優への転身を受け入れるが…
新人女優として不本意な仕事をこなす中、エスカレートしていくストーカー被害、現れるもう一人の自分、狙われる関係者、犯人は誰だ?
エネルギーが必要な作品です。元気な時に観ましょう。
監督:今敏
出演:松本梨香 / 岩男潤子 / 江原正士
2. 死刑台のエレベーター (1957)
「臆病なのね」「愛は臆病さ」「馬鹿ね」
-それは 完全犯罪のはずだった-
二人の計画はうまくいったかに思われたが、手違いで男はエレベーターに閉じ込められてしまう。
約束の場所に現れない男を探して夜の街を彷徨う女(ジャンヌ・モロー)。マイルス・デイビスの音楽が映える。
このシーンが見れただけでも満足だったけれども、ただのオシャレ映画ではなかった。
後半きっちり纏めてきた所はさすが。
監督: ルイ・マル
出演:モーリス・ロネ / ジャンヌ・モロー
3. 第十七捕虜収容所 (1953)
第二次世界大戦末期のドイツ。アメリカ兵の捕虜達の収容所生活と脱走劇。
タイトルとジャケットから重苦しい内容を想像するかもしれないが、そこはワイルダー監督、軽快なタッチで描いている。
むしろ、前半のコメディ色の強さに驚いた。
物語は密告者の存在を疑い出した頃から次第にスリリングな展開へ進んでいく。
こういう古い名作を手軽に観れるようになるといいと思う。なかなかレンタルされてなくて探すのに苦労した。
監督:ビリー・ワイルダー
出演:ウィリアム・ホールデン / ドン・テイラー
4. 秀子の車掌さん (1941)
新興の開発バスにおされお客も疎らな中、観光案内の新サービスを始める事を思いつく。
成瀬監督と高峰秀子のコンビ第一作。
印象的なのは開戦の年に作られたとは思えない長閑さ。
乗客の逃げ出した鶏を追いかけたり、途中で実家に寄って履物を換えたり。
のんびりした時代でもあったことを感じさせる。
だがこの作品はハーピーエンドでは終わらない。
ラストに何も知らされないまま、働きがいを見出したおこまさんの笑顔が心に残る。
監督:成瀬巳喜男
原作:井伏鱒二「おこまさん」
出演:高峰秀子 / 藤原鶏太
5. ローマ法王の休日 (2011)
ローマ法王が亡くなり、バチカンで新法王を決めるコンクラーヴェが行われた。
周囲の予想を覆して選ばれたメルヴィルは戸惑い、重責に耐えかねてローマの街へ紛れ込む。
この題材で映画化できたのはすごいと思う。
通常では見ることの出来ないコンクラーヴェの様子、「私を選ばないで」と祈る枢機卿たち。
一人の人間として人生に悩む新法王。
観光を楽しみにしている者がいたり、宗教問題を離れた時間が一番活き活きしていたりする。
「私は役者。」
監督: ナンニ・モレッティ
出演:ミシェル・ピコリ
6. ダイヤルMを廻せ! (1954)
元テニスプレーヤーの夫トニーは、資産家の妻マーゴと推理作家のマークの不倫に気づいてから一年かけて練った計画を実行に移そうとしていた。
「現実は小説のようにうまく運ばない」との言葉が象徴するように、つまらないミスで事態は予定外の方向へ進んでいく。
元々は舞台劇ということもあって、ほとんどがアパートの中での出来事だが、脚本がよく練られていてトニーとマークのやりとりに終始ニヤニヤしっぱなしだった。
オープニングのショットも絵になる。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:レイ・ミランド / グレース・ケリー / ロバート・カミングス
7. モンテーニュ通りのカフェ (2006)
「恐れずに前に一歩踏み出すことが大切よ。それで私の人生は輝いたの。」
パリのシャンゼリゼ劇場の向かいにあるカフェで働くジェシカとそこに集まる人々の群像劇。
人の数だけドラマがある。
夢を追っている人、叶わなかった人、見つからない人。
老若男女、有名無名に関わらずそれぞれ悩みや問題を抱えていて、大事なのはそこから一歩踏み出す勇気なのだとちょっとだけ背中を押してくれる。
地味な作品だけど、映像のセンスがいい。
ジェシカの祖母役はフランスの大女優で公開前に亡くなったらしい。
前掲の言葉はこの作品のテーマであり、また彼女自身の言葉なのかもしれない。
監督:ダニエル・トンプソン
出演:セシル・ドゥ・フランス
8. 名犬ラッシー/家路 (1943)
アニメの名作劇場で知ってる人も多いかな。
生活に困ったため売られていったラッシーが家族の所に帰ろうと数百マイルの距離を旅する話。
最初の映画化で原作に忠実な一本。
オープニングで犬を連れているのが、見覚えあるなと思ったら「わが谷は緑なりき」のお父さん。
飼い主の少年に同じく末っ子ヒュー。
お母さんは「情婦」の看護婦役だしヒロインにエリザベス・テイラーと結構豪華なキャスト。
そしてなによりラッシー*1の演技がすばらしい。
中盤の旅は割と淡白だけどこの時代はこれでいい。
むしろこの年にこの平和な作品は貴重だったのかも。
監督:フレッド・M・ウェルコックス
出演:ロディ・マクドウォール / エリザベス・テイラー / ドナルド・クリスプ
