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「Lily lily rose」1巻(紺野キタ)ゆりかを失った凛々とのばらの再生の物語

「Lily lily rose」(紺野キタ)1巻 (バーズコミックス スピカコレクション)

「Lily lily rose」(リリーリリーローズ)は紺野キタによる漫画作品。 

 デンシバーズで2016年より連載を開始した。

木々に囲まれたとある屋敷に、少女が一人訪ねてくる。少女の名は凜々(りり)。家主らしき女性に導かれ、凜々が中に入っていくとそこには、たくさんの本と、たくさんの猫たちが! 屋敷に出入りする人々や、不思議な事に遭遇するうち、やがて凜々は……。心の再生を描くファンタジックストーリー。

(「Lily lily rose (1) (バーズコミックス スピカコレクション)」より)

凛々とのばらの再会

母が亡くなって言葉を話さなくなった少女・凛々が預けられたのは、母の双子の姉妹・のばらの元。

そこはかつて母も暮らした家だった。

数年ぶりに会った姪に対して、ややそっけなさすら感じるおばではあったが、凛々にとっては居心地も悪くなさそうだ。

部屋のあちこちに積まれた本や、くつろぐ猫たちに囲まれ時間はゆっくり過ぎていく。

「Lily lily rose」(紺野キタ)1巻より、凛々がやって来た日
(「Lily lily rose」1巻より)

のばらは独特な距離感の持ち主。

相手によって接し方が変わったりはしない。

凛々がやってきた直後でもこの有様であるが、彼女にとってはこれが自然体なのかも知れない。

猫を描いているのか、それとも仕事用のスケッチだろうか。

マイペースなのはいいが、荷物はポーチに置きっぱなし、凛々を部屋に案内しないまま、食事もおかしで済ませようとするなど、保護者としてはやや不安が残る。

「Lily lily rose」(紺野キタ)1巻より、傘の名前を訊ねる真耶
(「Lily lily rose」1巻より)

この家の生活面で頼りになるのは、下宿人の真耶、凛々の隣の部屋の住人である。

のばらや凛々のよき理解者となる彼女は、傘の存在にもすぐに気付いた。

今の凛々にとって心の拠り所であるその傘は、母ゆりかとの思い出の品であり、名前も付いている。

新しい居場所は、安らぎを与えてくれるかもしれない。 

「Lily lily rose」(紺野キタ)1巻より、凛々が喋った
(「Lily lily rose」1巻より)

本作は身近な人を失った凛々とのばらが、その喪失感と向き合い乗り越えていく様子を描いている。

目に見える形で表れている凛々よりも、自覚のないのばらの方が根が深そうだ。

彼女は未だゆりかの死を受け入れられないでいる。 

それも凛々と暮らすことで少しずつ変化していくだろう。 

 

彼女たちを取り巻くのは、新しい仔猫の様子を見に通う馨や、のばらのクライアントの里見。

のばらの家にはたくさんの猫が住んでいるが、そのうちの何匹かは馨によるものかもしれない。

ちなみに確認できたのは10匹ほど。

「Lily lily rose」(紺野キタ)1巻より、生け垣をすり抜ける
(「Lily lily rose」1巻より)

凛々を近所で案内する際には生け垣の隙間から他所の庭を通り抜ける方法を披露する。

田舎ならではの風景で懐かしさがある。

 

初めて里見に会った時の凛々は、庭の黄色いレンガの道を戻ってくるところだった。

「Lily lily rose」(紺野キタ)1巻より、そのドロシーならうちの子だよ
(「Lily lily rose」1巻より)

その様子をとっさにドロシーに例える所がいい。

そして凛々は里見を魔女と呼び、里見は小鬼と返す。

こういった遊び心のあるやりとりは好き。

 

タイトルの「Lily lily rose」は「ゆりか、凛々、のばら」の三人の名前でもあるが、モチーフは19世紀に描かれた絵画かと思う。

夕暮れの花に囲まれた庭で、提灯に火を灯す姉妹の画。

「Carnation, Lily, Lily, Rose」(John Singer Sargent)
(PD)「Carnation, Lily, Lily, Rose」(John Singer Sargent)

客人にだけ見えるという幽霊はこのイメージかな?

あとがき 

“ファンタジック” な部分はまだ抑えめなんだけど、4話のラストは気になるシーンだった。

web連載で見つけにくいかもしれないので作品ページを。

Lily lily rose - デンシバーズで1話を試し読み

 

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