午前3時の太陽

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「さよなら私のクラマー」33話(新川直司)興蓮館との決勝戦が開始

「さよなら私のクラマー」(新川直司)33話より、全国制覇など当然

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

33話は、蕨青南と興蓮館の試合がはじまる。

 

前回はこちら。

興蓮館戦の開始

来栖や九谷たちインターハイ組が強行出場することで静かになった観客席には、試合を終えたばかりの栄泉船橋の選手たちがやってきていた。

先の関東大会では久乃木学園の連覇を阻んだ経緯があるが、こちらは穏やかな交流が生まれているようだ。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)33話より、ロールケーキを配る井藤
(「さよなら私のクラマー」33話より)

「久乃木の天才ちゃん」こと井藤春名が、彼女たちの心をつかむことに成功している場面も見られる。

相手の興蓮館を知る者として、特に浦川キャプテンの解説役としての姿も期待できるだろう。

序盤は静かな立ち上がりとなったが、興蓮館にとっては確認のための時間。

事前情報とのすり合わせをおこないその後の対応に活かしてくる。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)33話より、健闘するワラビーズの守備陣
(「さよなら私のクラマー」33話より)

相手が無名のチームでも侮ってくる事は期待できなさそうだ。

そもそもカツオちゃんこと高萩数央が監督を務める学校である。

以前、深津監督を訪ねてきた彼に直接指導してもらったことすらあった。

ワラビーズの個々の能力も把握されていると考えたほうがいい。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)33話より、雑なチームかと思ってた
(「さよなら私のクラマー」33話より)

インハイ得点王の来栖も、普段の高飛車な態度とは違い、堅実なプレーをしてきそうな印象。

栄泉船橋の国府のように絶対的なエースとしてではなく、おそらくは彼女の代わりを務められる選手もいるはず。

引率を任されていた3年生の藤江が本来のエースなのだと思われるが、怪我で不在にも関わらず、全国制覇は当然と高萩監督に言わせる高いチーム力を持っている。

それはインハイ組の1年生・九谷のこんな場面にも表れている。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)33話より、恩田からボールを奪う九谷
(「さよなら私のクラマー」33話より)

フットサル大会の時のリベンジを狙う彼女のポジションは、深津監督に言わせると効果的な恩田対策になっているという。

攻撃時と守備時でのシステム変更が肝らしいのだが、付け焼き刃でもなく、更にバリエーションがあるのだろうと考えると不気味なチームである。

浦和戦での情報と九谷の思いを知る高萩監督の計算通りの展開としてならば、やりにくい戦いになりそうだ。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)33話より、興蓮館のもとエース
(「さよなら私のクラマー」33話より)

ちらっと出てきた藤江の過去のエピソードも気になる。

彼女は、無名校だった興蓮館を全国レベルに引き上げた張本人だった。

その姿に憧れて入学してきた選手も多いのだろうね。

そして、彼女が高萩監督の元にいるのにも意味がある。

怪我のために道を絶たれた元スター選手は、かつての深津監督と重なる。

将来的な復帰はともかく、再び高校サッカーのピッチに立つことはないだろう。

蕨青南訪問の理由には、その事の相談もあったのかも知れないね。

あとがき

小手調べ中とは言え、蕨青南の守備の成長が見て取れるのもいいね。

今月は最新の単行本8巻の発売が控えている。

今回の扉絵で使用された国府と越前のイラストが表紙。

 

単行本9巻の発売日は6月17日に決定。

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「さよなら私のクラマー」32話(新川直司)新女王の降臨

「さよなら私のクラマー」(新川直司)32話より、弱小なめんなよ

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

32話は、興蓮館との決勝戦、相手はBチームのはずだった…

 

前回はこちら。 

決勝の相手は興蓮館

インターリーグの3位決定戦は栄泉船橋が順当に制し、決勝は蕨青南と興蓮館とで行われる。

インハイに出場していた主力組は登録から外されているため、二軍クラスのメンバーのはずだが、そこは全国2強のチーム。

さすがの層の厚さである。

ワラビーズとしても楽に勝たせてくれる相手ではないだろう。

それよりも、ギャラリーがやたら豪華なことになっていた。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)32話より、来栖のことを眼中にない梶
(「さよなら私のクラマー」32話より)

新旧のインハイ得点王が揃い踏み。

佃や井藤の報告のおかげか、梶がワラビーズを見に来ていたが、興蓮館や来栖たちを気にしてなさそうなところが新女王には気に入らないらしい。

この対抗意識からすると、来栖は代表の経験はないのかな?