9. 西部開拓史 (1962)
「私の両親は必死で土地を求めて命を落としたのよ。
私にもブレスコットの血が流れているわ。」
とある家族を軸に西部開拓時代の半世紀を描く大河ドラマ。
シネラマ方式*2という特殊な撮影法と豪華キャストが売り。
専用の曲面スクリーンを使用することでパノラマ映像を楽しめたらしい。
オープニングの音楽からかっこよくて、期待が高まる。
小気味のいい会話で始まるけど実際の道中は命懸け。
川下りや盗賊との対決、南北戦争からネイティブアメリカンとの戦い、保安官とならず者の対立と、この時代の要素がすべて詰め込まれた贅沢な作品。
いいことばかりは続かないけれど、その度に苦難を乗り越えて新天地へ向かう姿は希望に満ちている。
個人的にはセルマ・リッターがツボだった。
いい味だすよねこの人は。
監督:ヘンリー・ハサウェイ、ジョン・フォード他
出演:ジェームズ・スチュワート / グレゴリーペック / ジョン・ウェイン
10. ダウン・バイ・ロー (1986)
ジム・ジャームッシュの脱獄物。
とは言っても脱獄の過程を楽しむ話ではない。
ここまであっさり脱獄できちゃう作品も珍しいのではないか。
無実の罪で投獄された男たち。個人的にはジョン・ルーリーが苦手なんだけど、今作ではトム・ウェイツとロベルト・ベニーニでうまく中和されていて観やすい。
特にベニーニの存在感がすごかった。殺伐とした空気が一気に楽しげな雰囲気に
他の二人との温度差がたまらない。
タイトルはスラングで「親しい兄弟のような間柄」という意味らしい。
けんかばっかりで素直じゃないけれど、お互いを認め合ったんだなと思える描写が微笑ましい。
ラストの別れ方も好き。
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:ジョン・ルーリー / トム・ウェイツ / ロベルト・ベニーニ
11. 疑惑の影 (1942)
ある日、母の末の弟であるチャールズが久し振りに訪ねてくる。
母や、同じ名前を持つ長女のチャーリーは大喜びするが。
チャールズを追ってきた男達に、彼が殺人事件の犯人だと告げられたチャーリーは叔父を疑い始める。
一度もってしまった疑惑はなかなか消えない。
だれを信じればいいのか。
見えない恐怖や不安を描いたヒッチコックの隠れ名作。
大好きだった叔父が疑いのせいで恐怖の対象となっていく描写にどきどきする。
本当に疑わしい相手は叔父なのか、それとも…
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:テレサ・ライト / ジョゼフ・コットン
12. キッチン・ストーリー (2003)
スウェーデンの調理器具メーカーの調査団がノルウェーの田舎町にやってきた。
独身男性のキッチンでの行動パターンを調べて商品開発に反映するとのことだったが。
偏屈者のイザックは対象者に申し込んだ事を後悔しており、非協力的。
調査の難航に担当者フォルケは困惑する。
人付き合いの嫌いなイザックと調査対象との交流を禁止されているフォルケの無言のやりとりがシュール。
そんなに嫌ならなぜ申し込んだのか。進まぬ調査、使われないキッチン。
このまま失敗に終わるかと思われた頃、一杯のコーヒーがフォルケに出される。
地味で静かな映画なんだけど、じわじわくる。
頑なな二人が次第に心を開いていく様子を丁寧に描いていて、最後には温かな気持ちにさせられる。
ノルウェーとスウェーデンの歴史もこの二人の感情に反映されているようで、現地の人たちにはまた違った意味を持つのかもしれない。
監督:ベント・ハーメル
出演:ヨアキム・カルメイヤー / トマス・ノールシュトローム
13. リトル・フォレスト 夏・秋 (2014)
「言葉はあてにならないけど、私のからだが感じたことは信じられる。」
橋本愛をみてみたくて。
田舎生活紹介ドキュメンタリー風。
収穫した材料で料理をして食べる中にちょっとしたエピソードを挟んでいるくらいで大きな動きはないがそこがかえってよかった。
余計な演出はいらない。
この監督は画面分割させるのが好きなのか、多用しているのがくどく感じるのと、後輩の印象的的なセリフ、あの年代に言わせると陳腐に感じるけど引っ張りすぎかなというのが気になった。
全体的には好感触。次も期待したい。
監督:森淳一
出演:橋本愛 / 三浦貴大 / 松岡茉優
14. 魔女の宅急便 (2014)
評価の低さにこわいもの見たさで鑑賞。
なんで今さらの映画化かというと、最終巻の刊行が2009年、その後ハリウッドが映画化権を持っていたため、その期間が過ぎて実現したそう。
結果は予告編の印象よりずっとよかった。
キキ役の小芝風花は頑張ってたし好演と言えると思う。
ストーリーはオリジナル要素で進むジブリ版と違って原作に沿った内容。
原作者自身がナレーションを担当、一瞬だけ出演しているのも気になるところ。
パン屋のフクオさんはちょっと気持ち悪い役になってるけど、この辺が呪怨のパロディなのかな?
