午前3時の太陽

おすすめの漫画と注目の新刊コミックのレビューブログ

【2017年版】最近読んだ1巻完結の漫画をおすすめするよ

毛糸玉と本

ここ最近で面白かった1巻で完結する漫画をいくつか紹介したい。

最近といっても今年に入って位のゆるい範囲ではあるが。

1巻もののよさは、読んだことのない作家でも気軽に試し読みできるところ。

表紙で一目惚れして買うもよし、SNSで流れてきたのをポチるのもよし。

今年は当たりが多い気はしている。

甘木唯子のツノと愛(久野遥子)

「楽園にいたユニコーンは、そのツノで仲間を刺し、ノアの方舟に乗れなかったんです」母親と離れて暮らす、ツノのある妹と、ツノのない兄。ふたりは秘密基地で、ある“特訓”を続けていた……。2010年に月刊コミックビームでデビュー後(久野酸素名義)、アニメーターとして活躍している久野遥子の、待望の初漫画作品集。その圧倒的才能に魅せられる、痛すぎるほど純粋な“少女”たちの物語。

(甘木唯子のツノと愛 | エンターブレインより)

「甘木唯子のツノと愛」(久野遥子)より、あたしを見て
(「甘木唯子のツノと愛」より)

作者はアニメーターとしても活動している久野遥子(くのようこ)。

本作が初の単行本である。

アニメ映画「花とアリス殺人事件」にも参加していた関係か、帯には岩井俊二監督がコメントを寄せている。

「透明人間」「IDOL」「へび苺」「甘木唯子のツノと愛」。

発表時期の異なる4つの短編をまとめたものだが、共通しているのは「あたしを見て」という切実な願い。

家族を置いて出ていった母親に、複雑な感情を抱く兄妹を描いた表題作。

妹の額には、二人にだけ見えるツノが表れた。

そのツノで母を刺すために特訓を重ねてきたのだが、夢を追って海外へ行っていたはずの母親と意外な形で再会を果たす。

行き場を失った思いはどこへ向かうのか。

 

”外面がどれだけ心を作ることが出来るか”という実験がとあるサーカスの一座で行われる「へび苺」も気になる終わり方だった。

大蛇の着ぐるみを着ることになった少年が気になる相手は、少女の着ぐるみを着た何か。

正体のわからないそれに惹かれていくのは着ぐるみのせいなのか、それとも本人の心なのか。

こうふく画報(長田佳奈)

特別ではない「いつものごはんやおやつ」とともに、市井の人々の何げない、でも幸せな日常と描いたノスタルジックコミック!

(こうふく画報 - 株式会社ぶんか社より)

大正時代のとある街を舞台に、そこで暮らす人々のささやかな日常を描いた連作短編集。

和菓子屋の栄泉堂は作中の登場人物たちもよく利用する店。

主の有平は、腕はいいが神経質な性格のため仕事の進みが遅いのが難点。

整然としていないものが気になって、菓子作りよりも優先してしまう。

商売には向かない男なのである。

「こうふく画報」(長田佳奈)より、有平とかの子
(「こうふく画報」より)

そんな彼のお守りをしつつ店を切り盛りする従業員のかの子は、しかし憎からず思っているようだ。

全くデレないし素振りも見せないのだが、そこがいい。

彼女が言葉を失うこの瞬間に想像できる未来を、もう少し見ていたかった。

映画大好きポンポさん(杉谷庄吾【人間プラモ】)

ニャリウッドにある映画会社でプロデューサーを務めるポンポさん。

彼女の手にかかれば、どんなくだらない内容のものでも面白い作品に仕上がってくる。

「映画大好きポンポさん」(杉谷庄吾【人間プラモ】より、ポンポさんはB級映画好き
(「映画大好きポンポさん」より)

若くして人脈も才能も実績も持ち合わせている彼女と、彼女に見出された新人監督ジーンや新人女優ナタリーの成長の物語である。

が、一番好きなシーンは常連のコルベット監督や人気女優ミスティアと次回作についての話で熱中している場面。

またくだらなくて面白い作品が生まれそうだ。

ミスティアの仕事の選ばなさもすごいし、何だかんだ楽しそう。

ポンポさんへの信頼があっての事だけど。

青春の光となんか(平尾アウリ)

平尾アウリが描く青春コメディ! 女子高生がモグラ取りのバイトに励んでいるとき、もちつき屋さんはさるかに合戦を繰り広げ、そして人類滅亡のカウントダウンが始まる…。 果たしてバンド結成なるか…!? 若者たちの苦悩を描いたショート・ショート30連発!