結果的には彼女の性格のおかげで面白いことになりそうだけど。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)32話より、出場を希望する来栖
(「さよなら私のクラマー」32話より)

数日前に連戦を終えたばかりのインハイ組は出場予定はないものの、強行しようとする来栖。

なかなかアホなキャラでよい。

ユニフォーム変えて強引に出場なんてね。まさかね。

そして意外な選手も登場した。

フットサル大会の決勝でぶつかった九谷怜。

いやむしろベタかな。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)32話より、八重歯カワイイ奴だ
(「さよなら私のクラマー」32話より)

久乃木学園の井藤に突っかかる気の強い選手だったのだけど、周防のひとことで一気に親しみやすそうな印象になったはすごいなと。

彼女もインハイ組で期待されているらしく、持ち味を生かせるチームに恵まれたようだ。

今大会で引率を任されていた3年生の藤江の妹も曲者っぽい。

この姉妹のエピソードも楽しみだ。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)32話より、秘密兵器の?藤江妹
(「さよなら私のクラマー」32話より)

図らずも次世代のベストメンバーが揃いそうな興蓮館を相手にすることになったワラビーズ。

今度はさすがに勝ち目はないのかもしれないが、春の久乃木学園との練習試合からどれだけ成長できたのかを知る機会でもあるだろう。

大会最後の試合で、日本一になったばかりのチームに挑戦できるなんて願ってもないチャンスだ。

恩田の言うように、失うもののない彼女たちにとってラッキー以外のなにものでもない。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)32話より、日本一の称号を強奪するチャンス
(「さよなら私のクラマー」32話より)

むしろ日本一の称号を奪うくらいの気持ちで戦うのがいいのかも。

次回、いよいよ決勝戦がスタート。

あとがき

今回の32話から35話までが単行本9巻の内容になる。 

発売日は6月17日に決定。

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「さよなら私のクラマー」31話(新川直司)インターリーグ決勝へ向けて

「さよなら私のクラマー」(新川直司)31話より、負けた夢で目覚める越前佐和

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

31話は、インターリーグの決勝の相手、興蓮館の主力メンバーが登場。

 

前回はこちら。

決勝戦へ向けて

インターリーグ準決勝の栄泉船橋との試合を終えた蕨青南高校の女子サッカー部は久々の休息日。

と言いたいところだが、決勝戦までの時間がないため軽い調整に当てられた。

ただし、筋肉痛で動きの鈍い越前は練習を制限されている。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)31話より、一輪車やってたから?
(「さよなら私のクラマー」31話より) 

デビュー戦であのキツい相手に張り付いていたのだから、その負担は誰よりも大きいのかもしれない。

初心者らしからぬ動きでチームを勝利に導いた立役者だ。

しかし、これまでスポーツ経験のない彼女があれだけの仕事をこなせたのはなぜなのか。

本人には自覚が無いようだが、恩田の話によると中学2年の秋頃からトレーニングを始めていたのだという。

時期的には新人戦の頃で、恩田の中学最後の試合での活躍を見て決意したのだろうね。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)31話より、フットボールの深淵は常にお前をのぞいているぞ
(「さよなら私のクラマー」31話より) 

また試合に出たい、もっと上手くなりたいと願う彼女がどこまで成長できるのか。

間もなく始まる全国2強の一角、興蓮館との決勝戦でもその力が必要になる瞬間がやってくるはず。

新たなる女王

インターリーグは、時期的にインターハイと重なるため、出場を逃したチームや強豪校の2軍チームが中心の大会である。

関東大会で久乃木学園が姿を消したあと、興蓮館にはもはや敵はいなかったようだ。

番狂わせを起こした栄泉船橋も直接下し、全国へと進んでいた。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)31話より、全国制覇も得点王も予定調和
(「さよなら私のクラマー」31話より) 