問題は主要キャラ以外の演技のひどさ。エキストラは仕方がないとしても、名前が載るクラスの役はきちんと演技が出来る役者を揃えて欲しかった。
高評価はできないけど楽しめたし、もし続編があるなら観てみたい。
監督:清水崇
出演:小芝風花 / 尾野真千子 / 宮沢りえ
15. 楽園追放 - Expelled from Paradise - (2014)
「それが私の存在証明です」
西暦2400年、人類の98%はデジタルデータ化され、地球外の電脳世界ディーヴァで暮らしていた。実績などにより個人に割り当てられたメモリの容量が豊かさを表す。
平和に暮らしていたかに見えたが、外の世界のフロンティアセッターを名乗る者からハッキングを繰り返されていた。
「人類の新たな可能性を探るため、外宇宙探索へ参加しませんか」
エリート捜査官アンジェラはその正体を突き止めるため地球へ向かう。
これは映画館で観ればよかった。
フルCGによるロボットアクション。前半は居場所を隠すためにオフラインにしての自らの足を使っての捜索が続くが、終盤の戦闘シーンの迫力は興奮した。
この脚本家は鬱展開が得意らしいけど今作は爽快感のあるラスト。
肉体の枷とそれに伴う苦悩から開放された自由と、危険や死と隣り合わせでも好きなように生きる自由とどちらが幸せだろうか。
監督:水島精二
出演:釘宮理恵 / 三木眞一郎 / 神谷浩史
16. めぐり逢い (1957)
レオ・マッケリー監督による邂逅(めぐりあい)のセルフリメイク。
この監督の作品は「我が道を往く」が好きなのだが、他の作品はノーマークだった。
今回は大人のラブロマンス。
プレイボーイのニッキーがニューヨーク行きの船に乗り合わせた女性と恋に落ち、再会を約束する。
この主人公のニッキーというのが、婚約したことが各国でニュースになるほどの有名人。「男性のみなさんには朗報です」とまで言われる始末。
何者だよニッキー。
そしてそのニッキーをあしらえる美女テリー。
ストーリーはシンプルながら、会話の応酬が楽しい。
設定年齢は実際よりもっと若いはずだけれども、この会話を自然にこなすためにベテラン俳優を使ってるのかも。
単に監督の好みかも知れないが。
しばらくこの監督作品を観てみたい。
監督:レオ・マッケリー
出演:ケーリー・グラント / デボラ・カー
17. 我輩はカモである (1933)
サイレントからの移行期にはミュージカルなど舞台劇の手法を取り入れる試みが多く見られたが、そんな中の一つ。
マルクス兄弟主演のナンセンスコメディ。
ツッコミ不要の怒涛のマシンガントークでギャグをねじこんでくるグルーチョや逆に全く話さずに何でもかんでもハサミで切りまくるハーポ、その通訳をすると思いきや意味不明なチコなど、カオスな状態で押しまくる。
指導者を間違えると大変なことになるという、政治や戦争の風刺と見られる要素もあるが、もはやそんなことすらどうでもいいことなのかもしれない。
マッケリー監督にもこんな時代があったのねと思える意欲作。
カルト的な人気もわからなくはないが困惑の方が強かった。
監督:レオ・マッケリー
出演:マルクス兄弟他
18. 少年と自転車 (2011)
養護施設に預けられた少年シリルは約束の1ヶ月が経っても父親が迎えに来ない事に不安を覚える。
施設を抜け出して父親を尋ねるがすでにもぬけの殻で転居先も不明。
父親捜しの為、偶然出会った親切な女性サマンサに週末だけ里親になってもらえるように頼み込む。
シリル役の子がうまかった。
父親に捨てられた事を信じられない、愛に飢えた少年を自然に演じていて、サマンサの愛情に触れて落ち着いていく様子が感じられた。
いろいろと説明不足だし面白くはないしシリルにはいらいらさせられっぱなしなんだけど、目が離せない。
がんばれ少年。
監督:ダルデンヌ兄弟
出演:セシル・ドゥ・フランス / トマ・ドレ
19. オール・イズ・ロスト (2013)
ヨットの中で眠っていた男は衝撃音で目を覚ます。
漂流中のコンテナにぶつかったらしく船室の壁に穴が空いてしまい床は浸水していた。
それでも男の長い経験の中では致命的ではなかったはずだった。
自然の猛威の中で次々に手段を奪われ、全てを無くした男は何を思うのか。
余計な説明も台詞も演出も廃し唯一の出演者ロバート・レッドフォードの演技に託される。
僕にはど真ん中の作品だった。
こんなに集中して観たのは久し振り。
レッドフォードの一挙手一投足に目が離せない。
何が起きても冷静に状況を判断し対処ができる男も、事態が好転せずに追い込まれていく中で、絶望を感じる瞬間がやってくる。
台詞を徹底的に省いたことでより迫ってくる。
ヨットを失い、ゴムボートでの漂流を余儀なくされた後に、嵐の前兆を見つめる後ろ姿にグッときた。
生きるための執念というより、そこに迷いはない。
スパイ・ゲームの、会話の妙で相手を出し抜くレッドフォードに惚れたけど、この話さないレッドフォードもいいね。
監督:J・C・チャンダー
