「さよならフットボール」は新川直司による漫画作品。
恩田希は、藤第一中学の男子サッカー部に所属する14歳の女の子。
あだ名は藤一のエリック・カントナ*1。
スポーツ少年団の頃から周囲を圧倒するテクニックを持っていたが、成長期の男子選手たちに体格で追い越されていく。
「私にはたぶん、時間がないんだよ」
秋の新人戦の1回戦、希にはどうしても出場したい理由があった。
マネージャーの越前佐和は、希の一番の理解者。
テツ(山田鉄二)やタケ(竹井薫)と共に幼い頃からの長い付き合いである。
女の子は試合に出られない
藤一の監督、鮫島は希の出場をどうしても認めようとはしない。
女子は男子の試合に出さないというのは、入部の際の約束だった。
それでも試合に出たい。
希は新人戦の出場枠を得るために様々な作戦を練ることにする。
お菓子で買収、敵情視察で取引など。
もちろん誰よりも練習することは欠かさない。
藤一のみんなを精神的に引っ張ってきたのは彼女だった。
鮫島監督もそのことはよくわかっている。
「恩田が男だったら」と思わない日はないよ…(鮫島)
中学女子サッカーの競技環境の実際
指導者に話を聞いても「中学1年生の夏を越えたあたりから同じピッチでプレーするのは難しくなっていく」という声が多いようです。一般的に女子の方が成長は早いので「追い越された」「もう敵わない」と、よりフィジカルの強度を求められるなかで、サッカーの面白さを見失ってやめてしまう子も少なくないそうです。
スポーツ少年団などで男子に混ざってプレイできる小学生や、私立のスポーツに力を入れている学校の選択の余地がある高校生と比べ、中学生のサッカーをする環境は限られているようだ。
なでしこジャパンのワールド・カップでの優勝以後、競技人口は高い増加率を示したものの、2014度の中学の部活の女子サッカー部員は6,598名*2。
これは柔道よりも少ない。
都市部では学校外のチームに所属する選択肢もあるが、地方の場合はまだまだむずかしい状況なのではないだろうか。
本作の希も近くに女子チームがなく、部を作るにも人数が足りない環境であった。
2006年以降、女子が男子の大会に出場することが可能になったものの、 そのためにはもちろんチーム内で認められなければならない。
フィジカルの問題。
「違う、そうじゃない」
華麗なるフットボール
フィジカル。鮫島監督が心配するのもその点。
紅白戦と試合は違う。
まだ身体のできていない女の子が、男子の中に混ざって何かあったらとの迷いから、実力は認めながらも試合の許可は出さないまま新人戦の日をむかえる。
ここからが藤一のエリック・カントナの本領発揮の場面。
彼女の見つけた答えは、背番号7は輝くのか。
全2巻。
あとがき
作者の新川直司氏は「四月は君の嘘」が有名になりましたね。
サッカー観戦は好きなようで、試合での躍動感のあるシーンにいかされています。
もうちょっと続いて欲しかった気がしますが、すっきり終わってよかったのかもしれません。
本作は女子日本代表の澤穂希選手のドキュメンタリーをみたことがきっかけだそうです。
希のモデルでしょうか。
現在日本の女子サッカーが強いのは子供時代に男子選手と一緒に練習して技術が磨かれたことが大きいともいわれますが、チームが増えて競技人口が増えてくるともっと楽しみになりますね。
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