ここには絶対的な自身を持つエースがいる。

キャプテン梶を擁する久乃木学園との激闘の末に、日本一と得点王を獲得するつもりだったらしい。

彼女は2年生の来栖未加(くるす みか)。

盛り上がりに欠けそうな大会にがっかりしていた。

昨年も1年生ながら活躍して全国準優勝を経験してきているので、自信過剰なわけでもないのだろう。

目標にしてきたライバルに雪辱しての勝利こそ王道にしてドラマチックに自身の経歴を彩ってくれるものである。

逆に言えばそれだけ久乃木学園との再戦を楽しみにしていたということだ。

そんな彼女にも熱い思いはある。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)31話より、興蓮館の藤江の足の怪我
(「さよなら私のクラマー」31話より) 

今回出場できない先輩のためにも悲願の日本一を達成すること。

その思いの強さが彼女の前出の言葉につながっているのかもしれない。

レギュラー組にも慕われている様子だが、キャプテンだろうか。

インターリーグでの監督代行とメンバー選考も任されるほどの生徒。

試合には出なくとも、決勝では蕨青南の前に立ち塞がる存在なのかもね。

タイミング的にはレギュラー組は出ないはずだが、こっそりリスト入りさせている可能性も考えられる。

試合の内容次第では途中出場もあるのかも? 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)31話より、興蓮館がインターハイで初の全国制覇
(「さよなら私のクラマー」31話より) 

新たに日本一となった彼女たちを熱くさせることができるのか。

そして本番は冬の選手権だろうね。

浦和に勝てたらだけど。

あとがき

今回までが8巻の内容になりそう。 

1月の新刊リストには載っていなかったので、発売日は2月頃かな? 

 

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「さよなら私のクラマー」30話(新川直司)栄泉船橋戦ついに決着!

「さよなら私のクラマー」(新川直司)30話より、曽志崎のシュート

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

30話は、インターリーグ準決勝の栄泉船橋戦がついに決着。

 

前回はこちら。

激戦終結

同点で迎えた後半終了間際、蕨青南のカウンターでゴールに迫る田勢のパスで恩田がシュート、と誰もが思った。 

守備に戻った浦川と岐部の二人がかりでコースを潰したはずだったが、恩田が選んだのはスルーである。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)30話より、あそこでスルーかよ
(「さよなら私のクラマー」30話より) 

国府の考えたように1点目を伏線にしたかどうかはわからないが、シュート体制に入ってからの切り替えで、相手チームも完全に裏をかかれる形となった。 

そこにきっちり合わせてくるのはさすが曽志崎。

激戦だった試合の決勝点となるか。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)30話より、宮坂をかわす国府
(「さよなら私のクラマー」30話より) 

残りわずかな時間でも、国府を起点として得点に結びつける力があることは前半で実証済みである。

最後まで気は抜けない。

実際にゴール前で彼女にボールが渡るのを許してしまうなど決定的なピンチもやって来ていた。

千葉王者としての意地、日本一を目指すチームの絶対的エースの行く手を阻んだのは、この選手。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)30話より、国府のシュートを潰す越前
(「さよなら私のクラマー」30話より) 

今回マン・オブ・ザ・マッチ級の働きだろうね。

数々の強豪を破ってきた攻撃を、この試合がデビュー戦の初心者が幾度となく止めて見せたことは、蕨青南にとって大きな収穫となったはずだ。

それもまぐれではなく、越前本人の努力と観察眼による実力の結果だというのも頼もしい。

トラップやキックは下手くそだが、相手の動きや攻撃の流れを予測して絶妙な位置取りをするのである。

これでボールの扱いを身に付ければ心強い存在となってくれるに違いない。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)30話より、泣き崩れる越前
(「さよなら私のクラマー」30話より) 

だがそのプレッシャーが半端ない大きさであった事は試合後の彼女の姿からも見て取れる。

喜びと同時に、むしろそれ以上に感じたのはチームの一員として与えられた仕事を全うした安堵感だったようだ。

無理もない。

それでも彼女のプレーは見るものを熱くさせてくれるものを持っていた。

深津監督も思わず拳を握るくらいに。

ここぞという時に、何とかしてくれそうな期待は初心者離れしている。

危なっかしさも同時にあるからなのかもしれないが。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)30話より、私達の戦術は代案でいい
(「さよなら私のクラマー」30話より) 