出演:ロバート・レッドフォード
20. バッファロー’66 (1998)
5年振りに出所した男は、両親にその事を言い出せず、政府の仕事でそれなりに成功し結婚もしていると嘘を重ねる。
後に引けなくなった男は立ち寄ったダンス教室で女を誘拐し、妻のふりをするように強要する。
風変わりな純愛ストーリー。
愛を知らずに大人になったビリーは虚勢を張り、強がることでしか自分を保てない。
最後のつもりで会いに行った両親の家も安らげる場所ではなく、ビリーの寂しさを確認させることになる。
この映画はクリースティーナ・リッチの存在で救われる。
誘拐されたあと、逃げ出すチャンスは何度もあったはずなのにビリーのそばを離れようとしない。
生い立ちに理由があったにせよ、ビリーの傍若無人な態度をひたすら見せつけられるのだが、この作品が人気のある理由は最後の展開だろうか。
ラストで全て持っていく。
それまでの印象を覆して、いい映画だなと思えた。
監督:ヴィンセント・ギャロ
出演:クリスティーナ・リッチ / ヴィンセント・ギャロ / ミッキー・ローク
21. Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち (2011)
ドイツのダンサーで振付師ピナ・バウシュについてのドキュメンタリー。
撮影中に彼女が亡くなったために、彼女の作品の断片と劇団員のインタビューという形で完成された。
「言葉では表現できないものを 言葉を使わず何かを感じ取ってもらう それがダンスの出発点」
ただただ圧倒された。美しい。生々しいエネルギーが伝わってくる。
インタビューという形をとっても、ダンサーたちの話す場面は見られない。
あくまで彼らは肉体言語としてのダンスで表現する。
ヴィム・ヴェンダース監督によって纏められたドキュメンタリーは映像作品としてもすばらしいものになった。
「踊りなさい 自らを失わないように」
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ピナ・バウシュ
22. 龍の忍者 (1982)
80年代香港のゆるゆるアクション映画に真田広之登場。
抜け忍で父の敵である男を追って中国に渡った玄武と、男に武術を教わったジン。
必然的に二人は戦うことに。
意外とストーリーはしっかりしてた。
戦い自体はつっこみどころ満載だけど。
「これが忍術だ。」でも真田広之のアクションを堪能するにはいい映画なんじゃないかと。オチも最高。
監督:コリー・ユン
出演:真田広之 / コナン・リー
23. 小野寺の弟・小野寺の姉 (2014)
両親を早くに亡くし、助け合って生きてきた二人の姉弟の物語。
明るく面倒見はいいが劣等感を抱えている姉、幼い頃に怪我をさせてしまった罪の意識を持ちつつ母親代わりだった姉には先に幸せになってもらいたい引っ込み思案の弟。
斬新な組み合わせだと思ってたこの二人、息のあった演技で違和感を感じさせなかった。舞台版での共演を経てからの映画化らしい。
相手を思いやるばかりに、時には裏目にでてしまったりするのが切ない。現代版青い鳥。
片桐はいりの存在感はすごいね。
監督:西田征史
出演:片桐はいり / 向井理 / 山本美月
24. キャデラックレコード 〜音楽でアメリカを変えた人々の物語〜 (2008)
アメリカのブルースレーベル、チェス・レコードの設立と成功の道のりを描く。
ポーランド出身のレナード・チェスが小さなクラブから始めてレコーディングスタジオを手に入れ、見出したミュージシャンを売り込んでいく。
実話を元にしているので、ブルースの流行からロックの誕生までの大まかな流れを知るのにいいかも。
音楽も魅力的で、サクサク進んで楽しめた。
監督:ダーネル・マーティン
出演:エイドリアン・ブロディ / ジェフリー・ライト / ビヨンセ
25. メトロポリス (1926)
「SF映画の原点にして頂点」といわれるフリッツ・ラングの傑作。
未来都市メトロポリスでは、地上に住む富裕層と地下に住む労働階級の二極化が進んでいた。
ある日、子供たちを連れて地上に見学に来ていたマリアに一目惚れした権力者の息子フレーダーは、地下の様子に興味を持ち始める。
この時代に、しかもサイレントでこれだけの迫力ある映像を撮れたことに驚く。そのために制作会社が倒産するほどの予算をかけたというのも納得。
ヒロインのブリギッテ・ヘルムはこれが初出演とは思えない熱演だった。
黒マリアの声の聞こえてきそうな感情あふれる表情はキッドにおける元祖天才子役ジャッキー・クーガンのよう。
そして淀川長治氏絶賛のアンドロイドは美しかった。
フィルムは欠損部分が多く、今でも復元作業が続いている。
なるべく最新の版で観るのがおすすめ。
監督:フリッツ・ラング
出演:ブリギッテ・ヘルム
26. ノスタルジア (1983)
「詩の翻訳など不可能だ。
芸術は何でもそうだ。…そう僕らは哀れにも分かり合えない。
分かり合うには?
