2019年3月に読んだ中で、おすすめの漫画をいくつか紹介する。
今月の注目作は、百合姫連載の期待作「ルミナス=ブルー」と道満晴明の連作短編集「メランコリア」。
前回はこちら。
「ソウナンですか?」4巻(岡本健太郎、さがら梨々)
修学旅行中の事故で遭難した少女たちの無人島サバイバル生活。
今回は、以前から仕掛けていた罠にイノシシがかかった。
全員で協力しなければ難しい大物との対面に彼女たちは?
島に流れ着いて初の食事を思えば、最高の食材に浮かれてしまうのも無理はない。
それはサバイバルに慣れたほまれであっても例外ではないようだ。
前巻では肛門から水を飲むという生半可では越えられない高みに至った感があったが、この巻でもなかなかどうして負けてはいない。
発売と同時にアニメ化も発表された。
どこまでやるの?
「味噌汁でカンパイ!」7巻(笹乃さい)
父子家庭で一人の時間が多かった中学生・善一郎と、毎日朝ごはんを作りに来るようになった隣の幼なじみ・八重の味噌汁生活。
7巻は自家製味噌づくりに挑戦したり、初めてのバレンタインのエピソードが描かれる。
八重の叔母が来れなくなったために代役の講師に選ばれたのはなんと家庭科の二見先生。
クールで生徒たちにも人気な彼女は実は乙女な性格で…
善と八重の関係に萌える先生だったが、学校での絡みも増えてくるのかな?
「お嬢様の僕」3巻(田口ホシノ)
執事とメイドの両親を持つ高校生の近衛養太郎が、世間知らずなお嬢様たちのお世話係をすることになるラブコメディ。
3巻では、お嬢様たちのはじめてのおつかいや、翼とみのりが出会った頃のエピソードが描かれる。
養太郎をめぐるライバル関係にはあっても、けっして仲が悪いわけではない二人に何があったのか。
みのりが身の回りのことをできるようになったのは翼の存在に理由があるらしい。
二人の出会いは小学校の入学式。
今以上に世間知らずな翼を前にしては、みのりも世話係にならざるを得なかったようだ。
面倒見のいいツンデレみのりがかわいい。
現在の状況もこれの延長のようなものなのかもしれない。
ただ、養太郎のことに関しては譲るわけにはいかないのだ。
個人的にはみのり推しなので頑張ってもらいたいところだけどね。
「スローループ」1巻(うちのまいこ)
親の再婚で姉妹になった山川ひよりと海凪小春。
片やフライフィッシングが得意な人見知りの女の子、片や外遊びを知らずに育った明るい女の子。
二人が仲良くなるきっかけになったのは釣りだった。
ひよりが専門にしているのは虫や小魚に模した毛ばりを使った釣法で、きらら作品とは思えないマニアックさ。
料理が得意な小春とはいいコンビになりそうではある。
作者もアウドドアが好きらしく、きららにはすでにキャンプ漫画があったために釣り方面から攻めることになったとのこと。
個人的には釣り具屋の看板娘の恋ちゃんが気に入っている。
彼女はひよりの幼なじみで、今は理由があって釣りからは離れているが、小春が間に入ることでまた一緒に活動することになるだろう。
むしろ毎回登場してもらいたい。
「蟲籠奇譚」3巻(西塚em)
生物部の備品を壊してしまった代償として仮入部中の転校生・夢飼ねねと、怪しげな部員たちの日々を描く。
3巻は生物部のマスコット・いもむーに起こった異変や園芸部の謹慎期間の終わりなど。
1年前の事件から延期になっていた温室への立入禁止処分が解け、園芸部の花崎がついに中へ入れることに。
今後は両部合同で活動していくことになるのだろう。
園芸部にかをりを訪ねてひょっこり顔を出すねねの場面も好きだったけどね。
いずれにしても最終巻なのだ。
巻末の描きおろしページでは、今まで名前だけだったもう一人の園芸部員が登場した。
「ルミナス=ブルー」1巻(岩見樹代子)
県立青島高校に転校してきた垂水光(たるみず こう)は、写真が大好きな女の子。
廃部になっていた写真部を復活させるため、元部長の葉山うちほと一緒にコンテストでの受賞を目指すことに。
クラスメイト秋本雨音(あきもと あまね)と青野寧々(あおの ねね)をモデルに会心の笑顔の一枚を撮るものの、二人は実は元恋人同士だと知るのである。
四人の女の子たちの友情と恋を描いていくが、個人的に気になっているのは雨音×うちほ。
幼なじみでそれぞれ片思い中の二人が惹かれ合っていくところを見たい。
いやむしろ片思いのままでも…
作者は太もも好きとのことで、それを裏付ける描写も多い。
眼福です。