栄泉船橋も、この試合で終わりではない。

深津監督も指摘していたが、最後の土壇場でチームより個人を優先させた場面があった。

国府の突破からの打開にこだわった点である。

いずれ彼女たちが率いるとき、今より攻撃的なチームになっている未来を想定しての選択であった。

おそらくは国府妙の入部から見据えてきた姿なのだろうね。

「あのコ達は、私達の夢です」と浦川キャプテンは言う。

理想のチームになる頃には自分たちはいないかもしれない。

それでも彼女たちが作り上げてきたものは生き続けている。

それでいいんだと。

再戦する頃にはさらに強敵になってそうだね。 

あとがき

先月は単行本7巻が発売された。 

表紙は29話の扉絵でも使われたものなのだけど、連載版では背景が懐かしい感じになっていた。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)7巻「さよならフットボール」(新川直司)1巻

 

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「さよなら私のクラマー」29話(新川直司)あいつがノンちゃんか

「さよなら私のクラマー」(新川直司)29話より、国府と越前の対決

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

29話は、栄泉船橋戦も残り時間わずか、勝敗を分けそうな次の得点はどちらが取るのか。

 

前回はこちら。

後半終了間際

後半も残り6分を切った。

ここから先の得点は試合を左右する可能性が高い。 

国府を相手に大役を担っている越前もよく頑張っているが、そのプレッシャーも大きいだろう。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)29話より、プレー中に迷う越前佐和
(「さよなら私のクラマー」29話より) 

その表情に迷いが見え始めていた。

ドリブルでの突破を抑えこまれている国府にはまだ選択肢がある。

サイドからの突破を試みるチームの方針と彼女自身の性格を前提とした対策であったのだが、中でコンビネーションも絡めて動かれると蕨青南としては厳しいだろう。

チームを、そしてキャプテンを日本一にとの思いは彼女の意地を凌駕した。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)29話より、国府妙のサイドチェンジ
(「さよなら私のクラマー」29話より) 

これによって、栄泉船橋の優勢に動き始めるが、この時の両キャプテンの対比がよかった。

 

国府を中心に組み立てたチームを最後まで貫き通そうとする浦川キャプテン。

妥協とか我慢とかはプロになってからやったらいいと、思いっきりぶちかましてこいと。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)29話より、負けっぱなしでいいの?
(「さよなら私のクラマー」29話より) 

それがキャプテンの、チームとしての意地でもあるんだろうね。 

 

中で動き出した国府を止めるために、蕨青南の田勢キャプテンは自分が下がって対応しようと考えるが、ボールを前に運ぶのは自分の仕事だからと恩田は断っていた。

このときの田勢キャプテンがうれしそうである。

世話が焼ける後輩からこんな力強い言葉が聞けるとは思ってなかっただろう。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)29話より、恩田…偉そうに…
(「さよなら私のクラマー」29話より) 

かと言って守備に期待できるわけではないが、結果的に越前の迷いを解消できたのは大きい。

彼女はこの一試合でチームに欠かせない存在感を出してきた。 

基本的な技術は未熟なのでフル出場はまだ無理だろうけど、今後の成長が楽しみな選手だね。

越前がいなければこの試合負けてると思う。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)29話より、国府のシュートを止める越前
(「さよなら私のクラマー」29話より) 

彼女も恩田を日本一だと証明するために他の選手に抜かれるわけにはいかない。

それがそこに一番近い選手であるなら尚更だろう。

ずいぶんと高いハードルを設定したものだが、現在のところ彼女のモチベーションにとっていい方向に働いているようだ。

その活躍でノンちゃんの存在を印象付けることにも成功したようだし。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)29話より、恩田希のオーバーヘッドパス
(「さよなら私のクラマー」29話より) 

来月あたりで試合も決着かな?