「境界を壊すことだ。」
詩人のアンドレイは取材のため通訳の女性とともに、ロシアから亡命しながら帰国後自殺をした音楽家の足跡を辿ってイタリアの小さな村へ訪れる。
冒頭の霧の中を歩く3人の女性と小さな男の子、犬のシーンが美しい。
父親らしき人物は不在。
これはアンドレイの子供時代だろうか。
そしてタルコフスキー監督の中の懐かしい故郷の姿か。
この作品は分かりやすさやドラマチックな展開を求める人にはおすすめできないが、その映像美と詩の切れ端を味わいながらまどろみかけつつ観るのもいい。
退屈に感じて眠ってしまってもかまわない。
監督は意図的にそう作っている節がある。
そしてまた一周。
制作年や監督の生い立ちを考えるとメッセージ性の強さも持ち合わせているが、ただそれだけでお腹を壊さないような親切な作りと言えなくもないのではないだろうか。
監督:アンドレイ・タルコフスキー
出演:オレーグ・ヤンコフスキー
27. 明日に向って撃て! (1969)
ロバート・レッドフォードとポール・ニューマンのコンビによる西部劇。
西部開拓時代に名を馳せた強盗団のメンバー、サンダンス・キッドとブッチ・キャシディ。列車強盗や銀行強盗をを繰り返し、刺客や警官隊に狙われることに。
しばらく振りに故郷に帰ったのも束の間、逃亡生活が始まる。西部劇らしい勧善懲悪やかっこいい決闘ではなく、犯罪者として追われ続けるアンチヒーローを描いているが、この二人のやりとりは憎めない。
人生の峠を越えてしまっている二人の泥臭さ、未来の馬としての自転車の登場、ピンカートンによる組織の登場、ひとつの時代の終焉が迫るも希望を失わない二人に爽快感を抱く。
自転車のシーンが好き。
「俺の自転車に乗ったら結婚したも同然さ」
今作はロバート・レッドフォードの出世作として知られているが、卒業への出演を断ってこちらを選んで正解だった。童貞役が似合うとはとても思えない。
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
出演:ポール・ニューマン / ロバート・レッドフォード / キャサリン・ロス
28. 舞妓はレディ (2014)
マイ・フェア・レディのパロディ。
現代の京都の花街下八軒を舞台に、鹿児島弁と津軽弁の訛りの強い少女が舞妓になるため言語学者の協力の元、修行に励む。
やや強引ながら、うまく設定したもんだなと。
芋っぽいヒロインが可愛らしい舞妓としてデビューするまでをほんわかと描いている。
そしてミュージカル調という斬新さ。
舞妓はレディのメロディが頭に残る。
ただ、言葉の問題を扱うならもうちょっとこだわって欲しかった。
ヒロインは実際に鹿児島出身だけど、使ったこともないような言葉で戸惑ったんじゃないかな。
言語学者も、ひとの事よりまず自分が直せというレベルなのが気になってしまう。
監督:周防正行
出演:上白石萌音 / 長谷川博己 / 田畑智子
29. 自由を我等に (1931)
ルネ・クレール監督のトーキー第二作。
ルイとエミールは刑務所からの脱走を図るが見つかりそうになり、ルイだけ先に逃がす。
やがて出所したエミールは蓄音機会社の社長として成功しているルイと再会する。
「機械社会の中で個人が人間性を見いだし幸福を求める物語」
刑務所の中で、自由を我等にと歌っていた二人、いざ外の世界に出てみると、ルイはスケジュールに追われ、エミールはベルトコンベアでの作業に追われ、やはり窮屈そうだ。むしろ刑務所の方がましか?
自由とはいったいなんだったのか。
明確には答えが出ないが束の間の自由を手に入れた人々の歌う、キスからはじめようの言葉にフランスらしさを感じる。
監督:ルネ・クレール
出演:レイモンド・コルディ / アンリ・マルシャン
30. ディナーラッシュ (2001)
ニューヨークの人気レストラン、ジジーノでの一夜の群像劇。
予約三ヶ月待ちの店内は今日も超満員。
厨房のめまぐるしい忙しさとは対照的に店内は飽くまで優雅に、それぞれの思惑が絡んで複雑な人間模様を見せる。
冒頭のシリアスな入り方から一転して軽快なオープニングが印象的だった。
マフィアや犯罪も日常的ですらあると思わせるこの街の一面か。
入り組みながらもラストはすっきり。
オーナーの従業員を見つめる目が優しかった。
年の功というか懐の深い親父は素敵だ。
息子は違う意味で器がでかかった。
監督:ボブ・ジラルディ
出演:ダニー・アイエロ / エドアルド・バレリーニ
31. ギャラクシー・クエスト (1999)
テレビドラマ「ギャラクシー・クエスト」終了から20年、かつての出演者たちはファンイベントなどで食いつなぐ日々を送っていた。
そこへ番組をドキュメンタリーと勘違いした本物の宇宙人が助けを求めてやってくる。
正直なめてました。
こんな面白いとは思わなかった。
スター・トレックのパロディ的作品。
それを演じる役者の本物の宇宙戦争への参加とファンのイベント。
多重構造の中に詰め込まれた小ネタと伏線で最後まで見所満載の一級エンターテイメント。
この映画には愛と夢がある。
スター・トレックを知っていればもっと楽しめるんだろうけど、知らなくても全然大丈夫。
シガニー・ウィーヴァーにエイリアンネタを振るところとかクールとは程遠いアラン・リックマンとかいいね。
偽物だったはずの役者たちが本物のクルーになっていく過程は胸熱。
監督:ディーン・バリソット
出演:ティム・アレン / シガニー・ウィーバー / アラン・リックマン