「ホクサイと飯さえあれば」8巻(鈴木小波)
しゃべるぬいぐるみのホクサイと大学生ブンのごちそう漫画。
寒い雪の日、こたつとストーブが頼みのブン宅で灯油がなくなりそう。
いつものように入り浸っている凪は、瓶の牛乳とともにおつかいを頼まれた。
給食を作る気だとすぐにピンとくる程度には馴染んでいるらしい。
食器や給食のおばさん風コスプレにもこだわったブンが用意したのは足立区ご当地給食のエビクリームライスだった。
先日、瓶のフルーツ牛乳(明治)が生産終了とのニュースが話題になったが普通の瓶入り牛乳も入手が難しくなっていくのだろうね。
ブンはいまでも凪が普通の中学生だと思っているようだけど…
「メランコリア」下巻(道満晴明)
メランコリア彗星の接近で終末を迎える世界を描く連作短編集。
AからZまでの頭文字をタイトルに持つ26話からなる物語。
それぞれの少し不思議な日常からはじまり、やがて緊迫感を増していき、終盤で一気に繋がっていく。
上巻の時はカウントダウンだと思っていたのだけど、これは循環する物語だった。
読み始めると止まらなくなる。
お栄(葛飾応為)のエピソードが気に入っている。
彼女は墜落した宇宙船を助けたことにより、ゲッサンとウルジャンをお礼に受け取るのである。
やがて、江戸中にエロ漫画ブームを巻き起こすことになるのだが…
「天国大魔境」2巻(石黒正数)
大災害で廃墟となった世界で天国と呼ばれる場所を探すマルとキルコ、壁に囲まれた施設で外の世界に興味を持つトキオとミミヒメ。
2巻では、おねえちゃんことキルコの過去が明らかになった。
トマト天国の住人にとあるカートレーサーと瓜二つだと指摘されていた彼女の正体とは?
一方、施設の内部に侵入したトキオとククは保育器の中の異形の生物を目撃してしまう。
壁の中も外も安全な場所ではないようだ。
1巻ではトキオは男の子だと思っていたのだけど、実は女の子なのかもしれない。
たぶんストーリーには影響ないと思うけど。
今度の「人喰い」は積極的に襲ってくるぞ。
「はじめてのひと」4巻(谷川史子)
博物館で働く田中久緒から繋がる人々の、それぞれにとってのはじめてを描く群像劇。
4巻は同じ職場で時々登場していたメガネが印象的な北別府美登利がメイン。
友人の結婚式で袋の取り違えをきっかけに出会った男性・花房と一緒にランニング部を立ち上げる。
彼女はてっきり文化系なのかと思いきや、学生時代は陸上部でけっこうな負けず嫌いであるらしい。
トレーニングをしてイベントにも出場しようと張り切っていたのだが、彼の恋人が快く思っていないことが分かり…
花房の容姿とか子供っぽさが諏訪内を思い出させるのもあり、こいつめってなるが、明るくこだわらない性格は趣味仲間としてはいい相手だったのだけどね。
結末は5巻へ。
「上野さんは不器用」6巻(tugeneko)
中学3年生の上野さんは天才発明家。
現在、同じ科学部の後輩・田中に恋をしている。
彼女の発明は田中を振り向かせるためにあると言っても過言ではない。
今回はさらに、女子部長定例会や上野さんの1年時のエピソードが描かれる。
唯一の彼氏持ちらしいことが判明した書道部部長の添木さんが質問攻めに合うなど、もはやただの女子会の様相を呈しているが、これからちょくちょく集まることになりそうだ。
彼女の経験談が上野さんの参考になるのかどうか。
しっかり聞き耳は立てていたけどね。
「それでも歩は寄せてくる」(山本崇一朗)
Twitterで連載されていた「将棋のやつ」がパワーアップして帰ってきた。
自称将棋部部長の八乙女うるしと後輩の田中歩は、放課後一緒に将棋を指すことを日課にしている。
将棋で先輩に勝つことができたら告白するつもりの歩は、好きであることを頑なに認めようとはしないのだが…
先輩の破壊力が振り切れてます。
Twitterのときは中学生かと思っていたけど、高校生であることが判明した。
1巻の予約もはじまっている。
「六畳一間の魔女ライフ」(秋タカ)
おんぼろアパートで暮らすマッジとリリカは新米魔女コンビ。
一人前の魔女になるために日々協会の依頼で仕事を受けてはいるものの、なかなか生活は楽にならないようで。
押入れの中がマッジの魔女工房になっていて、彼女は一人の時間を大事にしているのだけれど相方のリリカがそれを許さないという状況。
ここの地味なシーンが二人の距離感が現れていてすごく好き。
ひとまず読切での掲載であるが、いずれ連載化もあるかも。