 

今回巻頭カラーで使われた扉絵が7巻の表紙になるのではないかと思う。

「さよならフットボール」(旧版)の表紙を意識した作りになっていて懐かしい。

個人的には新装版よりも好きなデザインだった。

さよなら私のクラマー(7) (月刊少年マガジンコミックス)

 

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「さよなら私のクラマー」28話(新川直司)前を向くために

「さよなら私のクラマー」(新川直司)28話より、恩田と越前コンビの守備

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

28話は、恩田と越前のコンビから始まる新たな可能性。

 

前回はこちら。

恩田・越前コンビ始動

栄泉船橋のエース国府妙を止めるため投入された越前佐和に、心強い助っ人が現れた。

彼女とは一番付き合いの長いチームメイト、恩田希。

本来ポジションの違う恩田を下げたのは、経験の少ない越前のことをよく分かっている点も理由だろうが、監督の考えは別にある。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)28話より、何者にもなれるってことだ
(「さよなら私のクラマー」28話より)

かと言って守備力に期待しているわけでもない。

むしろ彼女を攻撃の起点としてのカウンターにその狙いがありそうだ。

彼女に伝えられたのは「ボールを失わない」「ボールを運ぶ」ことの2点。

以前の浦和戦で見せた、シンプルな指示からの集中力は驚異的であったが、ここは彼女の性格を理解している監督が再び試みたというところだろう。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)28話より、ファールで恩田希を止めに行く浦川茜
(「さよなら私のクラマー」28話より)

アンカーに下げることにより、ゴールまでの距離は遠くなるが、その分だけ前を向くことができる。

国府の突破力を軸にする相手へのカウンターが恩田の突破力から生まれるというのはわくわくする展開ではないか。

国府にできて恩田にできないなんてことはないだろうしね。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)28話より、ファールでも止まらない恩田
(「さよなら私のクラマー」28話より)

距離が伸びて前を向いた分、ターンを抑えてシンプルなプレーをさせる意図もあったようだ。

人一倍テクニックがあるだけにそこに頼ったプレーを続けてきた。

それは男子選手に対抗するための彼女の武器であったのだが、現在の舞台は女子サッカー。

今の彼女はフィジカル面でも高いレベルにある。

まだ本人は自覚がないのかもしれないが。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)28話より、恩田なら軽くちぎるだろ
(「さよなら私のクラマー」28話より)

早くて強くてテクニックもある選手となるポテンシャルを秘めているのに完全には活かしきれていない。

彼女自身も、チームも、まだまだ強くなる。

ボールを運んだ先には周防がいるし、恩田の代わりに上がっている曽志崎がいる。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)28話より、恩田と入れ替わりに曽志崎が
(「さよなら私のクラマー」28話より)

ゴール前は曽志崎がうまいよね。

ボールを持った時の安心感はやはり一番だ。

今回の入れ替えは奇策とのことだが、監督も選手の可能性を引き出すのがうまそうだし、チームの進化が楽しみだね。

 

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「さよなら私のクラマー」27話(新川直司)越前vs.国府

「さよなら私のクラマー」(新川直司)27話より、国府妙のプレーを見て興奮する越前佐和

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

27話は、越前vs.国府。

 

前回はこちら。 

越前vs.国府

栄泉船橋戦の後半、エース国府妙を抑えるべく投入された期待の初心者・越前佐和。

技術も経験も圧倒的に足りていない。

それでも、紅白戦で恩田や周防を止めるポテンシャルを持つ選手である。

今の蕨青南の中で、必要なのは彼女の力。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)27話より、越前の仕事は国府を遅らせること
(「さよなら私のクラマー」27話より) 

越前に課せられた仕事は、国府の攻めを遅らせることだった。

1対1に絶対的な自信を持つ国府は、基本的に自力で中に斬り込んでくることが多い。

栄泉船橋というチームが、彼女の突破力を生かすために組み立てられていることもある。

越前が時間を稼ぐことによって、一瞬でも数的優位を作り出そうというのが深津監督の考えであるようだ。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)27話より、越前はしつこい
(「さよなら私のクラマー」27話より) 

いくら国府と言えど、二人を相手に抜くのは容易ではないはず。

何より、越前はあきらめの悪い選手で、そこがまた彼女のいいところ。

身近で相手のいいプレーを見られることも、逆にモチベーションを高めることに一役買っていると思われる。

そして、必要とあらばファールしてでも止めにいける。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)27話より、ファールしてでも止める
(「さよなら私のクラマー」27話より) 

デビュー戦でガチガチに緊張していた選手とは思われない上々の立ち回りである。

末恐ろしいね。

国府がキャプテンの浦川茜を日本一にしたいのと同じように、越前も恩田希を日本一にしたいと考えている。

この二人、案外気が合うのかもしれない。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)27話より、越前のあだ名はゴルゴに決定
(「さよなら私のクラマー」27話より) 

国府による越前のあだ名は、ゴルゴに決定した。 

心なしか越前が現れてからの国府の方が楽しそうにも見える。

あとは攻める方の役者が動き出さないとね。

 

今回までが7巻に収録されるはず。

10月くらいに発売かな?