32. 春のめざめ (2006)
ガラスに指で書いた油絵によるアニメーション。
思春期の少年の性への興味と初恋を描く。
16歳の春、アントンはツルゲーネフの初恋を読み、理想の女性を思い描いて夢想にふける。
家で働いている年頃の娘パーシャと相思相愛であることを薄々感じながらも、隣家に越してきた年上の女性に惹かれ始めていた。
この年頃だとちょっと年上のお姉さんに憧れたりするんだよね。似た感じの話だとトルナトーレ監督のマレーナとか。
ストーリーもいいけど、最大の特徴は油絵のストップモーションであること。
この時点で観る価値がある。
このペトロフ監督は同じ手法で撮った「老人と海」でアカデミー賞を取っているが、レンタルで見つけられないのでこちらから鑑賞。
人物の動きのなめらかさ、野を駆けるシーン、火や水の表現の迫力。
いい。すごくいい。
海だとより活かされるんだろうなと思うと期待が高まる。
おすすめ。
監督:アレクサンドル・ペトロフ
33. アマデウス (1984)
音楽の都ウィーンに登場したモーツァルトの衝撃とその後の半生を宮廷作曲家サリエリの視点から描く。
モーツァルトの死後、サリエリが毒殺したのではないかとの噂が流れた逸話を元にしたフィクションだが、演奏シーンやオペラの様子が多く登場し、華やかな雰囲気を味わえる。
才能を認められながらもその天真爛漫すぎる性格から次第に疎まれ困窮していくモーツァルトと、嫉妬と憧れの間で揺れ動きながら一番の理解者でもあったサリエリ。
「神はなぜこんな下劣な男に才能を与えたのだ」
嫌悪しながらもオペラの上演には欠かさず出掛けていく。
神に愛された男と、その天才を最も理解できる才能、二人の差がせつない。見どころは後半の共同作業と最後の言葉。
神への愛と憎しみ、その強い想いはサリエリをある境地へ導く。
監督:ミロス・フォアマン
出演:F・マーリー・エイブラハム / トム・ハルス
34. 千夜一夜物語 (1969)
手塚治虫プロデュースの大人向けアニメシリーズの第一作。
これのレビュー見ると、エロスとサイケしか書いてない。
でもまあそんな感じ。
原作の大胆な翻案といい、音楽の選び方、実写の導入、いろいろ詰め込んだ意欲作だけど、終わっての感想は「なんだこれ」。
水売のアルディンは訪れたバグダッドの市場で売りに出されていた奴隷のミリアムに一目惚れし、嵐に乗じてさらってしまう。
そこから始まる二世代に渡る壮大な物語。
アルディンは波乱の人生を送るが、常に楽しんでいるように見える。
2時間半と長めだが、次々と起こる超展開で飽きさせない。かも。
残り二作は「クレオパトラ」と「哀しみのベラドンナ」。迷ってます。
監督:山本暎一
出演:青島幸男 / 岸田今日子 / 橋爪功
35. シンプル・シモン (2010)
「地球の軌道を僕は回る。客観的な目で見るために。」
タイトルを見ておおっと思った。
マザーグース。
イギリスの海賊ラジオ局を描いた大好きな作品「パイレーツロック」でDJの一人、サイモンのあだ名にもなっている。
実際の原題は「I rymden finns inga känslor」。宇宙には感情がない、という意味らしい。
規則正しい生活を好み、変化を嫌い、他人の感情を読み取るのが苦手なアスペルガーのシモンの物語。
恋人が去って落ち込む兄のために、完璧な彼女を探すことにする。
他人との関わりがうまくできないシモンにとって、涙ぐましい努力を要する行動でもあるが、この作品ではそれを重くなく、愛らしく仕上げてある。
弟思いの兄サムや自然な振る舞いのイェ二ファーも魅力的で、エンドロールが終わるとまた再生ボタンを押していた。
サム役の俳優の目が印象的。
監督:アンドレアス・エーマン
出演:ビル・スカルスガルド / マルティン・ヴァルストロム / セシリア・フォルス
36. パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト (2013)
デイヴィッド・ギャレットがセクシー。
その超絶技巧で「悪魔に魂を売った」とまで言われたパガニーニの半生。
無名時代、幕間での演奏が観客に見向きもされなかったパガニーニは謎のマネージャーを得てヨーロッパ中に名声を轟かせる。
冒頭の斬新な展開から2時間この調子かと不安になったが、ある意味あっという間だった。
制作総指揮が本人というのもあって、演奏部分を如何にかっこよく見せるかという工夫が微笑ましい。
その分、それ以外の破天荒さが物足りないか。
だめなキャラなのにどことなく品がある。
終盤の国王の前での演奏シーンは待たされた分、一気に解放される。
そのかっこよさを堪能したい人向け。
監督:バーナード・ローズ
出演:デイビッド・ギャレット / ジャレッド・ハリス / シャーロット・ワトソン
37. バビロンの陽光 (2010)
フセイン政権崩壊から3週間後、砂漠の中を老女と少年が歩いていた。
湾岸戦争で行方不明になった息子を探す旅。少年は父の顔をまだ知らない。
冒頭のヒッチハイクで車に乗せてくれた男のセリフが印象的だった。
「サダムが糞なら、アメリカは豚だ」
フセインはいなくなったが、銃声と火の手は止まない。
途中立ち寄るバグダッドは廃墟同然。
神に祈る老女に、「そんな事をしても時間の無駄だ」と言い放つ。
この老女と少年はクルド人。
言葉はあまり通じない。
少年は僅かにアラビア語を解す。
音楽はあまり使われず、台詞も抑えめ。