(青春の光となんか / まんがライフWINより)

これはもうツッコミどころが分からないというかツッコミどころしかないというか、作者の凝縮されたシュールな世界を味わえる。

他作品でもギャグ部分は濃いなと思っていたが、そこだけを抽出して煎じ詰めればこうなるのかという感じ。

ショート・ショートだが続きものもあるので最初は順番通りに読んだほうがいい。

モグラの飼い方のネタは「推しが武道館いってくれたら死ぬ」でも出てきた。

モグラってなんなんだ。

「青春の光となんか」(平尾アウリ)より、海パンから串
(「青春の光となんか」より)

ツインテールが似合う男の娘の鯵(そう)くんは、作者が人生で一番かわいく描こうとしたキャラらしい。

同時期に短編集「わびさび」も出たが、そちらは1話あたりのページ数が多めなので読みやすいかも。こちらは若干マニア向け。

イロドリミドリ(羽柴麻央)

中学2年の浅倉玉緒には、いつも放課後を過ごす図書館で気になる男の子がいた。

静かで穏やかな空気をまとった緑くんは、前年に亡くなった祖母との時間に似ていて、彼女には居心地がいいものだった。

やがて距離も縮まりつつあったある日、緑くんの様子がおかしいことに気付くのだが…

「イロドリミドリ」(羽柴麻央)より、緑の表情が気になる玉緒
(「イロドリミドリ」より) 

親の転勤で、きちんと伝えられないままになってしまった恋心。

二人の別れは予想外な方向へいくのだが、窓の外に降る雪と図書館の静けさで、時が止まったような印象的なシーンになっている。

ラストでの玉緒との対比もいい。

表題作の他、お互い好意を抱きながらもすれ違ってしまった二人を描く「糸と釦」、親の再婚でできた妹との関係に悩む「劇団中学生」など、一期一会をテーマにした短編集。 

スタンドバイミー・ラブレター(増田里穂)

憧れがないわけではなかったが、クラスの違う、名前も知らない男子の告白は、葉月にときめきよりも不安をもたらした。 接点のない相手にどう対応していいか分からず、こんなものかと思いつつ断ってしまうのだった。

「スタンドバイミー・ラブレター」(増田里穂)遅れてきた恋心を手紙がつなぐ - 午前3時の太陽

夏休みの前日、葉月はラブレターの相手に返事をすることにした。

しばらく顔を合わせなくて済むようにと考えての事だったが、むしろそれが裏目に出てしまう。

別れ際に見た彼の笑顔が気になって、会えない分ぐるぐると考えてしまうのだった。

帯の言葉は「断った瞬間、恋に落ちるなんて。」 

「スタンドバイミー・ラブレター」(増田里穂)より手紙を読み返す葉月
(「スタンドバイミー・ラブレター」より)

知らない相手なので断るのは当然なのだが、そのことをきっかけに葉月は泉のことが気になっていき、泉は逆に思いを忘れようとする。

時間差で両思いになるものの、すでに断ってしまっていることが二人の障害となる。

タイトルから想像がつくように、本作は手紙が重要な役割を果たすが、手書きならではの流れだ。

もどかしくも甘酸っぱい、ひと夏の出来事。

バス走る。(佐原ミズ)

もどかしくて、たどたどしくて、切なくて…でも、あたたかい。繰返す毎日の中をバスは走る。乗せたヒトの数だけ「想い」や「願い」を運び、始まりを届ける――…。

バスの停留所を舞台とする『バス走る。』5編と、思春期の心の揺れを描く『ナナイロセカイ』2編からなる短編集。

10年ほど前の作品で手に入りにくくなっていたが、今年電子書籍で復活した。

「さくら町停留所」と「めがね泥棒」がお気に入り。

佐原ミズ短編集「バス走る。」より、迎えに来るから嫁になって
(『さくら町停留所』より) 

高校の卒業式を翌日に控えた春の日、さえない生物教師に恋をした少女が告白する。

「大学を卒業したら迎えに来るから嫁になって。」

約束とも言えない約束を残して季節は巡る。

過去の思い出を回想する教師の午後。

あとがき

最初は1巻物のまとめにしようかと思ったが、長くなりそうなので今年読んだものに限定してみた。

現在積んでる「ウムヴェルト」や「崖際のワルツ」もよさそうだし、谷川史子の昔の作品も集めたいと思っている。

これもいいよ、というものがあれば教えてもらえるとうれしい。

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