発売日は10月17日! 

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「さよなら私のクラマー」26話(新川直司)越前のデビュー戦

「さよなら私のクラマー」(新川直司)26話より、越前佐和のデビュー戦

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

26話は、国府妙の限定解除によって栄泉船橋に傾きつつある流れを変えるべく、蕨青南からも切り札が投入される。 

 

前回はこちら。 

前半終了

前半終了間際、本性を現した国府妙の前に翻弄される蕨青南。

2点のリードから一転して窮地に陥っていた。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)26話より、国府妙のループシュート
(「さよなら私のクラマー」26話より)

これが強豪校を倒して勝ち上がってきた栄泉船橋の切り札であるらしい。

ワラビーズもキーパーのカコカリ(加古川香梨奈)をはじめよく守っているが、国府の突破力は驚異的であった。

彼女は1対1では無類の強さを誇っており、キャプテンの浦川からも絶対的な信頼を得ているようだ。 

 

逆転は免れたものの、短時間でアドバンテージを失ったショックは大きい。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)26話より、栄泉船橋戦の前半終了
(「さよなら私のクラマー」26話より)

だが、前半で相手の力を引き出せたことはむしろ好都合かもしれない。

これまで栄泉船橋に破れたチームは、終盤のカウンターに対応しきれず押し切られたパターンが多いと思われる。

本来であれば温存していた国府が動かざるを得ないほど、栄泉船橋も追い詰められていたわけで、後半から対策されるリスクを伴っている。

問題は、どうやって止めるのかということ。

ワラビーズに手立てはあるのか?

攻撃特化と守備特化

「さよなら私のクラマー」(新川直司)26話より、恩田と周防をおさえられるのは越前だけ
(「さよなら私のクラマー」26話より)

深津監督の出した答えは意外なものであった。 

浦和邦成との試合後に選手へ転向した、初心者・越前佐和の起用。

能見コーチも気付いていないようだが、越前には一つだけ傑出した能力がある。

キックもドリブルもトラップも全然ダメだが、彼女だけが恩田と周防をおさえられるという。

ちなみに、男子サッカー部との合同練習の際にはタケの飛び出しからの決定機を潰しているし、守備に関しては当時でも様になっていたと思う。(19話参照)

とは言え、初めての試合は不安でたまらないはず。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)26話より、ノンちゃんの方がすごいです
(「さよなら私のクラマー」26話より)

ここでの深津監督の煽りがうまかった。

越前にとって最高に燃える言葉を選んでるんだよね。 

「10番をおさえて、恩田が日本一だと証明してこい」 

それで表情が変わる越前も素直な反応でかわいいところ。

 

恩田と越前がついに同じピッチに立つ。

子供の頃から、ずっと一緒にいながら最近までは考えられなかった舞台だ。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)26話より、国府を止める越前
(「さよなら私のクラマー」26話より)

しかも試合を左右するかもしれない選手としての登場とか胸熱すぎる。 

国府を相手にどこまでやれるのか楽しみである。

 

この回は7巻に収録予定。発売日は10月17日!

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「さよなら私のクラマー」25話(新川直司)フットボールに愛された女

「さよなら私のクラマー」(新川直司)25話より、フットボールに愛された女(自称)

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

25話は、蕨青南に傾いた流れを引き戻すべく、栄泉船橋のエース国府妙が動き出す。

彼女はフットボールに愛された女(自称)。チームの攻撃の要である。

 

前回はこちら。 

栄泉が動く?