美しい構図と対象的にイラクの悲惨な状況が映し出される。
父親は見つかるのか。
この国では、過去数十年間に身元不明の死者は100万人を超えるという。
老女にとっても、監督にとっても実体験が元になっている。
原題は「SON OF BABYLON」。
sonとsunを掛けたわけだけど、監督のバビロンに込めた思いに通じると思う。
監督:モハメド・アルダラジー
出演:ヤッセル・タリーブ
38. 奇跡 (2011)
九州新幹線全線開通記念として作られた作品。
博多〜鹿児島中央を結び2011年春に全線での運行が開始。
沿線の各駅で手を振る人々の様子を撮影したCMがカンヌ国際広告祭で金賞をとったが、あれを映画にした感じかな。
両親の離婚で福岡と鹿児島に離れ離れになった兄弟が、もう一度家族四人で暮らすことを願い、奇跡が起こるという新幹線が初めてすれ違う瞬間に立ち会う。
子供たちだけの秘密の一泊旅行。
旅費の工面や計画の様子が丁寧に描かれ、わくわく感が伝わってくる。
小学生の頃って行動範囲は狭くて外の世界は広かった。
現実はなかなか思い通りには運ばないけれど、その日々は忘れられない思い出になる。
小道具としての「かるかん」の使い方もいい。
ぼんやりとほんのりの違いがわかるようになった少年は少しだけおとなになっていた。
監督:是枝裕和
出演:まえだまえだ / 橋本環奈 / 長澤まさみ
39. サラの鍵 (2010)
1942年に起きたフランス政府によるユダヤ人狩りヴェル・ディヴ事件。
アパートを訪ねてきた男たちに危険を感じたサラは、幼い弟を納戸に隠し鍵をかける。
2009年、ジャーナリストのジュリアは、新しく住むことになったアパートがかつてユダヤ人狩りにあった歴史を知り、サラの行方を追う。
重い作品だった。
演技力の高さがそれをより感じさせる。
でも最後には温かくなった。
いのちを、記憶を、歴史を次の世代に繋げるということ。
いいものをみた。
監督:ジル・パケ=ブランネール
出演:クリスティン・スコット・トーマス / メリュジーヌ・マヤンス
40. 世界中がアイ・ラヴ・ユー (1996)
ゆるゆるミュージカル。
ニューヨーク、ヴェネチア、パリを舞台にした大家族の恋愛模様。
微妙な歌唱力、鈍いダンス、めまぐるしい展開。もうカオスだ。
でも楽しい。
おじいちゃんが幽霊になってまで歌ってくれる「今を楽しもう。手遅れになる前に。」がこの作品のテーマなのかもしれない。
マルクス兄弟のパロディが出てくる場面でなんか納得した。
このハチャメチャ具合はたしかに覚えがある。
名作のオマージュやゲスト出演をさらっとぶっ込んできつつもラストはしっかり纏めてくる。
過去に思いを馳せつつ全ては肯定される。
大切なのはこれからどう生きるかだ。
I love you が言える相手がいるだけで幸せじゃないか。
ヴェネチアでのあの構図にニヤニヤした。
監督:ウディ・アレン
出演:ナタリー・ポートマン / エドワート・ノートン / ジュリア・ロバーツ
41. her/世界でひとつの彼女 (2013)
近未来、紙の本の出版社は希少なものになり、音楽も映画もゲームもデータとして扱われる。
一度その状態になれてしまうと、ものを介しての情報のやりとりは煩わしく感じてしまう。
今でもそういう面はある。
この映画の世界では大事な人への手紙ですら、データとして扱うだけでなく、第三者に依頼するという。
主人公のセオドアの仕事が成り立つのもそんな世界だからだ。
セオドアは他人の手紙なら詩的で素晴らしい文章を書ける。
だが自分のこととなると全然進まない。
関係の終わった妻の離婚届も、一年もの間放置して逃げるメンタルの持ち主。
感情を持ってしまったOS、実態のない存在である彼女との恋愛をとおして、自身が求めていたもの、気づかなければいけなかったことを理解する。
オフィスや街並みのちょっとだけ先の未来感がよく出ていた。
声だけのスカーレット・ヨハンソンもすぐそこにいるようで、こういうのもありかもなと思わせる。
でもやはり相手は人間がいいよ。
友人のエイミーの価値観が救い。
監督:スパイク・ジョーンズ
出演:ホアキン・フェニックス / スカーレット・ヨハンソン / エイミー・アダムス
42. 鴛鴦歌合戦 (1939)
チャーミングな逸品。
1939年に作られたオペレッタ時代劇。
片岡千恵蔵扮する浪人に恋する三人の娘たち。
隣に住む傘張りの娘お春。
町でも評判の商家の娘おとみ。
かつての許嫁藤尾。
そこに骨董狂いのお春の父や殿様が絡んでひと騒動が起こる。
本当に価値のあるものは、お金でも物でもなくて、あなたの心です的な展開でシンプルなストーリーだが、出演者たちの味のある歌と宮川一夫のカメラによる立ち回りのシーンなど見所も多い。
殿様パートなんてジャズだ。
ノリノリの家来を引き連れて町へ繰り出すシーンは楽しい。
監督:マキノ正博
出演:片岡千恵蔵 / 志村喬 / ディック・ミネ
43. ブロードウェイと銃弾 (1994)
売れない劇作家のデイビッドは、脚本は評価されながらもスポンサーが付かずに発表の機会に恵まれずにいた。
やっと見つけたスポンサーはギャングのボスで、条件は愛人を出演させてスターにすること。
名優たちに交ざった大根女優オリーブの迷演ぶりに困惑するデイビッド、しかし一番苦々しく思っていたのはそのボディガードのチーチであった。
芸術とはなにか、何をもってアーティストと呼ぶのか。
