「パプリカ」は2006年に公開された今敏監督の4作目の作品。
虚構と現実の交錯は全作通して見られる特徴であるが、この「パプリカ」では夢の世界が境界を破って侵入してくる。
僕は今敏監督作品ではこれが一番好きだ。「千年女優」も捨てがたいけれど。
ただ残念なのはこれが遺作となってしまったこと。
あらすじ
精神医療研究所の研究員、時田が開発した最新のサイコセラピー機器「DCミニ」。
それは他人の夢を共有し、その夢の中に入り込めるという画期的なものであった。
同僚の千葉敦子は開発チームの副主任で、時田の開発したサイコセラピー機器を臨床に応用する研究者だったが、所長の島の依頼で患者を治療するセラピストの顔も持っていた。
コードネームは夢探偵「パプリカ」。
Paprika Opening HD - YouTube
盗まれたDCミニ
敦子が研究所から自宅のマンションへ戻ると、時田が訪ねてきており、困ったことが起きたと告げられる。
盗まれたDCミニのサンプルは3つ。
悪用されると、相手の精神を崩壊させることすら可能になる危険なものでもある。
DCミニはまだ未完成の非公式なもので、内部の犯行が疑われ、2人は最近休みを取っている助手の氷室の家へ向かった。
夢の世界、パレードの狂気
この作品の見所の1つはこのパレードの様子だ。
紙吹雪の舞う中、カエルの楽団、鳥居、電化製品、招き猫、仏像が練り歩く。
人形やおもちゃたちによる極彩色のパレードは、夢の象徴として島所長の見る夢の中に現れ、やがて現実世界に侵入してくる。
「非人間的な現実世界にあって、唯一残された人間的なるものの隠れ家、それが夢だ。あのパレードは現実を否応なく追われた難民なのだ」(乾理事長)
忘れられ、或いは捨てられたものたちが向かう先は夢の外の現実世界。
「絢爛たる紙吹雪は鳥居をくぐり、周波数を同じくするポストと冷蔵庫は先鋒を司れ!
賞味期限を気にする無頼の輩は花電車の進む道にさながらシミとなってはばかることはない!」
夢に侵された人びとの口にする支離滅裂なセリフ。
このわけのわからなさ。
映像は飽くまで楽しそうなのに、一番狂気を感じるシーン。
これを観たことが、今監督作品にハマるきっかけになった。
あとがき
筒井康隆の原作は未読だ。
詳細な設定、登場人物の関係や立場などはそちらを読んだほうがわかりやすそう。
しかし、原作があることが意外なほど今監督らしい作品とも言えるんじゃないだろうか。
場面転換や間の取り方、描き込みの細かさ、虚構と現実を織り交ぜた過去作品の進化系。
作中でも言及された夢見る子供たちが次回作になるはずだったが、それは叶わぬものになってしまった。
もっと監督の映画を観たかった。
HuluでもNetflixでもあるので、未鑑賞の方は一度観てみることをおすすめしたい。
予告編動画
Paprika Trailer (2006) HQ - YouTube
監督︰今敏