前半も残り数分となった時点で、蕨青南の2点のリード。 

浦和以上とも言われる守備の堅さを誇る栄泉船橋にとって、想定外の出来事だろうか。

判明している過去の戦績では、前半だけで2点を取られた例はない。

インターハイ県予選では全試合で2失点、関東大会でも久乃木学園を前後半1点ずつに押さえている。

それを考えると、ワラビーズはだいぶ頑張っているのである。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)25話より、プラン変更を訴える国府妙
(「さよなら私のクラマー」25話より) 

なおも勢いに乗る相手チームに対し、栄泉のエース国府妙はそろそろ我慢の限界を迎えようとしていた。 

ここまでの試合では、前半守りきって後半に逆転するパターンで勝ち上がってきている。

これ以上得点を許すようだと勝利は厳しいものとなるだろう。

チームの攻撃の要、おそらく得点の多くに絡んでいるのが国府であると思われる。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)25話より、どちらの指示に従う?
(「さよなら私のクラマー」25話より) 

後半の得点率の高さ、それも高校日本一の久乃木学園を破る大番狂わせをやってのける攻撃力は、ただの守備的チームではないことを示している。

守備が苦手なドジっ娘キャラを演じている彼女が10番を背負っている理由がそこにある。

国府妙とは何者なのか。

攻撃のスペシャリスト(自称)

「さよなら私のクラマー」(新川直司)25話より、国府妙は守備が苦手
(「さよなら私のクラマー」25話より) 

彼女はフットボールに愛された女(自称)である。

ユース出身で、守備をしないためクビになったという、攻撃特化の選手らしい。

サッカー部の鵜飼早智との縁で途中入部した模様。

彼女が実力の割に知られていないのはそのせいだろう。

久乃木のキャプテン・梶とのやりとりからして代表歴もなく不遇な時期を送っていたのではないだろうか。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)25話より、疲れて眠る浦川茜
(「さよなら私のクラマー」25話より) 

そんな国府にとって、出場機会と居場所を作ってくれた浦川茜の存在はありがたかったはずだ。 

弱小部とバカにしていたチームで、キャプテンの元、その意図を汲んで戦術の重要な一翼を担っている。

仕掛けるのは後半からがいつものパターンだが、それでは間に合わないかもしれない。

何より、すでに火が付いてしまったようだ。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)25話より、国府妙の真の実力
(「さよなら私のクラマー」25話より) 

ワラビーズは本気の彼女を止められるのか。

そして恩田の出番はまだか。

あとがき

今月号は巻頭カラーで、扉絵のイラストがそのまま第6巻の表紙になっている。

発売日は2018年6月15日。

さよなら私のクラマー(6) (月刊少年マガジンコミックス)

 

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「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

24話は、流れを掴みかける蕨青南だが、深津監督は相手チームに不気味さを感じていた。

 

前回はこちら。 

流れを引き寄せる

宮坂のロングフィードから田勢のゴールに繋げたことで、試合は蕨青南の有利に進んでいく。

栄泉船橋側も、宮坂をフリーにするわけにはいかなくなったのである。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)24話より、宮坂をマークする栄泉船橋
(「さよなら私のクラマー」24話より) 

また同じように蹴れるかというと、そんな確信は無いのであるが、相手としては警戒せざるを得ない。

そもそも宮坂自身が苦手にしすぎてデータがないのだ。

深津監督は自信を持ってマグレだと断言していたが。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)24話より、あんなもんマグレだ
(「さよなら私のクラマー」24話より) 

だがその分、中盤に隙も生まれやすくなってくる。

現在は数の優位で押さえている状態なので、綻びを突かれると個の力で勝る蕨青南にチャンスも増えるだろう。

前半も終わりに近づいた頃、曽志崎のパスから周防が抜け出す。

パスミスのように見えても、それは彼女への信頼の証。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)24話より、初見では周防のスピードに対応できない
(「さよなら私のクラマー」24話より) 

このスピードに対応するのは楽じゃない。 

久乃木学園の佃も、この点では周防を高く評価している。

でも彼女が活躍する姿を見るのは面白くないようだ。

かと言って自分以外の選手に抑えられるのはもっと気に入らないのだろうけど。

井藤にもそんな所を「あんたフクザツね」とツッコまれてもいる。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)24話より、田勢キャプテンに褒められて喜ぶ周防
(「さよなら私のクラマー」24話より) 

これはこれでいいライバル関係ではある。

井藤はいつのまにか周防ちゃん呼びになったんだね。 

田勢キャプテンの絶賛の言葉「メッシみたいだったぞ!」に無表情で喜ぶ周防が微笑ましい。

栄泉船橋の切り札?