学生時代から演劇を学んできたアーティスト気取りの男よりも劇を輝かせたのは、学もない、命のやり取りが日常の一人の男の生きた台詞だった。
周りの状況で揺らいでしまう信念は、揺らがないものをもつ者には及ばない。
劇の成功をとおして痛感したデイビッドの決断は。
監督:ウディ・アレン
出演:ジョン・キューザック / チャズ・パルミンテリ / ダイアン・ウィースト
44. ブロークバック・マウンテン (2005)
牧場の季節労働者として出会ったジャックとイニスの愛の物語。
ブロークバック・マウンテンの雄大な自然と羊たちの群れ。
世俗から離れた世界が丁寧に描かれている序盤から引き込まれる。
着替えのシーンの、遠近法でのぼかしと、見たいのに見れない目元の微妙な動きにおおっとなった。
禁断の味を知ってしまった二人は幸せだったのか。
「成就しない愛だけがロマンティックだ」とは同時期にみた別の映画の言葉だが、外の世界では許されない愛は切ない。
それでも夫婦の愛、親子の愛と形は違っても人が人を思う気持ちには変わりがないのだと思わせてくれる粋なラストだった。
描写や演技が細やかで、再鑑賞のしがいがある。
ラブシーンも絶妙だと思う。
あまり濃厚だとお、おうってなるけど気持ちの伝わる表現だった。
監督:アン・リー
出演:ヒース・レジャ / ージェイク・ギレンホール / アン・ハサウェイ
45. アイ・オリジンズ (2014)
「目こそその人自身だ。」
イアンは目の進化の研究をしている学生。
パーティで出会った女性が忘れられないが、手掛かりはサンプルとして撮った目の写真だけだった。
動画配信限定。
一部の描写に苦手な人がいるかも。
無駄なセリフがないので集中できるときに観てほしい。
頭の中がぐるぐるする。
音楽もよかった。
監督:マイク・ケイヒル
出演:マイケル・ピット / ブリット・マーリング / アストリッド・ベルジェ=フリスベ
46. 蝶の舌 (1999)
スペイン内戦がテーマということで再鑑賞。
すっかり内容を忘れていた。
1936年、喘息のため一年遅れで学校へ通うことになる少年モンチョと最後の年になるグレゴリオ先生の交流。
人見知りで学校へ恐怖心すら抱くモンチョにとって優しい先生はかけがえのない存在であった。
この題材を選ぶ以上は悲劇的な展開は避けられないが、家族を守る母の強い信念と意図を理解した少年の言葉が切ない。
思いは先生に届いたか。
監督:ホセ・ルイス・クエルダ
出演:フェルナンド・フェルナン・ゴメス / マヌエル・ロサノ
47. ボビー・フィッシャーを探して (1993)
公園のストリート・チェスに興味を持った少年と家族の物語。
才能を伸ばしてやりたい父親と、息子の幸せを願う母親と。
他のものを捨ててより強くなるか、今しかできない経験をさせて豊かな感性を育むか。
棋譜は美しい。
研究を重ねて突き詰められたものは人を感動させることもある。
でも品性はまた別の問題だ。
ある日芽生えた勝ち続けることの不安と負けることへの恐怖心。
少年の出した答え。
プレイヤーとしては欠点かもしれないけれど、少年の優しい気持ちは大事にしたい。
監督:スティーブン・ザイリアン
出演:マックス・ポメランク / ベン・キングズレー / ローレンス・フィッシュバーン
48. 深夜の告白 (1944)
コメディではないワイルダー監督作品。
深夜、勤めている保険会社のビルに戻ったウォルターは、同僚の調査員キーズの部屋のレコーダーに向かって、ある保険金殺人の真相を語り始める。
倒叙型サスペンスの先駆けで、フィルムノワールの代表作。
陰影の使い方とマッチの火が印象的で粋。
登場人物たちの冷酷になりきれない人間味に監督の優しさを感じる。
監督:ビリー・ワイルダー
出演:フレッド・マクマレイ / バーバラ・スタンウィック
49. ニューヨーク・ミニット (2004)
オルセン姉妹主演。
優等生と問題児の姉妹がそれぞれの目的で向かったニューヨークで騒動に巻き込まれるコメディ。
公開時にあまりに評判が悪くて日本での劇場公開が中止されたり、最低女優賞にもノミネートされたりしたらしい。
さぼり捜査官を演じたユージン・レヴィがけっこう好きなのと、姉妹がかわいいのとで個人的には楽しめた。
監督を差し置いてノミネートされるほどひどくはない気がする。
監督:デニー・ゴードン
出演:オルセン姉妹 / ユージン・レヴィ / シンプル・プラン
50. キット・キトリッジ アメリカン・ガール・ミステリー (2008)
子供たちの見た大恐慌。
1934年、新聞記者になる事を夢みる少女キットは兄の友人の務める新聞社に原稿を持ち込む。
編集長が求めているのは人々の生活に沿った生の記事。
ボランティアで求職者たちの食事の世話をしたある日、その中に父の姿を発見する。
まだ自分には関係ないと思っていた大恐慌の波が現実のものとなってきていた。
アメリカン・ガールとは歴史教育を目的とした人形シリーズで、各時代を生きる少女たちをモデルとしたキャラクター。
今作もそれに即した内容でわかりやすく描かれている。
家族の絆と友情、夢と冒険。
親子で観るのがおすすすめだけど、大人が観ても楽しめる内容。
監督:パトリシア・ロゼア
出演:アビゲイル・ブレスリン / クリス・オドネル / ジョーン・キューザック
あとがき
こんな感じで結構古い映画も好きです。
新作も気になるし、映画館も行きたいし、Netflixもチェックしたいし。
リストがたまる一方ですね。
おすすめの映画があれば教えて下さい。
それでは。