栄泉船橋としても、このまま押されっぱなしという訳にはいかない。

彼女たちも千葉を制したチームである。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)24話より、栄泉船橋のエース国府妙が動き出す
(「さよなら私のクラマー」24話より) 

キャプテンの浦川を中心に統制の取れた守備と、後半の得点率の高さから、逆転で勝ち上がってきたと思われる部分が不気味なところ。

エースの国府妙がついに真の力を見せるときが来るのか?

初登場時から只者でなさは感じさせつつもネタキャラ的扱いの彼女。

浦和邦成の安達太良アリスのようにとんでもない選手かもしれない。

なんか攻撃特化っぽいんだよね。

同じくここまで大人しい恩田との対決が描かれるのかな。 

あとがき

来月号は1年2ヶ月振りに連載再開の「ノラガミ」が表紙らしい。

代わりにこちらは巻頭カラーで登場。

そして待望の6巻は休載を挟まず6月15日に発売決定! 

さよなら私のクラマー(6) (講談社コミックス月刊マガジン)

 

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「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

23話は、栄泉船橋の固い守備に攻めあぐねる蕨青南。

流れを変えるきっかけは、後方の選手たちの頑張りだった。

 

前回はこちら。 

浦和を超える守備

インターリーグ準決勝の相手、千葉の栄泉船橋は守りに定評のあるチーム。

FWも含めた全員参加の組織的な守備は、簡単には突破できそうもない。

後ろからパスを繋いで組み立てていく蕨青南にとっては、この分厚さはやっかいなのだ。

サイドから切り崩そうにも、守備ブロックは維持したまま前線の選手が下がって対応するため窮することになる。

深津監督も、彼女たちの守備を浦和邦成より固いと評価していた。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)23話より、栄泉船橋のカウンター
(「さよなら私のクラマー」23話より) 

一旦ボールを取られたらこのカウンターが待っている。

ワラビーズの守備陣もよく耐えている方だろう。

今大会での躍進も深津監督の指導による守備力向上が大きいのだが、好プレーで度々ピンチをしのいでいる場面が見られる。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)23話より、敵のナイスプレーに喜ぶ国府
(「さよなら私のクラマー」23話より) 

栄泉船橋の国府は、いいプレーが見られることには敵味方の区別なくうれしいタイプらしい。

ちょっと既視感あるね。

越前をアホの子にしたような感じかな。

彼女自身の実力は未知数のままなのでそこが気になるところ。

2年生組の活躍

「さよなら私のクラマー」(新川直司)23話より、流れを変えるチャンス
(「さよなら私のクラマー」23話より) 

今回、活躍するのはワラビーズの2年生組。

栄泉船橋が警戒しているのはロングボールで、曽志崎は特にマークされているし、他の中盤の選手もフリーになることほぼ無い状況。

比較的動きやすい外側から仕掛けられれば、流れを変えるきっかけになるかもしれない。

DFの宮坂にとっては苦手な分野なのだが、練習中に深津監督にも「お前は蹴んねぇよな」と指摘されてもいた。

試合を重ねるうちには、いつもの戦い方がうまくいかないときも来る。

そんな時のためにプランBとしての対応ができることも必要となってくるが、今がまさにその時なのだろう。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)23話より、お前の足を信じろ
(「さよなら私のクラマー」23話より) 

いつも曽志崎のフォームを見てきているのでイメージはできている。

小さい頃から田勢を相手に蹴ってきた。

頼れる相棒を、これまでの経験を信じてチャレンジする時。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)23話より、喜ぶ宮坂
(「さよなら私のクラマー」23話より) 

この笑顔が物語っているが、ひとまず合格だったようだ。

このところのワラビーズは、攻守のバランスが取れてきて安心感すらある。

次回あたりで試合も決着かな?

決勝では全国2位の興蓮館(2軍?)が順当に勝ち上がってくるんじゃないかと思われる。

栄泉船橋も過去の因縁があるようだが、ワラビーズも久乃木戦からの成長を試したいところだろう。

恩田もなんかたくらんでそうだったし、いい流れきてるよね。

あとがき

今回までが6巻の内容になりそう。

ここまで単行本発売前には月刊マガジンの表紙になっているけど、来月は「かくしごと」らしいのでどうだろうね。 

休載を挟むとすれば7月あたりに出そう。

休載無しで6月15日に発売が決定した。

 

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